Mさん(数学)のお薦め本です。
★中高生に読んでもらいたい本・
『若き数学者のアメリカ』(藤原正彦,新潮文庫)
この本は,藤原正彦が1972年夏からの2年間のアメリカ留学を様々な角度から書いた本で,自分の全てをアメリカにぶつけた青年数学者の躍動する体験記でもあり,数学者の視点から眺めた清新なアメリカ留学記ともなっていますので,数学者のものの考え方や人間性がわかったりもすることでしょう。
ところで,著者である藤原正彦ですが,1943年に旧満州の新京生まれのお茶の水女子大学理学部教授でありますが,小川洋子さんが『博士の愛した数式』(映画化もされましたね。)を書いた際にインタビューをした数学者でもあり,作家の新田次郎,藤原ていを父母に持つエッセイストとしても活躍しています。
最後に,この本は,この学園からも近い慶應義塾湘南藤沢キャンパス(SFC)の総合政策学部の1年次の必修科目で「総合政策入門」(などという,大学のイントロダクション的な科目。主に大学の教員を含めたゲストスピーカーの話を聞いたりするもの。)の課題図書として,自己の青春を考える際に挙げられた本でもあります。皆さんも是非自分の生き方を考えたりする際の参考としてみてはいかがでしょうか?
★大学の専門までに読んでもらいたい本・
『はじめての金融工学』(真壁昭夫,講談社現代新書338.01マ) 今回は,経済や金融(銀行など)に興味がある人に是非読んでもらいたい本を紹介します。
この本は,最近話題の金融工学(株や預金などの金融を数学を用いて解明しようという分野)に関して書かれているものです。
まず,最近,銀行などでもたくさん売り物として出回っているデリバティブとは何か説明したいと思います。デリバティブとは日本語では「金融派生商品」などと呼ばれていますが,これは株などの金融商品そのものを売り物とするのではなく,「今からしばらく経ったある時期に株をある値段で買うことができる『権利』」を売り物にしています。だから,例えば今1000円の株があったとします。ここで,「今からしばらく経ったある時期に株を1000円で買うことができる権利」というものを買ったとします。その時,ある時期に株が1500円まで上がってたとしても1000円で買うことができるのです。(したがって,500円儲けられますね。)逆に,株が500円まで下がっていても1000円で買うことになるので,この場合はこの権利は放棄するということができます。
さて,ここで問題となるのは,そのデリバティブの価格をどうやって決めればよいのか,ということになります。それを解決するのがブラック・ショールズモデルという状況設定の方法で,その結果がブラック・ショールズの公式と呼ばれるもので,これにより,その結果を導出した主たる人であるショールズとマートンは1997年ノーベル経済学賞を受賞しました。(ブラックも大きく寄与していたのですが,受賞の前に亡くなっていたため,もらうことができませんでした。)
しかし,このブラック・ショールズの公式を求めようと思うと,まともに考えると確率解析という理論が必要で,自分のように大学の専門課程で数学を学び,卒業し大学院に入ったらやっと取り扱うことができるくらいに相当たくさんの下積みが必要となります。僕自身,現在確率論を専門としてやっているのですが,現在は学部4年で,大学のシステムで大学院の科目を取ることができるのですが,その大学院の講義でこの金融工学の話が出てくるくらいです。(ただし,数学を学部でしっかりとやった学生以外にも開講されているため,数理科学科などの数学専門のカリキュラムで言うと学部2年くらいまでの内容しか既知のものとしておりませんが。)ちなみに,大学院の講義では,ブラック・ショールズの公式をブラック・ショールズモデルという条件設定から導出するまで実に2回分(時間数で言うとなんとまる3時間!)もかかったくらいです!
じゃあ,これは大学院に行くまでわからないのか!?と思う人もいるかもしれませんが,それを含めた金融工学全般を一般の人にもわかるように解説したのがこの本です。高校生にはちょっと難しいので,大学で基本的な微積分をもう少しやったあたり(だから専門に行く前か,専門に行った頃)にでも読んでもらえるとよいのではないでしょうか。逆を言ってしまえば,文系で経済学部や商学部の学生あたりでも,金融工学みたいなものを学びたいと思う人は多いようですが,高校くらいまでの数学だけじゃ話にならず,もっと先の数学まで勉強しないといけない,ということなんですね。ちなみに,この本を書いた真壁先生は,慶應義塾大学理工学部にて週1回講師として一般教養の科目で金融界に勤めている人をゲストスピーカーとして招き,話をしてもらうことを中心として行っている講義も担当されております。 最後となりますが,皆さんの中でこの本とかを読んで触発され,数学を学んでもらったり,金融工学を極めたり,新しい金融商品を作ったりして,大もうけするような人が出てもらえればいいな,と思ってます。
★中高生に読んでもらいたい本・
『若き数学者のアメリカ』(藤原正彦,新潮文庫)
この本は,藤原正彦が1972年夏からの2年間のアメリカ留学を様々な角度から書いた本で,自分の全てをアメリカにぶつけた青年数学者の躍動する体験記でもあり,数学者の視点から眺めた清新なアメリカ留学記ともなっていますので,数学者のものの考え方や人間性がわかったりもすることでしょう。
ところで,著者である藤原正彦ですが,1943年に旧満州の新京生まれのお茶の水女子大学理学部教授でありますが,小川洋子さんが『博士の愛した数式』(映画化もされましたね。)を書いた際にインタビューをした数学者でもあり,作家の新田次郎,藤原ていを父母に持つエッセイストとしても活躍しています。
最後に,この本は,この学園からも近い慶應義塾湘南藤沢キャンパス(SFC)の総合政策学部の1年次の必修科目で「総合政策入門」(などという,大学のイントロダクション的な科目。主に大学の教員を含めたゲストスピーカーの話を聞いたりするもの。)の課題図書として,自己の青春を考える際に挙げられた本でもあります。皆さんも是非自分の生き方を考えたりする際の参考としてみてはいかがでしょうか?
★大学の専門までに読んでもらいたい本・
『はじめての金融工学』(真壁昭夫,講談社現代新書338.01マ) 今回は,経済や金融(銀行など)に興味がある人に是非読んでもらいたい本を紹介します。
この本は,最近話題の金融工学(株や預金などの金融を数学を用いて解明しようという分野)に関して書かれているものです。
まず,最近,銀行などでもたくさん売り物として出回っているデリバティブとは何か説明したいと思います。デリバティブとは日本語では「金融派生商品」などと呼ばれていますが,これは株などの金融商品そのものを売り物とするのではなく,「今からしばらく経ったある時期に株をある値段で買うことができる『権利』」を売り物にしています。だから,例えば今1000円の株があったとします。ここで,「今からしばらく経ったある時期に株を1000円で買うことができる権利」というものを買ったとします。その時,ある時期に株が1500円まで上がってたとしても1000円で買うことができるのです。(したがって,500円儲けられますね。)逆に,株が500円まで下がっていても1000円で買うことになるので,この場合はこの権利は放棄するということができます。
さて,ここで問題となるのは,そのデリバティブの価格をどうやって決めればよいのか,ということになります。それを解決するのがブラック・ショールズモデルという状況設定の方法で,その結果がブラック・ショールズの公式と呼ばれるもので,これにより,その結果を導出した主たる人であるショールズとマートンは1997年ノーベル経済学賞を受賞しました。(ブラックも大きく寄与していたのですが,受賞の前に亡くなっていたため,もらうことができませんでした。)
しかし,このブラック・ショールズの公式を求めようと思うと,まともに考えると確率解析という理論が必要で,自分のように大学の専門課程で数学を学び,卒業し大学院に入ったらやっと取り扱うことができるくらいに相当たくさんの下積みが必要となります。僕自身,現在確率論を専門としてやっているのですが,現在は学部4年で,大学のシステムで大学院の科目を取ることができるのですが,その大学院の講義でこの金融工学の話が出てくるくらいです。(ただし,数学を学部でしっかりとやった学生以外にも開講されているため,数理科学科などの数学専門のカリキュラムで言うと学部2年くらいまでの内容しか既知のものとしておりませんが。)ちなみに,大学院の講義では,ブラック・ショールズの公式をブラック・ショールズモデルという条件設定から導出するまで実に2回分(時間数で言うとなんとまる3時間!)もかかったくらいです!
じゃあ,これは大学院に行くまでわからないのか!?と思う人もいるかもしれませんが,それを含めた金融工学全般を一般の人にもわかるように解説したのがこの本です。高校生にはちょっと難しいので,大学で基本的な微積分をもう少しやったあたり(だから専門に行く前か,専門に行った頃)にでも読んでもらえるとよいのではないでしょうか。逆を言ってしまえば,文系で経済学部や商学部の学生あたりでも,金融工学みたいなものを学びたいと思う人は多いようですが,高校くらいまでの数学だけじゃ話にならず,もっと先の数学まで勉強しないといけない,ということなんですね。ちなみに,この本を書いた真壁先生は,慶應義塾大学理工学部にて週1回講師として一般教養の科目で金融界に勤めている人をゲストスピーカーとして招き,話をしてもらうことを中心として行っている講義も担当されております。 最後となりますが,皆さんの中でこの本とかを読んで触発され,数学を学んでもらったり,金融工学を極めたり,新しい金融商品を作ったりして,大もうけするような人が出てもらえればいいな,と思ってます。