とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

ファインマンの経路積分に入門しよう!

2010年12月16日 23時26分41秒 | 物理学、数学
とね日記賞」を発表した後、年末までファインマンの経路積分や量子電気力学を勉強することにした。

電子や光子などはビリヤード玉のように1本の軌道に沿って運動するわけではない。電子や光子のひとつひとつは複素数の波動関数であらわされる状態で空間全体に広がっていて、空間の各点での電子や光子の存在確率を求めることができるだけだ。存在確率は波動関数の絶対値の2乗で計算される。(ボルンの確率解釈)複素数の波動関数のイメージは「EMANの量子力学」のこのページの一番下のアニメーションで見ることができる。



経路積分はファインマンが大学院生だった1940年頃に発案したもので、「可能なすべての経路を積分する(足し合わせる)」という奇想天外な理論。上のような電子や光子の出発点と終着点がわかっているとき、無数の経路が考えられる。それぞれの経路を通る確率は大小の差はあったとしても必ずゼロより大きい。つまり電子や光子は考えられうる可能な経路の「すべて」を通って終着点に到達するのだ。古典力学の「最小作用の原理」で使われる「作用」という量を量子力学に適用し、可能なすべての経路について積分(加え合わせる)のが経路積分なのである。

経路積分のおかげで、イメージしにくい量子力学のいくつもの現象が直観的に理解できるようになっただけでなく、量子力学の基本概念から、シュレーデインガー方程式の表示とのつながり、具体的な事例として摂動論や、遷移、変分原理、量子電気力学の分野などを扱うことができる。現代物理学には欠くことのできない理論なのだ。

ファインマン先生ご自身による一般向けの本と物理学専攻の学生向けの教科書が出版されているので紹介しよう。それぞれの本は読後に記事にする予定だ。

まず、一般向けの本。同じ内容だが文庫本と単行本の2種類でている。後者は古書でしか入手できない状況だが、老眼の進行している人にはこちらがよいだろう。(笑)

光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学 (岩波現代文庫)」(紹介記事


光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学 (単行本)


この本はファインマンが一般の人に対して行った4日間の講演をまとめたもので、最初の2日間が経路積分、後の2日間が量子電磁力学についての講義になっている。経路積分のほうは以前「入射角と反射角は等しいのだが...(光学)」という記事で紹介した内容を含んでいる。この本はファインマンの一般向けの本の中でも特にお勧めだ。原書でお読みになりたい方は以下のものがいいだろう。

QED: The Strange Theory of Light and Matter」(紹介記事



つぎに物理学専攻の学生向けの本を紹介しよう。

ファインマンの「量子力学と経路積分」の日本語版は1990年に出版された「マグロウヒル版」と1995年に出版された「みすず書房版」の2種類がある。これらはともに1965年に出版された「Quantum Mechanics and Path Integrals (Mcgraw Hill-International Series in the Earth and Planetary Sciences)」を北原和夫先生が翻訳したものだが、残念なことに英語原本には数式や問題のミス、誤植がたくさんあるため、翻訳版もそれを引きずってしまっている。日本語の「マグロウヒル版」ではそれが顕著で「みすず書房版」では多少訂正されたものの、間違いは多数残っている。購入されるのならば少しでも間違いの少ない「みすず書房版」をお勧めする。

---------------------
2017年3月に追記:

新版が刊行されたので、お買い求めになる方はこちらをどうぞ。

発売情報:【新版】 量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/300a29769f773a609ea3560e86952e60

---------------------

量子力学と経路積分(みすず書房版)


Quantum Mechanics and Path Integrals (Mcgraw Hill-International Series in the Earth and Planetary Sciences) - 1965年出版


英語版はその後、間違いがすべて訂正され今年の夏に出版された。修正された誤記は879箇所ある。価格も1500円とお買い得なので、英語で問題ない方はこちらをお勧めする。これの翻訳版はまだ出ていない。

Quantum Mechanics and Path Integrals: Emended Edition (Dover Books on Physics) - 2010年出版


この英語版に対応する日本語版が2017年3月に刊行された。

発売情報:【新版】 量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/300a29769f773a609ea3560e86952e60


この本の各章には理解を深めるための「問題」が出題されているのだが、解答は与えられていない。幸い日本では立正大学の米満澄先生、高野宏治先生による解答本が1994年に出版されているので、こちらも「量子力学と経路積分(みすず書房版)」と合わせてお買い求めになるとよい。この本の良いところは日本語の「マグロウヒル版」や1965年出版された英語版の記述の間違いも丁寧に訂正していることだ。

ーファインマンを解くー 経路積分ゼミナール


このように、僕は年末までしばらくの間この不思議な理論、ファインマンのワクワクする世界に没頭するわけだ。

参考リンク:

経路積分とは何か?(Applet同梱版)
http://homepage3.nifty.com/iromono/movingtext/pathintegral1.html

現代物理と仏教を考えるページ
~ファインマンの経路積分量子化と華厳経を中心に~
http://kishi123.server-shared.com/
(僕は仏教については一般常識以上の知識を持ち合わせていないので、物理学と仏教の関係について意見できる立場にはないが、岸さんのこのサイトはファインマンの経路積分を物理学的な側面から詳しく、きちんと解説されているので紹介させていただいた。)

<スペース・シャトル>危険の確率:ファインマンによる事故原因の究明
http://book.geocities.jp/bnwby020/kikenritu02.html

経路積分こと始め(1)
http://blogs.yahoo.co.jp/kafukanoochan/64130680.html


関連記事:

光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学 (岩波現代文庫)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4b34cd4e7d077d037022e62734d1ee76

QED: The Strange Theory of Light and Matter
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1860569fe58727fce5256356863001f9


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37 コメント

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お返事ありがとうございます (Leo)
2021-04-23 16:06:45
お忙しいところお返事ありがとうございます。
ど素人の考察を長々と書いてすみませんでした(笑)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/9f/Toroid_by_Zureks.svg
↑のような図の四角部分に複素平面を貼り付け、回転方向を偏光方向とすれば「実部(電場or磁場)」と「虚部(磁場or電場) 」と「偏光方向」が同時に描けるかな〜なんて事も考えてしまいました(汗)

「場の量子論: 不変性と自由場を中心にして(量子力学選書):坂本眞人 - とね日記」の URL がこのページになってますが、恐らくこっちですね↓
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f68fdd9b2a4e8ba2dfa88d4afcb3b716

ご紹介ありがとうございました。

このコメントには返信不要ですm(_ _)m
返信する
Re: お久しぶりです (とね)
2021-04-22 22:09:50
Leoさんへ

2年ぶりの返信なのですね。(笑)大変お久しぶりです。
とても多忙な生活をしていて、ていねいに返信できないので、さしあたりいただいたコメントを公開させていただきました。

あと、光子については直近で紹介したこの教科書の第13章「マクスウェル場の量子化」で数式を導出しながら詳しく解説されていました。この章を読んだとき、この記事のことを思い出しました。

場の量子論: 不変性と自由場を中心にして(量子力学選書):坂本眞人https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0f47de5854daf4eb38339a73791544a8
返信する
お久しぶりです (Leo)
2021-04-21 00:44:28
とね様お久しぶりです。

2年前に教えていただいてからも、ちょくちょく光子などについて調べていたのですが、私の考えが正しいかご意見いただいてもよろしいでしょうか?

とね様に教えていただいた、

光子に対する量子力学の構成および Maxwell方 程式との関係 - J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejfms1972/109/2/109_2_49/_pdf

には、

《Re→E, Im→Hとそれぞれ電界,磁界で置き換えてみると,上式は自由空間における Maxwell 方程式と同形であることがわかる。》

とあり、

量子力学入門
http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/qm/qm.pdf

の 54 ページにも似たような記述がありました。

直線偏光では電場と磁場の位相が揃っているので、複素平面上の複素ベクトル(状態ベクトル)が a+bi と -a-bi を行ったり来たりするイメージをしました。
1個の光子は円偏光のようですが、円偏光については少し混乱したのですが、「複素平面(ヒルベルト空間?)」と「偏光方向を表す xy 座標」を混同していることに気付き「複素平面の実部・虚部の 2 成分 + 偏光方向 1 成分(xy座標を使えば2成分)」の、3 もしくは 4 成分(次元)のベクトルをイメージしました。

光子の偏光とスピン
http://www7b.biglobe.ne.jp/~fortran/education/Doshisha/Photon.pdf

に書いてある、

《2状態のヒルベルト空間を,便宜上,実係数の範囲内で xy 平面と重ねて考えている。(5) のように複素係数まで拡がればこうはいかず,状態ベクトルを xy 平面上のベクトルに対応させて考えることはできなくなる。(5) の円偏光ベクトルはヒルベルト空間では直交しているが,xy 面上では直交ベクトルではない。》

《 |R〉と|L〉は(実部・虚部とも),進行方向に向かってそれぞれ「右回り(時計回り)」と「左回り(反時計回り)」に電場(磁場)の向きが回転する,円偏光状態(Sz = ±1)を表している。》

とはそういう事なのではと考えています。
ファインマンの「高速回転する矢印」もこれなんでしょうか? 上で kafuka さんも

>その図が、光子の角運動量か、偏光面を意味する可能性もあるかも知れません。

と書いていますし。但し1つの光子の状態ベクトルの話はもっと複雑そうなので、私がしたのは多数の光子が集まった場合に限るのかな?とも考えています。

そして、1個の光子が円偏光ということを考えると、

|R〉(右回りの円偏光。複素数で実部(電場)と虚部(磁場)がある)

|L〉(左回りの円偏光。複素数で実部(電場)と虚部(磁場)がある)

が本質で、それらを足し合わせることで、

|H〉(水平方向の偏光。複素数で実部(電場)と虚部(磁場)がある)

|V〉(垂直方向の偏光。複素数で実部(電場)と虚部(磁場)がある)

ができると考えています。

それから必要のない情報かもしれませんが、上記「量子力学入門」の 59 ページには、

《なお、正確には、波の方向を表すものが波動関数の中に入ってくるようになってさえいれば、波動関数が複素数である必要はない。》

《つまり波の進行を表すためには、複素数というよりは実数2成分の自由度が必要なのである。波動関数も、複素数で書くのがどうしても嫌なら、実数2成分の関数を使って表すこともできる。ただしその場合、運動量は行列で表されることになって計算がややこしくなる。》

という記述もありました。あと とね 様に教えていただいた上記論文に対する討論もありました↓

「光子に対する量子力学の構成および Maxwell の方程式との関係」に対する討論
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejfms1972/109/12/109_12_558/_pdf/-char/en


とね 様はお忙しいと思いますので、返信は時間が空いたときで構いませんので、宜しければお返事ください。

かなりの長文失礼しました。
返信する
Re: 返事遅れてすみません (とね)
2019-01-31 00:56:04
Leoさんへ

いえいえ、どういたしまして。

このテーマは難しいですが、興味を持っている人が多いです。今夜、たまたま科学雑誌Newtonの編集人の方と会いましたのでNewtonの特集記事のネタとして勧めておきました。難しい内容なので一般向け科学雑誌の記事として実現するかどうかはわかりませんが。
返信する
返事遅れてすみません (Leo)
2019-01-30 23:10:29
T_NAKAさんのブログの

>私は、
>・2乗したら光子の存在確率を示す波動関数は実数
>・その波動関数を解として持つ方程式はマックスウェルの電磁方程式
>と考えています。

という記述や、

>光の波を光の波動関数であると考えるとこの考え方は光子1個の運動を記述する(シュレーディンガー方程式のような)量子力学的運動方程式が存在して、その波動関数が古典的な光波と一致するという考え方なのですが

という記述を見て、なんとなくですが分かった気(?)になりました。

お忙しい中ご回答いただき、本当にありがとうございました。
返信する
Re: お答えありがとうございます (とね)
2019-01-29 23:19:07
Leo様へ

> つまり電子の場合にはあった「存在確率を支配する確率の波」は、光子には無いということでしょうか?

回答:いえ、光子にも存在確率を支配する確率の波はあります。

> それともマクスウェル方程式が光子の存在確率を支配する確率の波という事なのでしょうか?

回答:いいえ、ちがいます。

平日はとても忙しい生活をしていますので、くわしくご説明したり議論する時間がとれません。他の人が書いたブログや解説ページを紹介させていただきます。

ご質問いただいた事がらは、大学の学部レベルで使われている一般的な電磁気学や量子力学の教科書には書かれていないレベルのことですので、数式を使わず文章だけで説明することは難しいです。

光子の波動関数は実数と言ったらそんなに変なことなの?
https://teenaka.at.webry.info/201012/article_28.html

光子についての質問です。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11113305371

光の波を光の波動関数であると考えるとこの考え方は光子1個の運動を記述する(シュレーディンガー方程式のような)量子力学的運動方程式が存在して、その波動関数が古典的な光波と一致するという考え方なのですが「アインシュタインの反乱と量子コンピュータ」 佐藤文隆著 京都大学学術出版会
http://www.amazon.co.jp/dp/4876988412/
という書籍のp.309に「光子によるヤング干渉の誤解を正す」という題名のエッセイが掲載されており、下記内容が論じられています。
・光子1個の運動を記述する量子力学的運動方程式は存在しない。
・では場の量子論を使ってヤングの干渉を記述するとどうなるか?

マックスウェル方程式は、光子の波動特性の正しい記述ですか?
https://askjapan.me/q/-33452674500

ただし、次のような論文もあります。日本語のところだけ読んでもだいたいの意味はくみとれるとおもいます。

光子に対する量子力学の構成および Maxwell方 程式との関係 - J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejfms1972/109/2/109_2_49/_pdf
返信する
お答えありがとうございます (Leo)
2019-01-29 21:24:56
お答えありがとうございます。

つまり電子の場合にはあった「存在確率を支配する確率の波」は、光子には無いということでしょうか?
それともマクスウェル方程式が光子の存在確率を支配する確率の波という事なのでしょうか?
返信する
Re: 議論の結論について (とね)
2019-01-29 20:22:13
Leo様へ

記事やコメントを詳しくお読みいただき、ありがとうございました。

その後の結論を簡単に書かせていただきます。

「絶対値を2乗すると光子の存在確率を表す関数は実数か?複素数か?」というのはシュレディンガーの方程式を前提とした議論です。電子の波動方程式はシュレディンガーの方程式なのですが、光子の場合は当てはめられないということをT_NAKAさんから教えていただきました。光子についての波動方程式はマクスウェル方程式です。つまり電磁気の方程式です。

光について、いちばんお勧めな本は「光とは何か (宝島社新書) 」です。もしさらに詳しく知りたいようでしたらお読みください。

光とは何か (宝島社新書)
https://www.amazon.co.jp//dp/4800215366/
返信する
議論の結論について (Leo)
2019-01-29 19:55:04
8年も前の記事のコメント欄に書き込みすみません。

以前、「入射角と反射角は等しいのだが...(光学) - とね日記」(https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3de82981c21df98ddb1521c1da452227)のコメント欄にて質問させていただいた Leo です。その節はありがとうございました。

また質問させていただきたいのですが、このコメント欄でされている議論について、とねさんは「こちらのスレッドでの皆さんのご意見はまとまってきたように思いました。」と書かれていますが、私には議論の内容が高度すぎて理解出来ませんでした。

「絶対値を2乗すると光子の存在確率を表す関数は実数か?複素数か?」という議論の結論はどの様になったのか教えていただけないでしょうか?

「本文よりコメント欄に意味があるブログ記事 - とね日記」(https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c5f6697d001c6ef887acdeeeee0d108d)には「このテーマについてはいつになるかわからないが、論点を整理して後日記事にしてみたいと思う。」と 書かれているので、その記事があるのかもしれませんが、見つけることが出来なかったので…。
返信する
その後の議論:その5 (とね)
2011-01-26 20:35:20
★投稿者:ASA - 2011/01/03(Mon) 08:21 No.10236

symさん
>探したらすぐ見つかりました。
Emanさんのリンクにある方の"存在論的、光子論"での(注)がオリジナルでしょう。

>とねさんがおっしゃっていたことは、こういう意味なのかなと思い掲載させていただきました。
量子場(演算子)と波動関数(確率状態)をごっちゃにしてはいかんと思います。
確率状態を表わす波動関数とは、量子場とは別物です。自分が紹介した文献にあるように"「実の場でも一粒子の波動関数は複素数になることは重要である」"です(電磁場を実数4元ポテンシャルAで記述することがよくありますけども)。
なぜなら、測定量は、オブザーバブルを波動関数に演算させから、複素共役で挟み込んで足し合わせることで求められます(期待値)。オブザーバブルが微分演算子で表せる時、波動関数が実数だとその期待値は常に0となります(証明は容易)。運動量演算子は微分演算子で表わせるので、光子の波動関数が実数だとすると光の運動量は常に0となり、ポインティングベクトルに比例する運動量をもつという古典的電磁場の帰結と矛盾します。
 複素電磁場F=E+iH(係数省略)を考えます。|F|^2=E^2+H^2で、エネルギー密度分布を示してます。
 光の特徴は、進行ベクトルkと強度ベクトルE,Hがそれぞれ直交していることです。
 平面波がz方向に進行する場合を考え、x方向のみ取り上げて、Ex=Acos(ωt-kz) Hx=Asin(ωt-kz)を考えます(Fxのみ)。運動量期待値P=<Fx|p|Fx>= (h/i)∫{(Ex∂Ex+Hx∂Hx),i(Ex∂Hx-Hx∂Ex)}dx、偶奇性からEx∂Hx-Hx∂Exが残り
cos(ωt- kz)^2+sin(ωt-kz)^2=1でFが規格化されていれば、P=hkとなります。三角関数を微分すると位相が変ります、これはちょうど、x軸 →y軸に対応していて、∂Hx→Hy,∂Ex→Eyですから、Ex∂Hx-Hx∂ExがポインティングベクトルE×Hと対応してます(これもまたうまく出来てます)。自由度はE+iH,E-iHで2つの自由度、Fが3次元ベクトルなので掛けて6自由度(光の自由度に一致)。4元電磁ポテンシャルAだとゲージ条件つけで1つの自由度を消していますが、工藤論文にあるように古典場との対応が見やすいのは複素電磁場Fを用いた方6自由度形式が見やすいですね。


★投稿者:ASA - 2011/01/03(Mon) 08:38 No.10237


symさん
 ご紹介のページはなかなか興味深いです (Q4,Q6,Q7)。大家ラムの名言"光子を持ち出すやからは、光を解ってない"を思い出しました。場の量子化における光子は、平面波なので位置が不明 (ついでに位相も不明,kのみ確定)で、タイムスパンは無限大です。電子の軌道遷移からこのような平面波が出るわけがありません(光電効果の簡易説明でよく見られますけど)。しかし、波動関数に基づく量子化光子なら、局在化した波束で扱えるのでラムも考えを変えるかもしれませんね(単純なモデルでよいから、軌道遷移に伴い発生する光子の波動関数を具体的計算で示された後だと思いますが)。


★投稿者:sym - 2011/01/03(Mon) 15:35 No.10240


ASAさん

 ASAさんの仰るとおりだと思います。量子場が作用する状態ベクトルは複素数値をもつ何らかのものだろうことがわかったと思います。

 少しNo.10227を補足?させて頂きたいと思います。
>「電子のように電荷をもった粒子の波動関数は複素数の関数で記述され、光子のように荷電していないものの波動関数は実数で記述される。これは場の量子論にいけば分かる規則である。」

 光の場合は普通、波動関数といえば古典的な3成分の光の場を思う、と思いますが、どうでしょうか?複素電磁場や6成分波動関数は不思議なほど良くできてて面白いですが、用途が特殊なように感じました。
 もうひとつ「場の量子論にいけば…」を場の量子論の周辺の知識として、場の解析力学を学べば、と言い換えれば意味の通る文になると思います。
 
 複素場において保存する電荷を定義するのは以下の5.3ラグランジアン形式における対称性と保存則 に見つけました。

http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/konan-class04/ch5-sym.pdf

 私には難しく理解できない部分も多いですが、このスレッドのおかげで勉強になりました。


★投稿者:ASA - 2011/01/03(Mon) 17:42 No.10241


symさん
>光の場合は普通、波動関数といえば古典的な3成分の光の場を思う、と思いますが、どうでしょうか?
 何が普通かはよく解りません。古典電磁場といえば、古典的な3成分の光の場を思い浮かべますね。量子電磁場なら、演算子化された4元場Aμを思い浮かべます。波動関数といえば、量子論でオブザーバブルによって観測量が導出される状態確率密度関数(複素数)を思い浮かべます。なので、光の波動関数といえば、複素電磁場の重ね合わせを思い浮かべます(工藤論文で光子波動関数を見た後ならなおさら)。

>用途が特殊なように感じました。
 この枠組みは、未来技術の要と考える量子制御(量子情報処理)技術で、必須になるように思えます(単一量子ドットでの光の吸収放出についてなど)、紹介論文でもあったように光子に対する位置演算子が提案されているので光子の位置検出やら移動時間などの測定による検証により、理論実験双方がより深化発展するというフィードバックがかかるはずです(大統一理論のように実験との乖離はすくない)。工藤論文で提案された位相速度と通過速度の差の検証による今後の展開に期待してます(余談ですが、確率過程が量子論の本質との思いが強くなりました)。
返信する
その後の議論:その4 (とね)
2011-01-26 20:34:06
★投稿者:ASA - 2010/12/27(Mon) 16:10 No.10217

とねさん,kafukaさんへ
>第二量子化による定式化での光子は、演算子化されてるので波動関数というのが、そもそも適切でないですから、演算子化されたときは確率振幅として考えてないのは当然です。
 こう述べましたが、用語としての波動関数が気になって調べてみると、
http://aries.phys.cst.nihon-u.ac.jp/~fuji-3/FieldTheory10.pdf
で、"光子一個の状態を表す波動関数は、(5.23)で与えられる。"
と第2量子化の理論でも使われることがあるのですね。でも、(5.23)では、運動量kをもつ1光子状態の確率振幅(=波動関数)にe^(-ikx) の因子があるので明らかに複素数ですね(また、1/ω(k)という因子により赤外(k=0)で発散してるので、確率振幅という物理的解釈も適切でない気きがしますけど)。
 なんにせよ、"電子のように電荷をもった粒子の波動関数は複素数の関数で記述され、光子のように荷電していないものの波動関数は実数で記述される。"が、おかしなものであることには変わりがないと考えます。
(やってやれないことはないが、整合性が取れない。同じ数体で記述するのがノーマルと思う)
 


★投稿者:hirota - 2010/12/27(Mon) 23:27 No.10219


ASAさんに紹介していただいた
http://aries.phys.cst.nihon-u.ac.jp/~fuji-3/FieldTheory10.pdf
には他の本に書いてない事が色々書いてあって分かり易いですね。
特に(3.22)の下に実の場の定義があって、場の演算子が共役操作で不変な事だと書いてある。
すると、a†(k) exp(ikx) の共役は a(k) exp(-ikx) だから、両方使って展開した場の演算子は実の場だ。おまけに「実の場でも一粒子の波動関数は複素数になることは重要である」なんて書いてある。
これを読んで、自分がNo.10204に書いた電子と光の違いは無意味だと分かりました。
(相互作用なしの自由場で展開するから電荷があって非線形になっても関係ない。複素場を実部と虚部に分けて量子化する事も出来るけど複素数の方が便利だ。など)
(5.23) は運動量が k に確定した無限に広がる平面波だから規格化なんて不可能で、確率にはならないですね。


★投稿者:とね - 2010/12/28(Tue) 01:31 No.10222 HomePage


ASAさん
いろいろ調べてくださり、ありがとうございました。見つけていただいたPDFは大学(または大学院)で使われる教材ですね。
こちらのスレッドでの皆さんのご意見はまとまってきたように思いました。
電子と光子ではここまで波動関数についての考え方が違うとは予想だにしていませんでした。奥が深いです。

hirotaさん、kafukaさん
お考えをお聞かせいただき、ありがとうございました。
kafukaさん、僕は惑わされてしまったところもあったのかもしれませんが、考察の過程の途中経過のことだと思いますので気にしていませんよ。ご安心を!


★投稿者:ASA - 2010/12/28(Tue) 07:20 No.10223


hirota さん No.10219
>(5.23) は運動量が k に確定した無限に広がる平面波だから規格化なんて不可能で、確率にはならないですね。
フリーな場合、平面波故に規格化不能というのは、とりあえずおいておきます((3.22)でも同様に平面波なので)
 注目するのは、平面波に係る因子です。(3.22)では、1/{ω(k)V}となってます。非相対論的分散関係だとω∝k^2(シュレディンガー方程式から)です。また、k∝1/L,V=L^3ですからω(k)V∝Lとなり、k→0(つまりL→∞)の極限で平面波に係る因子は0に収束します。なので、確率振幅との解釈が可能(粒子の場合は、実によくできてます)。
 光子の場合は、そのまま対応させると不都合なので、工藤論文にあるように1光子状態を定義しなおすことで、光子の波動関数(確率振幅と解釈できるもの)を提案してるわけですね。


★投稿者:hirota - 2010/12/28(Tue) 11:29 No.10224


あら、そうか!
有限体積で周期境界条件だから、無限に広がってませんね。


★投稿者:sym - 2010/12/28(Tue) 22:33 No.10227


>「光子のように電荷をもった粒子の波動関数は複素数の関数で記述され、光子のように荷電していないものの波動関数は実数で記述される。これは場の量子論にいけば分かる規則である。」とお考えになっている方がいるからです。

どこかで聞いたような話だなと思って探したらすぐ見つかりました。

http://www7.ocn.ne.jp/~miyazaw1/papers/QA.htm
>Q5 電子が複素数の場で表されるのが何となく神秘的であるが、何故複素場なのか。
 
>A  本稿3節の終わりあたりからちらちら書いたことだが、複素場ならそれから容易に保存する電荷、電流密度を作ることが出来る。複素場でなくてもよい。2成分でその間に平面回転不変性(SO(2)対称)があればよいのだが、それは複素数の言葉で言うのが言い回しも式も簡単になる。電子場が複素である理由についてDiracはじめ何人かが意見を述べているが、保存電流を定義すること以外に神秘的な理由はないと思う。


 証明がわからず気になっていた文でした。とねさんがおっしゃっていたことは、こういう意味なのかなと思い掲載させていただきました。
返信する
その後の議論:その3 (とね)
2011-01-26 20:31:59
★投稿者:ASA - 2010/12/24(Fri) 07:39 No.10205


hirota さん No.10204

自分は実数であれ複素数であれその他の数であれ、物理を記述できていればOKという立場なので、
>「実数で記述される」と言ってる人がどういう理由で言ってるのか教えてくれるなら誰でも良いんです。
 上のような疑問は、あまり気にしない性質です。

>場の粒子に電荷があると自分と相互作用して非線形になってしまうから電荷はダメということになります。
 現象的には、非線形現象が圧倒的に多いので、これはこれでOKでは?
 (普通、強力な相互作用は仮定しないで、摂動扱いできるものを想定するような気がします。前提条件を大きく崩さなければOKという考えを採用する)

>これは便利だからそうするので必ずしも複素関数にする必要はないはずです。
 これはそうですよね。
wikiからの四元数の引用ですが
"有名なところではマクスウェルが電磁方程式の四元数を用いた定式化を行っている"
" 複素数 α = x + yi を、四元数 x + yi + zj + wk で z = w = 0 とおいたものと思うと、H は複素数の全体 C を部分体として含み、加群として H = C + Cj と分解されて、H は C 上の 2 次のベクトル空間になっている。複素数を H の元と見てつくった共軛四元数は、ちょうど共軛複素数に一致するので、四元数の共軛は複素共軛の拡張である。"
 より便利な、数を使って表現すればよいという話なんですよね。
ちなみにkafuka さんが紹介された文献にも、(4.38)(4.39)でMaxwell 方程式の複素数形式が記載されてます。よく見られる{E~,H~}によるベクトル表記より簡潔に記述できてますよ。


★投稿者:hirota - 2010/12/24(Fri) 11:08 No.10206


僕も便利で簡潔ならOKですが、上の疑問は自分の理解が正しいかどうか確認したいのが理由です。
(なにしろ、まだ初歩なもんで)


★投稿者:ASA - 2010/12/25(Sat) 10:17 No.10207


hirota さん
>(なにしろ、まだ初歩なもんで)
ご謙遜なさらなくてもよろしいとかと、疑問はごもっともなものと思います。

話の元は、とねさん No.10194
>「光子のように電荷をもった粒子の波動関数は複素数の関数で記述され、光子のように荷電していないものの波動関数は実数で記述される。これは場の量子論にいけば分かる規則である。」とお考えになっている方がいるからです。
ですよね(冒頭の光子は、電子は書き間違いでしょう)。
 波動関数自体が、量子力学(第一量子化)での話であるにもかかわらず、異なる枠組みである場の量子論(第二量子化)で分かる規則というのがそもそも変ですな。与太の類と思いスルーしてました。

とねさん 
>ランダウ=リフシッツの「相対論的量子力学(1971年出版?」では「光子の波動関数と言うとき、光子の空間的局所化の確率振幅として考えるのではけっしてない」と言い切っていますし。
 第二量子化による定式化での光子は、演算子化されてるので波動関数というのが、そもそも適切でないですから、演算子化されたときは確率振幅として考えてないのは当然です。
 紹介論文では、既定事項としての第二量子化による光子{by Bialynicki-Birula[46]}と第一量子化での光子波動関数{by Sipe[50]} が矛盾するものでないことを示し(普通異なる定式化が一致するとは限らないので、念のため一致することを検証し)、更に、Hawton位置演算子が交換関係(正準量子化手法での基本)を満たすので、第一量子化による定式化が光子に関連して構築できると論じてます。(もちろん、粒子のシュレディンガー方程式相当の第一量子化光子が満たすべき方程式もちゃんと記載されてます。文献(4.42)(4.43))


★投稿者:とね - 2010/12/25(Sat) 10:46 No.10208 HomePage


ASAさんへ
はじめまして。

> (冒頭の光子は、電子は書き間違いでしょう)。
はい、書き間違えていました。すみません。正しくは「電子のように電荷をもった粒子の波動関数は複素数の関数で記述され...」ですね。

ランダウ=リフシッツにおける記述は光子の第二量子化、演算子化によるものだから確率振幅(複素数)とは考えない、という意味だったのですね。僕はランダウ=リフシッツの教科書の引用を読んでいるとき第二量子化(場の量子論)と第一量子化(量子力学)の区別が意識から抜け落ちていました。その後に続くご説明も理解できました。

ご説明いただきありがとうございました。


★投稿者:kafuka - 2010/12/25(Sat) 17:24 No.10209


>波動関数自体が、量子力学(第一量子化)での話であるにもかかわらず、
>異なる枠組みである場の量子論(第二量子化)で分かる規則というのがそもそも変
>第二量子化による定式化での光子は、演算子化されてるので波動関数というのが、そもそも適切でない
的確なご説明、よくわかりました。

尚、
>光子のように、、、波動関数は実数で記述される
と主張したのは、僕ではありません。 - 念のため
でも、すぐ信じ込んでしまい、とねさんを惑わせたことを お詫びします。

Hirotaさんのコメを読んで、自分で、光子の平面波を個数演算子で展開して、
係数が複素関数になることで、呪縛がとけました。
(No.10203の計算、個数演算子で展開したことになってますか? 自信ないです)

このスレッドと関係ないですが、、、
係数が定数でないということは、光子の平面波は、個数演算子の固有状態でない
つまり、波として観測される時は、粒子性は現れない
という当たり前のことを表しているようです。


★投稿者:hirota - 2010/12/25(Sat) 20:28 No.10210


個数演算子は生成, 消滅演算子から作れますが、個数演算子から生成, 消滅演算子を作ることはできないので、生成と消滅の2種類の演算子で構成された任意の演算子を個数演算子だけで展開することはできません。(個数演算子の定義を変えたら知らんけど)
普通に見る生成, 消滅演算子展開は演算子に掛かってる関数が exp(ikx) で平面波ですから、個数演算子の固有状態は平面波です。


★投稿者:kafuka - 2010/12/25(Sat) 21:24 No.10211


>Hirotaさん
ありがとうございます。
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/creat_op.html
を参考に、計算して確認します。

ただ、
>普通に見る生成, 消滅演算子展開は演算子に掛かってる関数が exp(ikx) で平面波ですから、
>個数演算子の固有状態は平面波です。
ですが、Aの平面波の第一成分:
A^1(x)=∫dk{a(k)exp(-ikx) + a†(k)exp(ikx) }
が正しいとすると、
これは、生成と消滅の2種類の演算子で構成された演算子ですから、
平面波が個数演算子の固有状態とは思えないのです。
計算してみますと、、、

http://blogs.yahoo.co.jp/kafukanoochan/64016630.html
nA^1(x)=∫dk{(N-1) a exp(-ikx) + (N+1)a†exp(ikx) }
=NA^1(x)+∫dk{-a exp(-ikx) + a†exp(ikx) }
≠定数A^1(x) つまり 連続固有値

したがって、平面波のA^1(x)は、個数演算子n の固有状態ではない
と思うのですが


★投稿者:hirota - 2010/12/26(Sun) 01:13 No.10213


A^1(x) は演算子であり、状態ではありません。
場の演算子展開に a†(k) exp(ikx) が使われてる場合、特定の k に対して a†(k) は運動量 k の粒子を生成する演算子なので、真空を |0> とすると a†(k) |0> が運動量 k の粒子が1つある状態です。
運動量が k に確定してる状態は平面波です。
なお、個数演算子も各 k ごとに別々にあります。
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その後の議論:その2 (とね)
2011-01-26 20:30:52
★投稿者:kafuka - 2010/12/21(Tue) 21:03 No.10196


>とねさん
ほぼ再掲ですが、

光子の個数は、生成演算子をa 消滅演算子をa† とすると、
真空中の光子の個数の分布f=光の波動
ですから、
fは、|0> にa†やaを何個も掛けていった平均です。
したがって、f=光の波動は、実数波 です。
(生成・消滅の平均というのがミソです。電子のように個数が保存されればψ*ψで十分)

で、仮に1個の光子の存在確率が一定の場合、
ψ=Aexp(ikx) としないといけません。
例えば、Asin(kx) では、一定値になりません。

fとψの両者は、何ら矛盾するものではないです。
そもそも、普通の量子力学では、ψ自体は観測できない とします。

あっ、光子を調和振動子の集合として記述するとxについては何も言えないから、
fが波動というのは無理がありますね ^^;


★投稿者:とね - 2010/12/21(Tue) 21:57 No.10198 HomePage


kafukaさん

ありがとうございます。ご説明いただいた内容は理解しました。

揚げ足をとるような質問で恐縮ですが、最終理解に至る前にひとつだけ確認させてください。
「真空中の光子の個数の分布f=光の波動」ということですが、
「たった1つの光子の(個数の)分布fでも光の波動」でも実数と考えてよろしいですか?
つまり、1の光子の波動=複素数波、かつ1つの光子の分布f=実数波
という考え方でよろしいでしょうか?そうすれば複素数波と実数波が両立できるのが納得できます。

しつこくて、すみません。


★投稿者:kafuka - 2010/12/21(Tue) 23:05 No.10199 HomePage


とねさん

まず、量子力学の枠組みなんですが、
これは、始めから終わりまで粒子の個数がかわらない=生成も消滅もない として扱うのが前提です。
場の理論は、粒子の個数が変わってもいいように出来ています。

したがって「始めから終わりまで、たった1つの光子」という理論は、光子では個数は保存されませんから、
量子力学は、光子については、正しいが仮想的な理論ということになります。

つまり、1つの光子の分布を計算しても 現実には生成・消滅を繰り返すので
現実と一致しない
と、僕は思っています。
実際、1つの光子がpの固有状態であるとすると、ψ~exp(ikx) で、
このψ*ψはxによらず一定値で、sinとかの波にはなりえません。
でも、現実には、sinとかの実関数です。

xによらず一定というのが誤りかと言うとそうではなく、生成・消滅しなければ検出確率が一定という意味で正しいです。
また、1つの光子のψは、ファインマンの本の説明で、もちろんあってます。

以上、僕なりの理解なので、皆様からのコメントをお待ちします。
(とねさんが、朝起きたら、Kafukaの説明は誤りだったということになるかも)


★投稿者:とね - 2010/12/21(Tue) 23:29 No.10200 HomePage


kafukaさん
なるほど。よくわかりました!今夜はすっきり眠れそうです。


★投稿者:とね - 2010/12/22(Wed) 21:26 No.10201 HomePage


12月21日に投稿した文章の一部に入力ミスを見つけたので、訂正させていただきます。

誤:僕は今回の件については今も慎重です。というのも「光子のように電荷をもった粒子の波動関数は複素数の関数で記述され...

正:僕は今回の件については今も慎重です。というのも「電子のように電荷をもった粒子の波動関数は複素数の関数で記述され...


★投稿者:hirota - 2010/12/23(Thu) 18:33 No.10202


場の量子論では波動関数は演算子なのに、実数で記述されるとはどういう意味なんだろう?
波動関数を生成消滅演算子の線形結合で表して係数が実関数ということかな?
生成消滅演算子は複素ヒルベルト空間の演算子で、実固有値でもないんだが。


★投稿者:kafuka - 2010/12/23(Thu) 20:01 No.10203


>Hirotaさん

光子の個数演算子nは、生成演算子をa 消滅演算子をa†とすると、n=a†a ですが、
nは、実固有値と思っていました。
もしそうなら、波動関数(演算子)を nの線形結合で表すと 係数は実関数
と思います。
しかし、量子化された電磁場の平面波展開の式Ψを、nで表してみると、、、

Ψの形だけを書けば A^1(x)=∫dk{a(k)exp(-ikx) + a†(k)exp(ikx) }
なので、a†a A^1(x)=∫dk{n a(k)exp(-ikx) + n a†(k)exp(ikx) }
nの固有値をNとすると、na†=n(N-1) na=n(N+1)なので、
nA^1(x)=∫dk{n(N+1) exp(-ikx) + n(N-1)exp(ikx) }
=n∫dk{(Ncos(kx) - i sin(kx) }    (N=1,2,3,、、)
   (N=0では、nA^1(x)=n∫dk exp(-ikx)      零点振動でしょうか?

いずれにせよ nの係数は複素関数でした。ごめんなさい。

ただし、nの固有値Nが非常に大きい状態では、
A^1(x)=∫dk cos(kx)
つまり、実関数です。

あっ、とねさんへの質問だったのでしょうか、、、


★投稿者:hirota - 2010/12/24(Fri) 05:33 No.10204


いや、「実数で記述される」と言ってる人がどういう理由で言ってるのか教えてくれるなら誰でも良いんです。
なぜかというと、平面波展開で複素関数 exp(ikx) を使ってますが、これは便利だからそうするので必ずしも複素関数にする必要はないはずです。
量子化は物理量を演算子に置き換える事なので、粒子の位置と運動量しか自由度がない場合は「位置と運動量を演算子に置き換える」が第一量子化、場の値が全空間で色々な値を取る自由度がある場合は「場の値の全組み合せ (これを一般化座標とする) およびそれと共役な一般化運動量を演算子に置き換える」が第二量子化、ただし場の値の全組み合せは任意じゃなく場の方程式で拘束されてますから、方程式が線形なら解は基本解の線形結合で表せて、解の自由度は線形結合の係数。
そこで自由度すなわち係数を演算子に置き換えて第二量子化ができます。
その際、観測可能な場であれば基本解は実関数でも表せますから、exp(ikx) の代わりに実関数を使うこともできるはずです。
で、もしこれが「実数で記述される」の理由なら、前提は線形で観測可能な場ですから、場の粒子に電荷があると自分と相互作用して非線形になってしまうから電荷はダメということになります。
でも電荷なしで観測可能な場であっても、重力場みたいに非線形だとやっぱりダメということになる?
というような疑問を持ったので教えてもらいたかったわけです。
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その後の議論:その1 (とね)
2011-01-26 20:28:55
● 光子の位置演算子!!
★投稿者:kafuka - 2010/12/21(Tue) 00:55 No.10189


光子の第一量子化ができたそうです。
(ご存知でしたら無視して下さい)
またKafukaのトンデモが、、、と思われる方は、
以下の4.2.2以降を見て下さい。
工藤知草 博士論文:
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/3014/3/Honbun-4042.pdf

で、1個の光子の位置演算子は、(4.24) で、
ψは、exp(ikx)の形みたいです。(4.25)(4.36)
もちろん、多数の光子の生成・消滅の平均は、実関数(波動)と思いますが。

尚、この論文は、「とね日記」のとねさんとT_Nakaさんのやりとりを拝見して
発見しました。
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0f47de5854daf4eb38339a73791544a8?st=0


★投稿者:hirota - 2010/12/21(Tue) 16:05 No.10190


読んでみたけど、光の第一量子化は11年前にできてたんだね。
この論文は、確率過程量子化でも出来たという事だ。

しかし、光の場合は第二量子化から第一量子化を出したというのが面白い。
光は光子数不定の波が普通で光子1個を扱えるのは後になってから、なんて理由よりもややこしそうだ。


★投稿者:とね - 2010/12/21(Tue) 18:19 No.10191 HomePage


kafukaさん

論文を見つけていただきありがとうございました。
僕にはこの論文はレベルが高すぎて、内容が正しいのかどうか判断することができませんが、正しいのだとするとファインマン先生の「光と物質のふしぎな理論」で説明に使われている「光に付随する高速回転する矢印」の根拠は、この論文で述べている第一量子化した光子の複素数の波動関数によるものと考えてよいと kafukaさんはお考えでしょうか?


★投稿者:ASA - 2010/12/21(Tue) 18:57 No.10192


hirota さん
>しかし、光の場合は第二量子化から第一量子化を出したというのが面白い。
 ん。論文見ると
"Oppenheimer[42],Bialynicki- Birula[43, 44, 45] は,独立に,光子に対する1 階微分演算子型波動方程式を提案した.1994 年にBialynicki-Birula により提案された6 成分波動関数[43] に関する規格化は,1995 年にSipe[50] により示された.1998 年にBialynicki-Birula[46] が光子波動関数の規格化を第二量子化から示した.この規格化は,“位置r からr + dr の間に光子のエネルギーを見出す確率” と定義された.それ故に,この光子の規格化は,物理的に意味のある定義と考えられた.光子の位置演算子の定義は,光子の波動関数の確率解釈に必要である.Bialynicki-Birula の6 成分波動関数に関連した位置演算子が定義されたので[48, 49],"
とあります。
本文中にSipe[50]の規格化(運動量空間での方程式ベース)を(4.11)~(4.19)で述べており、これは、第二量子化と関係ありません。
 Bialynicki-Birula[46]の方法だと第二量子化から第一量子化を出せたという話ですね。
 歴史的には、
"Landau とPeierls は1930 年に,位置表示での光子波動関数を導入した[36].Riemann-Silberstein 波動関数は,1907 年に,Maxwell 方程式の複素形式においてはじめて導入され[40, 41],Oppenheimer が,これを用いて位置座標での4 成分波動関数に関する,“拡張されたスピン-1 行列” をもつ1 階微分演算子型光子波動方程式を導入した[42](1931年*追加).発散が0 になる条件がこの波動方程式に内包されている."
 だそうです。

論文中の下記の文が特に興味深いです。
"本研究で予言された「光子の通過時間と位相速度との差」の検証がおこなわれることが望まれる."
(ストカスティックな記述だと、単一光子は量子揺らぎのため、移動速度(通過距離/通過時間)は光速cを超えることもありえますからね。光情報の伝達速度という工学応用面で特に重要と考えます)


★投稿者:kafuka - 2010/12/21(Tue) 18:59 No.10193


>とねさん

ごめんなさい。その本、持っていないので、、、
その図が、光子の角運動量か、偏光面を意味する可能性もあるかも知れません。
ただ、僕は、ファインマンが、そのうち1個の光子も量子化されるだろうと見込んで、
書いたと、思っています。
そう考えれば、つじつまが合います。
その図の説明が、http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/oscillator.html
の一番の図と同じようなら
1個の光子の波動関数によるものでしょう。
工藤知草博士の論文にあるように、
1個の光子のψは、exp(ikx)の形ですから。


★投稿者:とね - 2010/12/21(Tue) 19:28 No.10194 HomePage


kafukaさん

はい、
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/oscillator.html
の一番下の図と同じことです。
あと、この光に付随する矢印の説明は「虚数の情緒」という本にも掲載されていて、その内容を以下の記事で紹介したことがあります。(きたない手書きの絵ですみません!)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3de82981c21df98ddb1521c1da452227

ファインマン先生の本では「光子」ではなく「光」と表現されていました。一般読者向けの本なので「光子」という専門用語の使用を避けただけだと思いますが。それでも矢印のことを専門的には「確率振幅」と呼ぶのだということは書いてありました。

ファインマン先生がこの本の元になった講義をしたのは1981年であることを考えれば、今回見つけていただいた論文のことはもちろんご存知ないわけなので、光子について波動関数をどのようにお考えになっていたかは知るすべもありません。(もしかすると先生の残したどこかの論文に書いてあるかもしれませんが、「量子力学と経路積分」の本にはその手がかりは見つかりませんでした。

僕は今回の件については今も慎重です。というのも「光子のように電荷をもった粒子の波動関数は複素数の関数で記述され、光子のように荷電していないものの波動関数は実数で記述される。これは場の量子論にいけば分かる規則である。」とお考えになっている方がいるからです。(僕自身は場の量子論まで学習が進んでいないので何とも言えません。)また、ランダウ=リフシッツの「相対論的量子力学(1971年出版?」では「光子の波動関数と言うとき、光子の空間的局所化の確率振幅として考えるのではけっしてない」と言い切っていますし。

今回見つけていただいた論文はしっかり読みました。詳しい内容や計算式には理解がついていけませんでしたが、論文の話の大筋は理解できています。

ですので、もう少し僕よりこの分野に詳しい方々のお考えを聞きたいと思っている次第です。




★投稿者:hirota - 2010/12/21(Tue) 20:27 No.10195


第一量子化の対象となる波動関数は、交換関係が虚数を含んでる以上は複素関数にならざるを得ないでしょう。

証明:
実関数に複素数を掛けただけのようなものは実質的に実関数なので、複素ヒルベルト空間で実質的に実関数で充分な場合を考えると、固有値が実数の物理量作用素の固有関数も実関数。
実関数を基底とした実関数の展開を考えると、線形結合の係数の虚数部分だけに注目すれば、和の虚数部がゼロだから基底の独立性により係数の虚数部もゼロ。
つまり、実関数の展開係数は実数。
実関数に実固有値の作用素を掛けることは展開各項を固有値倍することだから、結果も実関数。
したがって、実関数の波動関数に物理量作用素をいくら掛けても実関数にしかならず、交換関係に虚数が出る事はない。

というわけで、実数の波動関数は別物。
返信する
この続きは。。。 (とね)
2010-12-22 11:52:42
読者の皆様へ

この問題についてのやり取りは

EMANの物理学談話室
http://hpcgi2.nifty.com/eman/bbs090406/yybbs.cgi

というページの

● 光子の位置演算子!!

というスレッドで続いております。
返信する
Re: 恐縮ですが、、、 (とね)
2010-12-21 12:21:41
kafukaさん

了解です。僕もときどきEMANさんの掲示板を見に行くようにしますね。

「量子波のダイナミクス」の本、昨日届きました。ざっと眺めたところ「量子力学と経路積分」よりも、ずっと読みやすそうです。
返信する
恐縮ですが、、、 (kafuka)
2010-12-21 07:22:49
この光子の第一量子化は、知らない方が
多いと、僕は思うので、
EMANさんの掲示板に、紹介させて頂きました。
http://hpcgi2.nifty.com/eman/bbs090406/yybbs.cgi?mode=by_date
返信する
Re: 見つけました!! (とね)
2010-12-21 01:10:25
ありがとうございます!
僕がコメント欄の上のほうで引用していたPDFは「概要」のほうで、kafukaさんに紹介いただいたのが「正式版(詳細版)」だったわけですね。
(4.25)(4.36)ところまで読み進むと1個の光子のψは確かに複素数波のようです。

電子のψの複素数波とずいぶん様子が違うものですねぇ。。
もちろん多数の光子の生成・消滅の平均は、実関数だということについては了解です。

それにしても(僕には)難し過ぎます!
返信する
見つけました!! (kafuka)
2010-12-21 00:25:59
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/3014/3/Honbun-4042.pdf

の(4.25)(4.36)を見て下さい。
1個の光子のψは、複素関数です。
もちろん、
多数の光子の生成・消滅の平均は、実関数になります。

返信する
Re: 参考になれば、、、 (とね)
2010-12-19 21:41:24
kafukaさん

ご意見をいただきありがとうございます。
状況に応じて「実数波」と「複素数波」のどちらも成り立つというお考えですね。

このように意見(考え)が人によって分かれることが、僕にとっては驚きでした。
ファインマン先生に生き返ってもらって、「矢印を使った計算」の背景や根拠を教授願いたいところです。

追伸:kafukaさんにご紹介いただいた「量子波のダイナミクス」という本、とてもよさそうなので注文いたしました。ありがとうございます。
返信する
参考になれば、、、 (kafuka)
2010-12-19 21:16:52
光子の個数は、生成演算子をa 消滅演算子をa† とすると、
個数を得るには、a†a とします。
真空中の光子の個数の分布f=光の波動
ですから、
fは、何かにa†aを掛けた期待値です。
したがって、f=光の波動は、実数波 です。

で、光子の存在確率が一定の場合、
ψ=Aexp(ikx) としないといけません。
例えば、Asin(kx) では、一定値になりません。
僕は、両者は、何ら矛盾するものではない
と思っています。
(これは、あくまで僕、独自の考えです。トンデモかもしれません)
返信する
T_NAKAさんへ (とね)
2010-12-19 20:27:49
(自分で考えることを放棄しつつ)光子は実数波か?それとも複素数波か?ということについて英語の資料をネットで検索してみました。このように基本的と思われる事柄に決着がついていないのですね!奥が深いです。

代表的な資料を3つ紹介させていただきます。

------------------------------
The Maxwell wave function of the photon (2005)
http://arxiv.org/ftp/quant-ph/papers/0604/0604169.pdf

この資料の主張によると光子は実数波ということになりますね。それどころか「マクスウェルはアインシュタインより40年も前に無意識に相対論的量子論を満たす光量子を発見した」と書いています。(本当にそうか僕にはわかりませんが。)
Maxwell's equations. This means that Maxwell unknowingly discovered a correct relativistic, quantum theory for the light quantum, forty-three years before Einstein postulated the photon’s existence! In this theory, the (non-operator) Maxwell field is the quantum wave function for a single photon. When the non-operator Maxwell field of a single photon is quantized, the standard Dirac theory of quantum optics is obtained.

------------------------------
The structure of the photon according to a realist (2006)
http://www.vivo.library.cornell.edu/individual/vivo/individual31327

この資料で光子は複素数波ということが前提となっています。
We have developed and solved a quantized wave equation for the photon. The solutions are complex wave functions that can give a causal basis to the uncertainty principle.

------------------------------
Decoherence Dynamics of Complex Photon States in a Superconducting Circuit (2009)
http://www.physics.ucsb.edu/~martinisgroup/papers/Wang2009b.pdf

この資料で光子は「重ね合わされた複素数の状態を持つ」とか「非古典的な光子の状態」と表現されています。
Here we describe a series of experiments in which we prepare specific complex quantum-superposed photon states in an electromagnetic resonator and then monitor
the decay dynamics of its density matrix.

Nonclassical photon states are generated and measured via a second weak capacitive coupling to a superconducting phase qubit...
返信する
Re: 猫像ではなくて描像 (とね)
2010-12-19 18:13:34
T_NAKAさんへ

「猫」ではなく「描」でしたね。(笑)失礼いたしました!

ますます理解が深まります。ありがとうございます。この投稿は記事本文よりもコメント欄のほうが意味の深いものになってしまいましたね。量子光学の内容も詳しく確認してから、今回のテーマを自分の中で整理して独立した記事に書いてみたいと思いました。

「量子力学と経路積分」の第10章「統計力学」まで読み進んだところですが、熱力学や統計力学であらわれる実数の物理量で成り立つ方程式に対してexp()関数の指数に虚数を持つ形を導入した経路積分の式をたてると、可能な(無数)の経路を積分する実数だけを含む「密度行列 ρ(x1,x2)」の式が得られます。

ファインマン先生は「別解」を提案するのを得意とする人で、経路積分はまさに代表例なのだと思いました。

> 光の波動関数(状態関数)は実数になると思いますので、ファインマン先生の説明は私には理解できないのです。

ファインマンが複素数を持ち出したのも「別解」なのではと思い始めました。電子回路のRLC回路(共振回路)を解くための微分方程式で、解をあえて複素関数とおくことによって短い手順で解き、最後は実数成分だけをとるというような方法と似ているなと思いました。特に上記の本の「統計力学」に経路積分を適用したくだりを読んだときにそう思いました。もちろんRLC回路の解は実数です。
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猫像ではなくて描像 (T_NAKA)
2010-12-19 17:48:50
現在、大学で習う量子力学では、「シュレディンガー描像」で説明しています。
演算子は時間で変化せず、状態関数が時間で変化するという見方ですね。
ただ、演算子が時間で変化し、状態関数は時間で変化しないという見方もできて、場の量子論のというのはこの描像で考えていると思います(ハイゼンベルクの行列力学もこういう考え方です)。
また「相互作用描像」は経路積分に関係してくると思います。

シュレディンガー描像
http://teenaka.at.webry.info/201005/article_18.html
相互作用描像
http://teenaka.at.webry.info/201005/article_19.html
ハイゼンベルク描像
http://teenaka.at.webry.info/201005/article_20.html

さて、これは私の考えなので押し付けるつもりはありませんが、光の場合は古典電磁気学との整合を考えると「シュレディンガー描像」での理解は無理で、「ハイゼンベルク描像」でないといけないと思います。
もし、「シュレディンガー描像」でやったとしても、光の波動関数(状態関数)は実数になると思いますので、ファインマン先生の説明は私には理解できないのです。
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T_NAKAさんへ (とね)
2010-12-19 17:08:16
T_NAKAさんへ

英語版の「光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学: R.P.ファインマン」のAmazon.comサイトに投稿されているたくさんのレビューの中に T_NAKAさんと同じことをおっしゃっている人を見つけました。投稿されているその部分を抜粋しておきます。この中で彼は「ファインマンは(複素数の矢印を持ち出さなくても)光の波としての性質(つまり古典的な波動のもつ性質)だけで説明すれば十分だ。」と書いていますね。

Amazon.comのレビューからの抜粋:
Feynman conclusion is that light comes in finate quantities called photons. This is of course wrong, because the instrumentation used does not allow for other measurement. Such experiment proves nothing. To explain it, it's sufficient to take "wave" nature of light. Light's classical interference and the total energy of a light-wave, which is proportional to the square of electrical/magnetic amplitude of that ware, will be responsible for probability of ripping off an electron at the detector. That's it. No need for QED.
What classical theory cannot explain, is that electron have the very same "wave-nature". ... and this is the mystery of nature. This is where we need QED. There are experiments of a single electron passing through two distinct holes at the same time - like interfering solely with itself. No "normal" particle can do that. Only waves can. This is why we need those "probability interference", not because we need to explain the behavior of light.

ご参考までに追記させていただきました。
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量子光学 (とね)
2010-12-19 12:30:38
今回ご指摘いただいた問題について、以下のページを読んでいて、量子光学も学んでみようという気になってきました。

2. 光の量子状態
http://annex.jsap.or.jp/OSJ/50th_cd/main/ronbun/ryosi/ryosi02-01.htm

上記のページの中の「レーザー光に代表される コヒーレント状態は,複素振幅で特徴づけられ,一定の振幅,位相をもつ古典的な振動の自然な拡張になっている.しかし,振幅(光子数)が小さい場合には,真空のゆらぎの影響で,振幅の相対ゆらぎと位相のゆらぎが目立つようになる.」という記述が気になっています。

トップページはこちらです。

光学界の今とこれから(量子光学)
http://annex.jsap.or.jp/OSJ/50th_cd/main/ronbun/ryosi/mokuji.htm
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Re: 「波動関数」という言葉に惑わされている。。 (とね)
2010-12-19 11:29:57
T_NAKAさんへ

詳しくご説明いただき感謝しております。僕にとっては今回いただいたご説明がいちばんわかりやすかったです。特に「ここで光=電磁波を考えると...(中略)...場=演算子であることに注意してください。」のところではっきり理解できました。

僕はこれまで単純に光=電磁波(「光波」という言葉はほとんど使いませんね)として考えるときはマックスウェルの方程式⇒EとBの実数波⇒実数値をとるφと A」、そして光子(=光量子)=量子だから波動関数ψは複素数波と思っていました。単純に極微の粒子だから電子のときと同じだと思っていたわけです。確かに波動関数という言葉にも惑わされていましたね。状態ベクトル、状態関数のほうが意味を汲みやすいです。

場の量子論を学ぶ意欲がますますわいてきました。ありがとうございます。

この記事の次に書いた「光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学: R.P.ファインマン」という本の記事でも光子と電子を同様に扱っておりますので、記事の最後に追記という形でこのコメント欄でのご説明を読者の方が参照するように書かせていただきました。
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「波動関数」という言葉に惑わされている。。 (T_NAKA)
2010-12-19 10:38:49
量子力学の範囲内であれば「波動関数」という言葉だけで済むのかも知れませんが、この言葉はあまり良い表現とは思えません。本来は「状態関数」あるいは「状態ベクトル」が正しいのではないかと思います。「波動関数」というのは波動を表している関数という意味しかないですからね。量子力学では物理量に演算子を対応させます。その演算子を作用させる相手が状態関数で、状態関数それ自体としては意味を持たず、絶対値を2乗して粒子の存在確率という意味を持つことになるということでした。ここで光=電磁波を考えると、これは電場および磁場の振動で、これは物理量なので、量子化を考えると電場・磁場は演算子に対応させることになります。ここで気付いていただきたいのは、演算子そのものが波動状態なので「波動関数」になり複素数であることは必要でなく、複素数である「状態関数」は別に存在するということです。
場の量子論ではφやψは量子力学でいう「波動関数」ではなく、場=演算子であることに注意してください。
(まあ、これはシュレディンガー描像とハイゼンベルグ描像で後者を採用したということです。)

さて、ポテンシャルの無い状態でのクラインゴルドン方程式で m = 0 とすれば、
http://teenaka.at.webry.info/201011/article_16.html
から分かるとおり、

□φ= 0

であり、これは古典的電磁波を表した波動方程式に他なりません。
よって、実数解も存在しますね。
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Re: 単に情報の提供です (とね)
2010-12-19 10:09:46
kafukaさん
どうもありがとうございます。
光子にはシュレディンガーの波動方程式は成り立っていないわけですね。

T_NAKAさんから教えていただいたように光子の波動関数が実数波だとすると、ファインマンの「光と物質のふしぎな理論」で紹介されている「光子の矢印の計算」は間違いということになってしまうのでは?と思うわけです。

あと、上記の説明の中で「波動関数の2乗」と書いてしまいましたが、正しくは「波動関数の絶対値の2乗」もしくは「波動関数とその複素共役の積」ですので訂正しておきます。
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単に情報の提供です (kafuka)
2010-12-19 04:21:05
僕では、議論する力はありませんが、
場の理論でなく、シュレディンガー方程式に言及されていますので、、、

光子は、Eψ=(-h'2/2m+V)ψ で表すことは
当然、できませんので、
クラインゴルドン方程式でm=0の場合に当てはめれば、ちょっと ましかと思います。
(もちろん、正確には場の理論でないとダメですが)
で、仮にそうであれば、
確率は、単純にψ*ψではなく、
4元確率流密度の時間成分になります。
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/klein_gordon.html

以上、お邪魔しました。
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Re: 古典物理学で考えれば (とね)
2010-12-19 01:53:05
T_NAKAさん

その後、手持ちの教科書をいくつか調べているのですが、どうもすっきりしません。

たとえば小出昭一郎先生の「量子論」1990年の改訂第29版の「$2.3 波動関数の意味」という節、ページ番号でいうと30ページあたりからはじまる二重スリットの実験についての記述では電子と光子が全く対等に扱われ、そのまま読み進んでいくと33ページで両方とも波動関数は複素数だと説明されている状況です。
けれども同じ本の「$6.3 原子の振動とフォノン」から「$6.4 電子と電磁場」にかけてはT_NAKAさんがおっしゃるように古典物理的な描像で光子が説明されています。

光子についてシュレディンガーの波動方程式が適用できないとすると、不確定性原理は当てはまらないのだろうかとか、そもそも光子は量子ではないのかとか、いろいろ考えてしまいます。

T_NAKAさんのご説明はわかりやすいのですが、説明と矛盾している教科書やネット上の情報に惑わされている状況です。
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古典物理学で考えれば (T_NAKA)
2010-12-19 00:47:58
電子=粒子(質点)→ ニュートン力学
光=電磁波 → マックスウェルの電磁方程式

ということで、電子と光を同じ方程式で扱うことは考えられません。
これが量子論になると、両方ともシュレディンガー方程式で表されるなんて考える方がおかしいのではないかと思います。
光子の質量はゼロなので、素直にシュレディンガー方程式を適用できる訳がありません。ただシュレディンガー方程式の調和振動子モデルを使うことになります。ここら辺の事情は次の記事のコメントでも書かせていただきました。
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3a454b0ac8dbabdbdd07bbaadc3c0b34
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Re: 電子と光子は。。 (とね)
2010-12-18 17:52:16
T_NAKAさんへ

以下のような2つの記述を見つけました。

ランダウ=リフシッツ 理論物理学教程を学ぶ人のために
http://www1.cnc.jp/r_b_kyoutei/

相対論的量子力学トピック

【1】 光子とは何か

 「極限」という言葉はときに「目指すことはできるが実現はできない」というような意味で用いられる。しかし光(電磁波)はこの世の極限速度をいとも簡単に実現している。われわれは日常の存在を考えるとき質量というものを前提することが多い。光はその前提をなくしてしまった存在である。でありながら光は視覚において実感し、熱としても認識することができる。この不思議なものの正体を知ることはすばらしい経験である。「第1章 光子」ではほんとうにそれを実現してくれる。参考になる抽象的な表現は例えばつぎのようである。

P14_下から9L_マ「マクスウェル方程式が光子に対する《シュレーディンガー方程式》の役割を果たしている.」 (具体的にはp60_下から11_電 において説明される)

P14_下から3L_光 「光子の波動関数と言うとき、光子の空間的局所化の確率振幅として考えるのではけっしてない・・・光子の座標の概念は一般に物理的な意味を持たない・・・」つまり、《r-表示》ではなく《p-表示》を用いなければならない(『量子力学1』p50_2L_関)。


けれどもこちらのPDFには光子の確率解釈が1999年に可能になったと書かれています。
この記述でのNewtonはIssac Newtonではもちろんありません。
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/3014/1/Gaiyo-4042.pdf

光子に関して,波動関数の確率解釈が可能であるかどうかは,量子力学誕生まもなく議論され始め,さまざまな視点から研究されてきた.光子に関する波動関数が定義されなかった原因は,光子の位置演算子が定義されていなかったことに起因している.
(中略)
Newtonは,1999年に,光子の位置演算子の定義に成功し,位置と運動量に関する通常の交換関係を満たすような,光子の量子力学を非常によい形式として提案した.線形な波動方程式に従う光子波動関数が規格化されることが示され,光子波動関数の確率解釈がはじめて可能になった.

いずれにせよ微妙な問題のようですね。
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Re: 電子と光子は。。 (とね)
2010-12-18 17:25:40
アドバイスいただき、ありがとうございます。確かに次のようなページの記述を見ると光子の波動関数は実数波のようですね。

このページの一番下のところです。
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/t2366/%E5%AD%98%E5%9C%A8%E8%AB%96%E7%9A%84%E3%80%81%E9%9B%BB%E7%A3%81%E6%B3%A2%E8%AB%96.htm

またウィキペディアの「波動関数」という項目を見ると、光子の波動関数は次のようになり、明らかにシュレディンガーの方程式とは異なります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A2%E5%8B%95%E6%96%B9%E7%A8%8B%E5%BC%8F

電磁場の量子化のストーリーの中で理解できることなのですか。ちょうどいま「量子力学と経路積分」の第9章「量子電気力学」の章に入ったところなので注意して読み進めますね。

それにしても、ファインマンの「光と物質の不思議な理論」の第1章、第2章に書かれている矢印の計算規則は「光子」についての複素数の演算になっています。このような説明、アプローチの仕方が間違いということでしょうか?明らかこの本では光子に付随する矢印を「確率振幅」として紹介し、その2乗が確率であると説明しているのです。
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電子と光子は。。 (T_NAKA)
2010-12-18 12:30:58
電子と光子は区別して考えるべきで、光の波動関数は複素数なのか?という疑問があります。光の波動はマックスウェル方程式で出てくるもので、これの2乗は確かに電磁場の強さを表すものです(工学的には電界強度なんていいます)。つまり光の波動関数と言っているものは電磁波であり、電波として工学的にも利用されていることはご存じでしょう。だから光の波動関数は2乗して初めて意味のあるものではなく、そのままで電磁波という物理的実態のあるものでしょう。どうも光子にシュレディンガー方程式が素直に適用できるとお考えの人が多いようで、それは啓蒙本の書き方が読者に誤解を与えていると思います。電磁場の方程式の解→フーリエ級数で表現→フーリエ係数が調和振動子になる→量子力学の調和振動子の生成消滅演算子を適用。というのが電磁場の量子化のストーリーです。これは場の量子論の話なので、別の説明方法があるかも知れませんが、電子と光子を同じ舞台で話をするのは注意が必要と思います。
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kafukaさんへ (とね)
2010-12-17 09:26:43
お久しぶりです。コメントいただきありがとうございます。

「量子波のダイナミクス」についてアマゾンで概要を見てみました。こちらもよさそうな入門書ですね。書店で見てみたいと思いました。

熱核、ファインマン核とは要するに積分核のことだと思います。「量子力学と経路積分」の本の中でも、この積分核は単に核と呼ばれたり、確率振幅、振幅、波動関数Ψと呼ばれたり呼び方が統一されていません。説明のその場その場の局面で「ふさわしい」呼び方をしているのだと思いました。以下はウィキペディアの「経路積分」の項目に表示されている画像ですが、この中の「K」のところがこの積分核です。

http://upload.wikimedia.org/math/5/a/b/5ab0429e59bd1ac4906a9746226a789a.png
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Unknown (kafuka)
2010-12-17 06:54:21
僕は、経路積分法の本では、
森藤正人「量子波のダイナミクス」
という本を持っています。
もってるだけです ^^;
始めの方の「経路積分法からシュレーディンガ方程式を導く」くらいしか
理解できていません。
熱核、ファインマン核 って何なんでしょ???

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