高校政経

高校政経

グローバル化する経済  その1

2006年07月31日 | 経済
 グローバルというのはどういう意味かわかりますか。グローブ(globe)が「地球」、グローバル(global)が「地球の、世界的な」という形容詞です。国という枠を超えて地球規模で経済活動が活発になっているという状態を「グローバル化する経済」といいます。

 まだわかりにくいですね。具体的に話を進めましょう。
 能力があれば、国境を越えることのできる人の例として、プロスポーツ選手があげられます。野球でいえば、イチロー選手や松井秀喜選手は、日本のプロ野球からアメリカのプロ野球(メジャーリーグといいます)に移って大活躍しています。
 サッカーでも、高原直泰選手はドイツ、小野伸二選手はオランダで活躍しています。

 外国人が日本で活躍している例としては、何といっても大相撲の朝青龍でしょう。モンゴルから日本の高校に留学してその後大相撲の世界に入って今や大横綱といいていい活躍です。
 能力のある「人」が優先され、国籍の区別なく活躍できる場があるのは大変すばらしいことです。選手本人にとっても最高の場所でプレーするチャンスがあり、観客もレベルの高いプレーを見ることができます。現在の日本が江戸時代のように鎖国をしていたらどうでしょう。日本人が海外にでたり、外国人が日本に入るのを制限していると、このような活躍はありえません。

しかし、日本のプロ野球は、試合に出場できる外国人の選手を制限しています。(アメリカのメジャーリーグは国籍制限がありません。)このことはどういう結果をうむのでしょうか。
 日本の選手にしてみれば、外国人が制限されている分、試合にでる機会が増えるので、得をすることになりますが、その分観客は、日本の選手よりすぐれた外国人選手のプレーをみる機会が奪われます。どちらがいいのかは、うけいれる国で決めることになります。

中村修二『考える力、やり抜く力 私の方法』三笠書房

2006年07月31日 | Weblog
 7月27日夕刊の記事に、東芝の元社員で現在は東北大学教授の舛岡富士雄氏が、東芝を相手に、フラッシュメモリーの発明の対価として11億円の支払いを求めた民事訴訟の和解内容(8700万円)が載っていました。
 
 民事裁判ですから、訴えなければ、請求が認められません。黙っていたら、泣き寝入りです。

 技術者がその発明の対価を、勤務先に、どれだけ請求できるのか。今までは、大発明でも数万円や、ボーナスが若干上がる程度で済まされ、そういうものという不文律があったようです。
 タイトルの中村修二氏は青色発光ダイオードの発明者で、勤務先とその対価を巡って争い、結局、8億4千万円で和解しました。中村氏は、アメリカの大学に移ってしまいました。日本の企業からのスカウトはなかったそうです。頭脳流出ですね。
 舛岡教授の研究費の援助も、日本企業のオファーはなく、ドバイの投資家が出資しているようです。
 
 中村氏は、上記の本を読むと、たたき上げの職人のようです。有名大学出身の大企業の研究者は、先行研究から開発の困難さを感じてしまい、見切りの早さがあるので、開発成功には至りませんでした。
 中村氏は徳島大学出身で、逆にそのことが役だった?ようです。
この本では、技術者の執念を感じることができます。

関東学院大学経済学部編『これから始める 経済学・経営学』東洋経済新報社(331 カ)

2006年07月26日 | 経済
経済学部にすすむか、経営学部にすすむか、迷っている人がいると思います。
その違いはわかりますか。

経営学部は、簡単に言い切ると、ひとつの企業の経済活動を主に扱います。ある企業が、資金を集めて、生産活動を行い、儲け(利潤)がでれば、株主への配当金にしたり、次の生産活動のために蓄えたり(内部留保)して、また生産活動を行っていく。このプロセスを、商学、経営学、会計学、経営情報学といった科目で勉強していきます。

経済学は、多くの企業の経済活動を俯瞰的にみます。乱暴にいうと、高3の政経の経済部門を専門的に勉強します。(需要と供給、国民所得、景気変動、金融政策、財政、経済理論・アダム・スミス、マルクス、ケインズなど)

この本は、各章のはじめが漫画で、そのあとが対話文なので、比較的読みやすい(はず)です。

「政経」選択者は後半の、経済学編だけ読めば十分です。
前半の経営学編は、商学部や、経営学部を考えている人、将来、公認会計士を考えている人は目を通しておきましょう。

小川和久『日本の戦争力』アスコム

2006年07月26日 | Weblog
 イラクに派遣されていた自衛隊が撤退しました。
日本の自衛隊はそもそもどのようにできたのか。
その経緯は、公民や現代社会、政経の教科書に譲るとして、自衛隊が軍隊ではない?ことのあらわれとして、用語の言い換えも多くあるようです。
戦車→特車 駆逐艦→護衛艦 攻撃機→支援戦闘機 歩兵→普通科 砲兵→特科
工兵→施設科 柔らかく表現したいようです。

著者は元自衛隊員で、防衛問題のテレビのコメンテーターとしてもよく出演している人です。この人の講演を聴く機会があり、日本の「実力」がよくわかりました。

日本の軍事費は世界でも有数ですが、その実力はどの程度か。
この本によると、世界最高水準のものは、海上自衛隊の対潜水艦戦能力と掃海能力です。
対潜水艦戦能力とは敵の潜水艦を捕捉し、攻撃する力で、アメリカが旧ソ連対策として日本にその能力を認めたからこの能力が突出しました。
掃海とは、海中や海底に敷設された機雷を除去することで、1950年、当時の海上保安庁掃海部隊が、アメリカ海軍指揮下で、北朝鮮軍の機雷処理にあたり、日本人乗員1名が触雷しなくなっているそうです。
日本の軍事力は、アメリカを補う部分が増強され、まさにアメリカの世界戦略の一部を担っています。

軍事力という点では、パワープロジェクション(戦力投射)能力がなく、他国に陸軍を上陸させ、戦争目的を達成できるようなしくみになっていない、著者のたとえでは「水泳だけがトップクラスで、あとはぱっとしないトライアスロン選手」のようなものだそうです。

今後をどのようにしたらいいか考える前に、その前提として現状を知ることが必要です。図書館にあるので、外交、国際関係に関心がある人は目を通してください。

戦争と平和

2006年07月20日 | 映画
 授業で紹介したものをいくつか掲載します。

「シンドラーのリスト」 ナチスのユダヤ人虐殺に対してユダヤ人を救ったドイツ人の話
「ドラゴン怒りの鉄拳」 ブルース・リーの怒りの鉄拳に殴られているのは日本人
「私は貝になりたい」 もとはフランキー堺主演の白黒作品で、所ジョージのものはリメイク版です
「キリング・フィールド」 カンボジア内戦で、クメールルージュの圧政が描かれています
「プラトーン」 ベトナム戦争で、アメリカがいかに消耗したかがわかります
「黒い太陽731」  日本軍の人体実験を扱った香港映画

学習漫画 

2006年07月16日 | Weblog
集英社版・学習漫画『世界の歴史10 エリザベス女王とルイ14世 絶対王政の時代』(209.7 イ 10)を図書館で購入しました。欠けていたところを買い増しして、古代から現代まですべて揃いました。
この本は、政経選択者にとって、グロチウス、ホッブズ、ロック、ルソーなどがどういう時代背景をもとにその思想を発展させたのかを理解するのに役立ちます。

いわゆる学習漫画なので、おもしろさは、一般の漫画よりは劣るかもしれませんが、長期休みの最中に通読しておくと、今後の授業の理解に役立つと思います。

石ノ森章太郎『マンガ 日本の歴史 現代編』中央公論社(210.1 イ)
田村貞夫監修『まんが 日本の歴史』小学館(210.1 コ)
も図書館にあります。長期休み中やその前の短縮授業中の午後にまとめて読んでみてください。

各国政治体制 2001東北学院・経済 内容を少し変更しています。

2006年07月14日 | 入試問題
(法の支配)という原則の母国ともいわれるイギリスでは、内閣が議会に対して連帯して責任を負う(議院内閣制)がとられている。(議院内閣制)では、首相を選出するのは国民ではなく議会である。議会は(内閣)に対して不信任を議決することができるが、対抗手段として、議会は解散されることもある。このように、議会と(内閣)は相互に牽制しあう関係にある。
 一方、アメリカでは(大統領制)がとられている。(大統領)と議会のいずれも国民によって選挙される。したがって、それぞれが国民の代表として強い独立性を保ち、基本的に議会と(大統領)との間には、(議院内閣制)にみられるような牽制の関係もない。厳格な権力分立(フランスの思想家、モンテスキューによって主張された)はこのような(大統領制)の方にみることができるといえる。
  ドイツやフランスのように(大統領)と首相の両者を置いている国もある。その場合、(大統領)の権限は国により多様であるが、実際の行政は(議院内閣制)で運営されていることが少なくない。ドイツの場合は、大統領は象徴的な役割を担っている。
 議会の構成に目を転じると、アメリカとイギリスはいずれも二院制である。二院制の国では、しばしば上院と下院では構成や選出方法が異なっている。つまり、下院では人口比で議席が配分される一方、上院にはそれぞれの国家の特徴を反映した存在意義が与えられる。アメリカとイギリスも例外ではない。
 日本は(議院内閣制)をとっている。地方公共団体は、住民が地方公共団体の首長と地方議会の議員の双方とも、直接に選挙する。この点に着目する限り、地方公共団体の制度は(議院内閣制)よりも(大統領制)と共通点があるといえる。しかし,議会は地方公共団体の首長に対して不信任議決権をもち、一方、地方公共団体の首長はそれに対抗して解散権を行使することができる。この点では、(議院内閣制)のようにいわば立法権と行政権が相互に牽制する要素があるといえる。

これからかどうする?働き方 その3

2006年07月05日 | 仕事、労働
 世の中の仕事の多くは、上の例のように1、正社員(フルタイムで定年まで働くことができるひとです)、2、契約社員(フルタイムで働くけれども期間が定められています。先生の働きかたでは2つ目と3つ目がこれにあたります) 3、パートタイマー(フルタイムではなくその一部分(パート)だけ働く形になります。先生の働き方の場合は4つめ、大学生や高校生のアルバイトもここにあてはまります。)
 このような働き方の違いは何なのでしょうか。
経営者(雇う側)の都合と労働者(働く側)の都合の2つに分けて考えられます。
 経営者(雇う側)の都合について、みると、正社員をたくさん雇うと、人件費がたくさんかかります。毎月の給料のほかにも正社員には、退職金を払ったり、社会保険料(年金や健康保険の費用)を会社も負担しなければならないため、経費がかかります。また、いったん正社員として雇うとその人が優秀でなくてもよほどの理由がないと簡単には首(解雇といいます)にはできません。そのため、経営者の多くは、正社員はできるだけ採用を控え、契約社員やパートタイマーを多く採用して、身軽な経営をしようとしています。その方が会社の利益が高くなる可能性がありますから。
 労働者の立場に立つと、契約社員やアルバイトは、気軽に働ける反面、社会保険料を自分で払わなければならないなど損なところもあります。
 今どんな仕事の求人があるか、それを知るためにどうすればいいでしょうか。
日曜日の新聞には多くの求人広告がでています。また、求人情報誌も書店や駅の売店で売っています。最近は無料のものも駅やスーパーに置いています。雇う側がどのような条件をだしているのか、自分がやりたいものがあるか、参考に読んでみることを勧めます。
自分の「働き方」を考える上でも、その賃金で生活できるか紙に書いてみるのがいいと思います。アルバイトで時給1000円と聞くと「高い」と思うかもしれません。時給1000円で1日8時間、1ヶ月20日働いたとして月給16万円です。
 このお金をもとに自分一人でアパートを借りで生活できるか、考えてみてください。
衣食住の最低レベルとして、家賃、光熱費、食費、服装代、忘れてはいけないのが社会保険料(1ヶ月2万円程度)や税金(消費税のほか、所得税や住民税を自分で申告してはらわなければなりません)です。これらを差し引いた残りがようやく自由に使えるお金です。電話代やカラオケ、映画の費用がどれだけになりましたか。病気に備えて貯金もしなければなりません。車が欲しい人は、車の代金以外に駐車場代、ガソリン代、保険料、税金などの維持費がかかります。(車にかかる税金は多額ですよ。)
 アルバイトの賃金だけでは、結婚して子どもができると生活はかなり苦しくなります。
 働き方を選ぶということは、自分の将来の生き方を選ぶことになります。何がやりたいかだけでなく、自分は何ができるかという点も考えて「働き方」を考えてください。

これからどうなる 働き方  その2

2006年07月03日 | 仕事、労働
 だれでもできる仕事はやはり賃金が安くなります。
その人でなければという希少性がないから、雇う側からすると代わりの人がいくらでもいますから高い賃金を払う必要がありません。
 自分は何のためにはたらこうとしているのか。収入やその職業につくための大変さ、やりがいなど調べて、よーく考えてみてください。
 つぎに「働き方」について考えてみましょう。
働き方って何のことと思う人もいるかもしれません。自分で会社を作って、経営者として働く場合もあるし、誰かに雇われて働く場合もあります。現在の日本では圧倒的に雇われて働く人が多いので、雇われて働く人について、考えてみます。
 同じ仕事をするにあたってもいろいろな方法があります。身近な例として、皆さんのいる、学校の先生を見てみましょう。
 学校の先生は大きく分けて、4種類の働き方があります。
 ひとつは、定年までフルタイム(たとえば、8時半から5時まで)で働く契約をしている人、多くの先生がこれにあたります。ふたつめは、産休や介護、育児休暇をとった先生のピンチヒッターとしてフルタイムで働く先生もいます。3つめは、雇う側の都合で1年間など期間を定めて、フルタイムで働く場合があります。4つ目は、中学校や高校に多いのですが、特定の授業だけをする契約で時間だけ教える先生です。
 世の中の仕事の多くは、上の例のように1、正社員(フルタイムで定年まで働くことができるひとです)、2、契約社員(フルタイムで働くけれども期間が定められています。先生の働きかたでは2つ目と3つ目がこれにあたります) 3、パートタイマー(フルタイムではなくその一部分(パート)だけ働く形になります。先生の働き方の場合は4つめ、大学生や高校生のアルバイトもここにあてはまります。)

これからどうなる?働き方 その1

2006年07月03日 | 仕事、労働
これからどうなる?働き方 その1

働くってどういうことなんでしょう。
働かなければ、生活できない、だから、生活のために必要なお金を手に入れることが働くということだって考える人が多いかもしれません。
 お金のためだったらどんな仕事でもやるかといったら、皆さんもやりたい仕事、できればやりたくない仕事あると思います。
 多くの人は、社会に対して貢献したい、役に立ちたいという欲求をもっているといわれています。人によっては、お金をもらわなくても、自分のやりたいことを追求することに生き甲斐を感じる人もいます。
 一生食べられるだけのお金を稼いでも、なお働く人がいるのはそのためです。
プロスポーツ選手の中には1年で10億円以上稼ぐ人もいます。一般的なサラリーマンで生涯賃金(学校を卒業してから定年まで働きつづけて得た合計のお金)が2億~3億円といわれていますから、その稼ぎのすごさがわかりますね。
 一流のプロスポーツ選手が、1年でプレーをやめてしまうのではなく、体が動く限り選手を続けるのは、自分のなかにプロの技を極めたいという欲求や、ファンから活躍を期待され、その期待にこたえることで満足感を得たりして自分の中のやりがいをみつけているから一生働かなくても済むだけのお金を稼いでも働き続けます。
 なぜ、働くのか、身近な人、ご両親や学校の先生、親戚や近所の人にきいてみてください。家族の生活のため、生きるため、やりがいを感じるから、いろいろな答えが返ってくると思います。自分が何をやりたいか、また、何がやれるか、学校に通っている間に考えて、そのための努力をしなければなりません。
 経済学の観点からみてみると、希少性がある、できる人が少ない場合は、評価が高くなります。たとえば、野球のボールを時速150kmで投げられる人は日本中を探してもほとんどいません。そういうまれな能力の持ち主は代わりの人がいませんから、プロ野球のスカウトがきて、多額の契約金をもらったり、多額の年俸が保証されます。 
国家(資格)に守られている人も希少性があるといっていいでしょう。
手塚治虫の『ブラックジャック』という漫画は知っている人も多いと思います。天才外科医ですが、医師の国家資格がないため、もぐりのお医者さんです。患者の立場にたってみると、医師の腕がたかければ、国家資格があろうとなかろうと、自分が治ることが一番大事です。だからといって、素人が勝手に手術をして事故があったら患者さんはたまったもんではありません。専門性の高い仕事の一部は国が管理して、国家資格というお墨付きを与えることで、ひょっとしたら優秀かもしれない無資格の人を違法という形で排除します。
 医師、歯科医師、看護師、薬剤師などの医療に関わる仕事や、法律が会計に関わる弁護士、公認会計士、税理士などは無資格で仕事をすると法律違反として処罰されます。
 仕事に必要な能力があるかないかを国が試験をして国家資格として認める。別の言い方をすると、そのような規制があることによって、その職についている人を保護する形になります。
 医学部や法律の専門職になれる人は、国家試験の合格者を国が規制することでその職についている人は、競争相手が少なくなるため、比較的高収入になります。そのような専門職に就けば全員高収入というわけではありません。新しい技術や知識を得るため絶えず、勉強を続けなければならないし、患者さんや顧客に支持してもらえるよう「営業」の能力も必要です。