とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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物理数学の直観的方法 第2版

2007年04月16日 00時19分34秒 | 物理学、数学
2011年10月に追記:

この記事を書いて4年後、本書の普及版がブルーバックスから刊行された。お買い求めは以下の記事で紹介している普及版をどうぞ。

物理数学の直観的方法〈普及版〉 (ブルーバックス):長沼伸一郎
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ab9396e295687179ac3a71553b8165a1
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この本は目からウロコが落ちるような本だ。学生時代にこんな本に出会っていたらよかったのにと思った。しかし初版が出版されたのは1987年でちょうど僕が大学を卒業した年だったからそれは無理というもの。(著者は僕より1つ年上で、パスファインダーというページを運営しこの本の出版後も活躍されている。)

この「物理数学の直観的方法 第2版」(長沼伸一郎著)は1987年に初版が出版され、当時26才だった著者は全くの無名だったにもかかわらず爆発的に売れた本で、多くの理系読者が歓喜したそうだ。口コミで広まったこの本は神田の書店では村上春樹のベストセラー「ノルウェイの森」を抜いて売り上げトップを記録した。

大学に入ると物理学や数学はいきなり学問的、抽象的になるため、ついていけなくなる学生が多い。しかし単位は落とせないし、自分が理解していないことを友達に知られるのも恥ずかしいので結局教科書の証明や解法を丸暗記して試験にのぞむことになる。試験が終われば理解できなかったことはきれいさっぱり忘れて、そのまま卒業してしまうのだ。

この本はそういった「大学4年間の勉強で遭遇する数々の難所」を具体的なイメージとしてわからせてくれる本である。理解をはばんでいる定理や公式がどのように役立つのかがはっきりわかるようになる本である。著者自身、学生時代に同じ苦労をしたのでその経験がこのコンパクトな本にぎっしり詰まっている。

4月ということでこの週末、神田神保町の古書店街にはいつもより新入生らしき学生が多かった。僕はこの本を少しでも多くの大学生に読んでもらいたい。紹介するにはグッドタイミングである。(ただし、限られたページ数で意味を理解してもらおうという主旨の副読本なので試験対策にはならない。)

僕自身、複素解析を勉強した際、「複素関数の積分」が経路によらないこと」や「留数」、「コーシーの積分定理」、「ローラン級数展開」などを意味が正確にわからないまま丸暗記したのだが、大学を卒業して20年たった今ようやく具体的にイメージできるようになり、大学時代の悔しい思いを克服できてうれしかった。

この他にもいろいろな「目からウロコ」が詰まった本なので、以下の目次を参考にしてほしい。

物理数学の直観的方法出版裏話(関連リンク)
http://book.motion.ne.jp/pathfind/PhyMathNote.html

物理数学の直観的方法 第2版」(長沼伸一郎著)

第1章: 線積分、面積分、全微分

第2章: テイラー展開

第3章: 行列式と固有値
- 行列式
- 行列式の幾何学的意味
- 固有値について

第4章: e^iπ = -1 の直観的イメージ

第5章: ベクトルのrotと電磁気学
- rotの意味
- ベクトルポテンシャル
- rotと電磁波

第6章: ε-δ論法と位相空間
- 不等式の重要性と点列
- 「連続」の表現方法
- なぜ<と≦があいまいになるか
- そのために生じる結末
- supの概念
- コンパクトと一様連続
- コーシー列について
- 完備について
- 距離の概念
- 位相空間
- 位相幾何学について

第7章: フーリエ級数・フーリエ変換
- 基本となる発想
- フーリエ級数への移行
- フーリエ級数の区間
- フーリエ変換
- 微分方程式への応用
- スペクトル
- フーリエ変換と線形システム
- 関数の内積と直交関係

第8章: 複素関数・複素積分
- 複素積分の概要
- なぜ 1/z 以外の項は消えてなくなるのか
- コーシーの積分定理 - なぜ積分路を変形できるか
- コーシーの積分公式
- ローラン級数展開

第9章: エントロピーと熱力学
- エントロピー増大の法則
- 熱力学におけるエントロピー
- サイクルのやっかいさ
- 断熱過程の効用
- エントロピー概念の導入
- カルノー・サイクルについて
- エントロピーの数学的性質
- 情報理論とエントロピー
- 統計力学におけるエントロピー
- 場合の数とエントロピー
- エントロピーの概念の適用限界

第10章: 解析力学
- 最速降下線
- オイラーの微分方程式
- ラグランジュアン
- ハミルトニアン

第11章: 三体問題と複雑系の直観的方法
11-1: 天体力学の壮大なる盲点
11-2: 三体問題の秘密の扉
11-3: 応用への道
- 微分方程式の対角化解法
- 一般の場合への拡張
- 固有値の支配力
- 生態系への応用
- 非線形の場合
- 複雑系とカオス現象の直観的理解
11-4: 過去と未来
- 「ハーモニック・コスモス」への信仰
- 近代医学への影響 - 切り貼り細工への道
- 近代社会思想への影響 - 「個人の自由」の絶対化
- なぜこの問題は盲点に長く居座ったか
- 数学がこれからなすべきこと


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