![9月24日の記録 投稿者:加藤慶信](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/d1/b958acea16625252948c3ca0eb13f671.jpg)
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2008/09/24
ABC建設
タシデレ! いつもたくさんの心暖まるメッセージを遠い日本から送って頂きありが とうございます!
私たちは本日無事ABC(アドバンスベースキャンプ)を約5300m地点に建設しま した。 ここを拠点にして、これから本格的な登山活動が始まります。 ついに目指す クーラカンリの麓に辿り着きました。ここに来るまでにすでに多くの困難がありまし たが、数え切れない程の多くの方々の御協力、ご支援があってこその今日のABC建設 だと思っています。 自分の恵まれた境遇を思う時、これから山の中で過ごす数十日 を日々懸命に重ねていかなければならないと強く感じています。
僕は昨日有村隊員と先行してABCに入りましたが、今朝目覚めると眼前にクーラカン リがこの高燥のチベットに屹然とした姿で立ちはだかっていました。一年前クーラカ ンリを目標として決めて以来、寝ても覚めてもこの山の事が自分の心を占拠し、想い 焦がれてきただけに、恋する人にやっと出会えた感じです。 この山を登る為に、縦 走する為に、生きて還る為に何度も何度も頭の中で想像して、シュミレーションを繰 り返してきた。山はその荘厳さ故に、美しさ故に厳しい残酷な側面を併せ持っている。 いまこの夜空を彩る無数の星々と同じ程の危険を孕んでいる。これをどう回避してそ の山に登るのか。雪崩を、クレバスを、落石をどう避けるのか。高山病で動けなくなっ たらどうするのか、7000mを超える壮大な頂上稜線で悪天につかまったらどうす るのか。いくら考えても答えの出るものではないが、それでもひたすら考え抜く事が 山に向かう為の準備の精髄と言ってもいい。「事故を起こしては絶対にならない」こ れが大前提としての出発点でなければ、山に登るべきではないだろう。物事に、この 世の中に「絶対」というものはあり得ない。それでも僕たちは「絶対」を心に誓い 「覚悟」をしなければならない。「死んでもいい覚悟」ではなく「何があっても生き 抜く覚悟」を。 リスクについて考えるのと同じように無事登頂に成功し、下山した 時の喜びがもたらす幸福感、充足感についても何度夢想してきたことだろう。日々の 時間を埋め尽くすほどの想像が、この一年の生活を支えてきた。 そして今僕たちは 現実にその山の前に立っている。想像、空想、夢想ではやはりそれなりの喜びしか得 られない。生きている僕たちは、この厳しい現実世界の中で膨らませてきたその夢を 具現化することで初めて本当の幸福感が得られるはずだ。その為に自分の全てを出し 切り新しい世界を切り開きたい。この素晴らしい仲間達と共に。
有村隊員が中国語を話し、高橋隊長がザーリ村の村民とチベット語で巧みにコミニケー ションをしている姿を目の当たりにし、自分も語学を勉強しなければと思った加藤よ り
PS プロ野球がどうなっているのか気になって夜も眠れません。
写真はBCの風景とBCからみたクーラカンリ主峰です。