
「今度こそ納得する物理・数学再入門:前野昌弘」
地元の書店で見かけて「あ、これよさそう!」と買ってみた琉球大学の前野先生の本。
勉強中の「量子現象の数理:新井朝雄」が予想以上に難しいので気分転換のつもりで読んでみた。
タイトルに「今度こそ納得する」とあるように大学物理系の1、2年で学ぶ物理や数学の内容で「本当はよくわかっていないのだけど、先生や友達には聞きにくい」テーマを選んで解説している。授業では時間の都合で省略されがちなものばかり。
次のような疑問に答えてくれる親切な本だ。

「落ちこぼれ予備軍救済本」として有名な長沼伸一郎著「物理数学の直観的方法 第2版」系の本とも言えないことはない。けれども「物理数学の直観的方法」のほうは取り上げているテーマを学んでいなくても読んで理解できるようになっているのに対し、本書は「ひととおり教科書で勉強してから読むべき本」である。タイトルには「再入門」と書いてあるが、むしろ「盲点をより深く理解するため」の本だと僕には思えた。
その意味では大学に入学したばかりで、これから物理を勉強しようとする学生には、僕はむしろ潮秀樹著「よくわかる物理数学の基本と仕組み」のほうをお勧めする。
各テーマに対して、僕の感想を書いておこう。
疑問1:dy/dxは割り算なのか?
これはさすがに知っていた。でも理解していない人には読んでほしい。
疑問2:三角関数のたくさんの公式を図で理解できませんか?
これだけの公式が図示できるのは知らなかったが、図と照らし合わせて公式を眺めると面白かった。
疑問3:∂r/∂x ≠ 1/(∂x/∂r)なのはなぜ?
これは以前から理解していた。でもあらためて図解で説明してもらうとイメージしやすいものだと感心した。
疑問4:行列式ってどんな意味があるの?
ごれは「常識」の範囲なので、ざっと読み流してしまった。
疑問5:div, rot, gradってどういう意味?
既に理解していたが、グラデーションのついた絵がとてもよく描けているので、初学者にはいい教材だなと感心。
疑問6:ラプラシアンって何?
ラプラシアンについても既に理解していたが、グラデーションのついた絵がとてもよく描けているので、初学者にはいい教材だなと感心。
疑問7:極座標ラプラシアン、なぜあんな形に?
この章は僕にとっても「目からウロコ」。この部分だけでも本書を買った意味があると思った。図解と式の導出が素晴らしい。
疑問8:zとz~*はなぜ「独立」なの??
そもそもこの2つが「独立」だという発想が僕にはなかった。複素関数論はたくさん勉強したが、この章はとてもよかった。
疑問9:仮想仕事の原理って何?
既に理解していたので、あらためて読む必要はなかったが、初心者はこういう疑問を持つんだなということがわかり、ためになった。
疑問10:最小作用の原理はどこからくるか?
既に理解していたので、あらためて読む必要はなかったが、初心者はこういう疑問を持つんだなということがわかり、ためになった。前野先生は説明がうまいなと感じた章。
疑問11:温度とエントロピーっていったいどういう関係?
熱力学はみっちり学んでいたので、特に読む必要はなかった。
疑問12:熱力学の関数 (U,H,F,G) は、それぞれどこが違うの?
熱力学はみっちり学んでいたけれども、この章を読む価値は大いにあった。、
疑問13:アンペールの慣流則の謎
電磁気学はサボリ気味だったので、僕にとっては「目からウロコ」の章だった。
疑問14:静電気の位置エネルギーはどこにある?
電磁気学はサボリ気味だったので、僕にとっては「目からウロコ」の章だった。
疑問15:ベクトルポテンシャルとは何ぞや?
この部分はみっちり学んでいたつもりだったが、自分の理解が不十分だったことに気付かされた。図解と説明が素晴らしい。
疑問16:DとE、BとHは何が違う?
単純に考えていたが、実はとても深い内容が含まれていた。
疑問17:何がなんでも E=mc2 ?
特殊相対性理論はみっちり勉強したが、盲点が案外含まれているものだ。自分の勘違いをひとつ見つけることができてよかった。
「水の分子2個」よりも「水素分子2個+酸素分子1個」のほうが質量が大きいのだと聞いて「え、そうなの?」と思う人は、この章を読んだほうがいい。
疑問18:光の質量に関するFAQ
よく理解している内容なので、特に新しい発見はなかった。
疑問19:双子のパラドックスの解決
よく理解している内容なので、特に新しい発見はなかった。
全体として「気分転換」以上にためになった本だ。自分に欠落していた理解や物理系の雑学にパッチを当てることができたという感じだった
前野先生はホームページは2つあり、お書きになった本のサポートページは「その2」のほうに含まれている。


先生は次のような本もお書きになっている。これらも初学者にはなかなかよさそうだ。
よくわかる電磁気学:前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3f7e34e15a862a7c6471d5eb60be0273
よくわかる量子力学:前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/08beb004bf1a5c9e6f6192439045c120
よくわかる解析力学:前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bd9d328483de3bc3f9a3ad14ec6fe078
サポートページ一覧
http://irobutsu.a.la9.jp/mybook/index.html
今日紹介したのはこちらの本。
「今度こそ納得する物理・数学再入門:前野昌弘」:サポートページ

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地元の書店で見かけて「あ、これよさそう!」と買ってみた琉球大学の前野先生の本。
勉強中の「量子現象の数理:新井朝雄」が予想以上に難しいので気分転換のつもりで読んでみた。
タイトルに「今度こそ納得する」とあるように大学物理系の1、2年で学ぶ物理や数学の内容で「本当はよくわかっていないのだけど、先生や友達には聞きにくい」テーマを選んで解説している。授業では時間の都合で省略されがちなものばかり。
次のような疑問に答えてくれる親切な本だ。

「落ちこぼれ予備軍救済本」として有名な長沼伸一郎著「物理数学の直観的方法 第2版」系の本とも言えないことはない。けれども「物理数学の直観的方法」のほうは取り上げているテーマを学んでいなくても読んで理解できるようになっているのに対し、本書は「ひととおり教科書で勉強してから読むべき本」である。タイトルには「再入門」と書いてあるが、むしろ「盲点をより深く理解するため」の本だと僕には思えた。
その意味では大学に入学したばかりで、これから物理を勉強しようとする学生には、僕はむしろ潮秀樹著「よくわかる物理数学の基本と仕組み」のほうをお勧めする。
各テーマに対して、僕の感想を書いておこう。
疑問1:dy/dxは割り算なのか?
これはさすがに知っていた。でも理解していない人には読んでほしい。
疑問2:三角関数のたくさんの公式を図で理解できませんか?
これだけの公式が図示できるのは知らなかったが、図と照らし合わせて公式を眺めると面白かった。
疑問3:∂r/∂x ≠ 1/(∂x/∂r)なのはなぜ?
これは以前から理解していた。でもあらためて図解で説明してもらうとイメージしやすいものだと感心した。
疑問4:行列式ってどんな意味があるの?
ごれは「常識」の範囲なので、ざっと読み流してしまった。
疑問5:div, rot, gradってどういう意味?
既に理解していたが、グラデーションのついた絵がとてもよく描けているので、初学者にはいい教材だなと感心。
疑問6:ラプラシアンって何?
ラプラシアンについても既に理解していたが、グラデーションのついた絵がとてもよく描けているので、初学者にはいい教材だなと感心。
疑問7:極座標ラプラシアン、なぜあんな形に?
この章は僕にとっても「目からウロコ」。この部分だけでも本書を買った意味があると思った。図解と式の導出が素晴らしい。
疑問8:zとz~*はなぜ「独立」なの??
そもそもこの2つが「独立」だという発想が僕にはなかった。複素関数論はたくさん勉強したが、この章はとてもよかった。
疑問9:仮想仕事の原理って何?
既に理解していたので、あらためて読む必要はなかったが、初心者はこういう疑問を持つんだなということがわかり、ためになった。
疑問10:最小作用の原理はどこからくるか?
既に理解していたので、あらためて読む必要はなかったが、初心者はこういう疑問を持つんだなということがわかり、ためになった。前野先生は説明がうまいなと感じた章。
疑問11:温度とエントロピーっていったいどういう関係?
熱力学はみっちり学んでいたので、特に読む必要はなかった。
疑問12:熱力学の関数 (U,H,F,G) は、それぞれどこが違うの?
熱力学はみっちり学んでいたけれども、この章を読む価値は大いにあった。、
疑問13:アンペールの慣流則の謎
電磁気学はサボリ気味だったので、僕にとっては「目からウロコ」の章だった。
疑問14:静電気の位置エネルギーはどこにある?
電磁気学はサボリ気味だったので、僕にとっては「目からウロコ」の章だった。
疑問15:ベクトルポテンシャルとは何ぞや?
この部分はみっちり学んでいたつもりだったが、自分の理解が不十分だったことに気付かされた。図解と説明が素晴らしい。
疑問16:DとE、BとHは何が違う?
単純に考えていたが、実はとても深い内容が含まれていた。
疑問17:何がなんでも E=mc2 ?
特殊相対性理論はみっちり勉強したが、盲点が案外含まれているものだ。自分の勘違いをひとつ見つけることができてよかった。
「水の分子2個」よりも「水素分子2個+酸素分子1個」のほうが質量が大きいのだと聞いて「え、そうなの?」と思う人は、この章を読んだほうがいい。
疑問18:光の質量に関するFAQ
よく理解している内容なので、特に新しい発見はなかった。
疑問19:双子のパラドックスの解決
よく理解している内容なので、特に新しい発見はなかった。
全体として「気分転換」以上にためになった本だ。自分に欠落していた理解や物理系の雑学にパッチを当てることができたという感じだった
前野先生はホームページは2つあり、お書きになった本のサポートページは「その2」のほうに含まれている。


先生は次のような本もお書きになっている。これらも初学者にはなかなかよさそうだ。
よくわかる電磁気学:前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3f7e34e15a862a7c6471d5eb60be0273
よくわかる量子力学:前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/08beb004bf1a5c9e6f6192439045c120
よくわかる解析力学:前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bd9d328483de3bc3f9a3ad14ec6fe078
サポートページ一覧
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今日紹介したのはこちらの本。
「今度こそ納得する物理・数学再入門:前野昌弘」:サポートページ

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ご無沙汰しております。
実はこの本、昨日5/20に書店でたまたま見かけて、面白そうだということで、買いました。
確かに長沼伸一郎さんの「物理数学の直感的方法」とは趣きが違いますね。
イメージ的には今度こそ得するの方が簡単そうですが、なかなか深いですね。
特に面白かったのはP104の「最小になるようなもんを探したらこれだったんだよっ!」というラグランジアンの説明がありました。
解析力学ではより普遍的(正準変換で不変)な正準運動方式にでてくるハミルトニアンがラグランジアンよりも普遍的な物理量と思っておりました。
ハミルトニアンはエネルギー保存法則と関係しますので、当然そのように思います。
ただし最小作用の原理は様々な物理現象の中で最も普遍的な原理ですので、その意味ではラグランジアンはハミルトニアンに劣らず重要な物理量ですね。
特に場の量子論ではラグランジアンが表舞台に登場すると思いました。
ただしこのラグランジアン=T-Uというのはいかにも分かりずらいです。
物理学では時々このように直感的な理解に苦しむ物理量が出てきます。
大学での解析力学の授業ではラグランジアンはニュートンの運動方程式がどのような座標変換でも変わらないので、微分方程式が解きやすい座標で記載できるという理解でひとまず納得してしておりました。
大学のときにこのような本に巡り会いたかったです。
とねさん、話は変わって、最近面白い本を買いました。
「新版 分数ができない大学生(ちくま文庫:岡部恒治、戸瀬信之、西村和雄 著作)」です。
中身はタイトル部分が主ではありません。
自分も大学1年生の数学でεーδで苦労しましたが、この本は大学の数学は高校とは違うということを思わずうなる程の内容で記載しております。
こんな本が読みたかったという感じでした。
とねさんもいかがでしょうか?
大変お久しぶりです!
解析力学についての章もよかったです。数式の展開を理解していくのに頭がいっぱいになりがちなので、ついつい「意味」をおろそかにしがちですしね。
ラグランジアンの大切さもよくわかります。
アマゾンで「分数ができない大学生」の紹介やレビューを読んでみました。そういう大学生には「とね日記」は難しすぎるでしょうかね?(数式はほとんど書かないようにしているつもりですが。)
∫Ldt が作用だから、
Ldt=(T-U)dt=(-H+2T)dt=(-H+pv)dt=-Hdt+pdr=(H,p)とd(t,r)のローレンツ内積
が本質。
教えていただきありがとうございます。
Ldtをそのように表現すると美しい本質が浮かび上がってくるわけですね。