とね日記

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ハイゼンベルクの顕微鏡(不確定性原理は超えられるか)

2006年12月28日 12時40分26秒 | 物理学、数学
 
2006年12月に書いた紹介記事が破損、紛失してしまったため、本書の紹介文だけを載せておく。(2021年10月10日)


ハイゼンベルクの顕微鏡~不確定性原理は超えられるか

著者紹介:
石井茂[イシイシゲル]
1953年、大阪府堺市生まれ。1975年に大阪大学理学部物理学科を卒業後、日立電子勤務(ソフトウェア開発に従事)を経て1981年、日経BP社へ。ソフトウェア、計測器、人工知能などの分野を対象に技術解説記事を執筆し、2003年、日経BP社編集委員室長。

本書の内容:

ハイゼンベルクが発見した不確定性原理は、量子力学の一応の完成を告げると同時に、量子力学の物理的解釈をめぐって論争の種をまくことになった。量子力学の数学的定式化はフォン・ノイマンによって達成されるが、このときノイマンは不確定性原理がもたらす量子の観測問題にも手を染めた。量子力学を疑う人々がほとんどいなくなっていったこととは裏腹に、観測問題については「シュレディンガーの猫」「ウィグナーの友人」「EPRパラドックス」などのさまざまな疑問が提出され、長い間にわたって論争が続いてきた。

量子力学における観測問題を決着させたのは、日本の数理物理学者であった。その新しい観測理論は、ハイゼンベルクの不確定性原理に修正を迫る結果になった。

本書はハイゼンベルクやシュレディンガーなどのあまり知られていないエピソードをたっぷりと紹介しながら、不確定性原理がいかに発見され、その後いかなる道をたどったかを物語る。

 
現代社会は量子力学に多くを負っています。コンピュータを動作させる原動力の半導体は、量子力学なしでは今日の隆盛はあり得ませんでした。インターネットで情報を運ぶ手段となっているレーザー光の技術も、量子力学なしには発展できなかったでしょう。その量子力学の基本原理が「ハイゼンベルクの不確定性原理」です。

1927年、天才物理学者ハイゼンベルクは次のように宣言しました。量子の世界では、物体の位置と速度を同時に知ることはできない。この関係は非常に簡単な不等式で表されます。そしてハイゼンベルクはこの原理を、ミクロの世界を見ることのできる仮想的な顕微鏡を使った思考実験によって導きました。本書の表題はそれにちなんだものです。

ハイゼンベルクの不確定性原理は以後、絶対的な基本原理として君臨し続けてきたのでした。しかしそこには、あいまいな点が残っていました。75年間、誰も指摘しなかったこのあいまいさを、ある日本人科学者が明快に整理して説明したのは2002年のことです。それは発見者の名をとって「小澤の不等式」と呼ばれています。ハイゼンベルクが発見した不等式は絶対不変の原理ではなく、小澤の不等式によって乗り越えられるかもしれない、という可能性が出てきたのです。

しかも20世紀後半の技術進歩によって、より小さな現象を測定することが可能になってきました。ハイゼンベルクの不等式が正しいのか、それとも小澤の不等式が正しいのか。それは遠からず実験によって証明されるでしょう。

本書はその新しく発見された小澤の不等式が、どのようなものであるかを解説します。ギリシャ時代から今日に至るまで、物理学上の基本的発見のほとんどが欧米で成し遂げられてきました。現代の物理学を象徴するハイゼンベルクの不確定性原理が、日本人科学者の手によって覆されるとすれば、こんな痛快なことがまたとあるでしょうか。(著者:石井 茂)

第1章 不確定性原理とは何か
第2章 不確定性原理はどのようにして発見されたか
第3章 物理学会との対決―コペンハーゲン解釈の成立
第4章 再開された論争―アインシュタインの再批判
第5章 原子核物理学の発展とハイゼンベルク
第6章 コペンハーゲン解釈への挑戦
第7章 不確定性原理は破れているのか―重力波測定の限界をめぐって
第8章 書き直された不確定性原理―ハイゼンベルクから小澤へ


 

 
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