とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

ロボットの進化と新たな失業問題

2008年04月21日 07時00分38秒 | 時事

先日気になった読売新聞のニュース。

労働力不足を補うために将来ロボットの労働力が期待されているそうだ。子供の頃、鉄腕アトムや家事ロボットができれば明るく便利な社会ができるだろうと夢見ていた。4月から「絶対彼氏」というドラマがはじまり、ここには自分の理想の条件を満たす彼氏がロボットとして登場する。ロボット技術や産業も、知的好奇心をくすぐられこういう研究も面白だろうとこれまで思ってきた。

でも、考えてみると手放しで喜んでいられない。

ロボットが仕事をしてくれるおかげで人間が楽に生活できるようになるのではなく、ロボットが人間の就労機会を脅かしてしまうからだ。

ロボットだったら電気さえ供給していれば、従順に作業をこなしてくれるし、給料を支払う必要はないし厚生年金を負担する必要もない。企業や雇用主にとっては導入時の「ロボット採用コスト(買取またはレンタル)」だけ払えばよいので都合がよい。介護関係の仕事の一部、サービス産業の一部、大半の肉体労働、単純な繰り返し作業は将来ロボットに作業させることが可能になるのだろう。その分、人間はこれらの仕事から解放されてロボットにはできない知的労働、営業、サービス労働などの職種により多くの人が従事するようになっていくのだろう。

将来、労働力不足が予測されているが、本当なのだろうか?労働人口は将来それほどまでに減少するのだろうか?僕の実感としては、現在仕事につけていない人は20代から50代までかなりいると思う。「ネットカフェ難民」やニートと呼ばれる若者は相変わらず多いだろうし、若い女性の場合は昼間の仕事だけでは収入が少なくて生活できず、親や恋人には言えない高収入なサービス業も兼業(あるいは専業)しているケースも多いことだろう。(こういう仕事に就いている人の数って労働統計にちゃんと反映されているのだろうか?)

また、すべての人が「ロボットに肩代わりさせられない職種」に向いているわけではない。多くの職種で人間とロボットが一緒に働くような状況が予想される。しかし、雇用主にとってみれば人間の労働者には賃金を払わなければならないので敬遠するようになるだろう。労働力の調整は人件費の調整なのだからロボットではなく人間の労働者に対して行うことになるだろう。僕には多くの失業者が生まれ、社会不安や犯罪が増えるのではと思えてしまうのだ。また、ロボット労働者は所得税を納めないから国の税収は国民の少子高齢化にともなって減っていくだろう。

こうした状況をも念頭に、国や企業(雇用主)にはなんらかの対策を今のうちから考えてほしいものだ。「労働力不足」という観点だけでとらえるだけでなく経済構造や就労構造に与える影響や「人的労働の質」にどのように影響を与えていくのか、「業種」だけではなく細かいレベルの「職種」についての分析もした上で対策を考えてほしい。今回のニュースに見られる予測はロボットがまだ労働環境に進出していない期間の統計に基づくものだ。ロボット労働者の増加は想像以上になり、思いもつかないような影響がでてくると僕は思っている。

ロボット技術が進めば進むほど、そして資本主義経済が続くかぎり新たな失業が生まれ、人間が働くことの意味が繰り返し形を変えて問われていくのだろう。働かなくても生きていけるというのなら大歓迎だが、そんな都合のよいことがおこるはずがない。ロボット労働者とバランスよく共存、共栄していくためにどうしたらよいかを今のうちから真剣に考えていくべきだ。市場原理にまかせているだけでは人間にとって厳しい社会になると危惧している。人を大切にする政治をしない限り、安心して生活できる社会はやってこないと僕は思う。

携帯電話や携帯サイトが社会の質や人間関係を大きく変えてしまったのとは比較にならないほど大きな変化をロボット産業の発展は第2のオートメーション革命として私たちの生活に(良いことも悪いことも)もたらすことだろう。

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未来ロボットは352万人力…労働力不足8割強を肩代わり

2025年の未来社会でロボットは352万人分の仕事をするという試算を経済産業省の関連団体「機械産業記念事業財団」がまとめた。

少子高齢化に伴って見込まれる労働力不足の8割強をロボットが肩代わりできる計算で、新たな戦力として期待できる結果となった。

同財団は、17年後におけるロボットの仕事量を、現在開発されている機能に基づき技術向上も加味して、労働人口に換算した。

その結果、卸小売業では商品配達・レジロボなどが65万人分、サービス業では集客施設での案内・清掃ロボなどが141万人分、医療福祉分野では入浴支援ロボなどが97万人分の働きをすると予測された。

農林水産業、運輸通信業も合わせるとロボットは計352万人分の業務をできる見通しとなった。

01~05年における産業別の生産性や就業者数の推移から、これら5業種では25年に427万人分の労働力が不足すると試算されている。同財団は「高齢者や外国人労働者のほかにも、ロボットが経済成長の担い手になる可能性をもっており、注目を」としている。

(2008年4月19日19時31分 読売新聞)
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5 コメント

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またまた… ()
2008-04-25 21:23:51
長くなりそうなので(笑)、

こちらに書きます。

ぜひ、これを機に姫のために一肌脱いでくださいまし(笑)

ロボットまではともかく、iPhonのようなマルチな情報端末を発展させていけば、あるていどまではリモコンの統一はできるのではないでしょうか?
返信する
Re: またまた… (とね)
2008-04-25 23:41:19
まさん

>ぜひ、これを機に姫のために一肌脱いでくださいまし(笑)

これはAyanoさんが「明かりもオーディオもパソコンも、ぜーんぶ1つのリモコンになったら便利だなぁ」と書いていたことに対して、リモコンをロボット化するなりして解決したいということですね?

それならば、ロボット作るまでもなくこんな感じの便利な「学習リモコン」がすでに売っていますよ。(以下のページはパソコンからしか開けませんのでご注意!)

ロジクールHM-882
http://www.yodobashi.com/enjoy/more/i/58652047.html

学習機能付マルチリモコン
「クロッサム2+USB」
http://www.sugi-ele.co.jp/index.htm

このほかにもいろいろあります。
http://www.geocities.jp/visual11audio/remote/remote.html
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早速… ()
2008-04-26 00:05:44
姫(←この呼び方は冗談ですよ。念のため)にお知らせしないと!

このブログの写真のように小さいロボットがリモコン機能を持ってるって形でもいいですよね~。

簡単な定型の会話をして…という感じで。
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Re: 早速… (とね)
2008-04-26 11:14:29
まさん

小さいロボットが部屋中を動き回ってリモコン操作をするのも可愛いですね。

以前話題になって少しだけ流行ったソニーのAIBOというロボット犬にリモコン学習機能をつけてもよかったかもしれません。
返信する
ローマ帝国 (さくら)
2010-03-21 01:53:09
ローマではパンとサーカスが無料で提供されました。その結果、堕落したものは貧民に落ち商売で成功したものは富を得ました。

また奴隷制度が充実していたためにローマ市民が学問に励んだりもして正の部分もあったのです。 奴隷制度自体悪です。



暇ができ生活が保障されれば人は堕落するか新しい文化を生み出すか何かが起きるのは確かでしょう。資本主義というシステム自体廃止して社会主義的にして自由や人権を尊重するシステムになれば生活できなくなることがないと思います。これこそカールマルクスが言うユートピアでしょう。私は共産主義者ではないのですが資本主義維持するのであれば生産と拡大を続けるには人類社会がさいげんなく膨張しなければなりません。

これはやはり限界があるでしょう。
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