とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

NHKニューヨーク白熱教室:第2回 “万物の理論”の驚くべき予言

2015年04月11日 00時46分30秒 | 物理学、数学

NHKニューヨーク白熱教室(4回シリーズ)
毎週金曜日 Eテレ 午後11時から11時54分まで(2か国語放送)
http://www.nhk.or.jp/hakunetsu/newyork/index.html

ニューヨーク市立大学シティーカレッジ
ミチオ・カク 教授
超弦理論が専門で、世界で最もその名を知られている物理学者の一人。日系3世。物理学のみならず未来論についての啓蒙活動で知られる。コンピューターの驚異的発展、バーチャル世界の膨張、不老不死研究、心や意識の未来など、これまでにない全く新しい未来像を提示し続けている。最新の科学を一般の人向けにわかりやすく情熱的に伝える力量が世界で高く評価されている。


NHKニューヨーク白熱教室:第2回 “万物の理論”の驚くべき予言

“万物の理論”の最有力候補である超弦理論はSF以上の極めて不思議な世界を予言する。まずは「多元宇宙」。ビッグバンから生まれた私たちの宇宙は実は唯一ではなく、無数に多くの“別の宇宙”が存在しうるという。また、未来や過去への時間旅行も可能だと考えられる。そしてブラックホールの中に入り込めば、別の宇宙への一足飛びの旅行も可能だという。“万物の理論”が指し示す、驚くべき世界を堪能する。

先週放送が開始したNHK白熱教室の新シリーズ。数々のポピュラー・サイエンス書や講演で知られているニューヨーク市立大学シティーカレッジの理論物理学者、ミチオ・カク先生による現代物理学講座だ。


第2回は昨年放送された「宇宙白熱教室」を凝縮した内容だった。(「宇宙白熱教室」のほうがずっと面白く、ためになった。)

カク博士は物理学者であると同時に「未来学者」でもあるという。超弦理論が予言する未来とはいっても、まだそれは仮説に過ぎず、僕の抱く感じではそのような未来が実現する可能性はほとんどないと思うのだ。

たとえば人間には両手、両足がある。「両手があるのだから数億年後には、人間は足ではなく両手を使って歩くようになるだろう。」

確かにその可能性はゼロではない。超弦理論から博士が予言する未来も、このレベルとほとんど変わりはない。未来学という学問をするのであれば、せいぜい10年後、20年後の未来、私たちが生きている間に実現する未来のことを予言すればよいのにと思った。

並行宇宙やワームホール、タイムトラベルは明らかにSFであることを忘れてはならない。


今回の講義も空席が目立つ。

次のような流れで説明が進んだ。SFの部分は赤文字にしておこう。

- 宇宙の誕生、ビッグバンの謎
- 夜空はなぜ黒いのか?(エドガー・アランポーが解決)
- かつての宇宙像:時間的にも空間的にも無限の広がりをもつ
- エドガー・アランポーが宇宙が有限で、始まりがあることを見つけた
- ビッグバンの3つの証拠:赤方偏移、宇宙マイクロ波背景放射、宇宙の元素の割合(75%の水素と25%のヘリウム)
- 1916年、アインシュタインの一般相対性理論が発表、銀河系だけ存在すると信じられていた
- エドウィン・ハッブル:他の銀河の存在、宇宙の膨張の発見
- ハッブルの法則:銀河の遠ざかる速さはその銀河までの距離に比例する
- アーノ・ペンジアス(ニューヨーク市立大学卒業):宇宙からの電波のノイズを観測=宇宙マイクロ波背景放射であることがわかる
- COBEとWMAPで宇宙マイクロ波背景放射を観測
- 一般相対性理論はビッグバンがおきた理由を説明することができない
- それを説明する最も有力な候補が超弦理論、ビッグバンは何度もおきていた
- 超弦理論の予言:並行宇宙の存在、宇宙の誕生は繰り返される
- 並行宇宙の物理法則はそれぞれ異なる
- 宇宙重力波検出装置:LISAによる観測
- 生まれたばかりの宇宙は並行宇宙とつながるへその緒をもっている
- 並行宇宙の存在を確認する方法
- 73%は暗黒エネルギー、23%は暗黒物質、4%は水素とヘリウム、普通の物質は0.01%
- 暗黒物質が銀河系をまとめている
- 重力レンズ効果
- ヴェラ・ルービン:パルサーの発見により暗黒物質の存在を発表
- 大型ハドロン衝突型加速器で暗黒物質の検出を目指す
- 超弦理論で予言される重たい素粒子が暗黒物質だと考えられている
- 重力は11次元の空間を行き来できるので並行宇宙の存在を確認できる
- 暗黒物質のほとんどは銀河系の外にある
- 超弦理論の予言:ワームホール、タイムトラベル
- 一般相対性理論はブラックホールの存在を予言する
- ブラックホールの中心部からはジェットと呼ばれるX線などの電磁波が放射される
- 銀河系は「棒渦巻き銀河」
- ブラックホールの中心には特異点がある=これは「わからない」と言っているのと同じ
- 相対論と量子論によりブラックホールの中心にはリングがあり、他の宇宙へのゲートウェイとなる=ワームホール
- ワームホールは空間の近道、タイムトラベルは時間の近道
- タイムパラドックス
- タイムラインの分裂
- タイムマシンの作り方:ブラックホールに匹敵するエネルギー、マイナスのエネルギーを使う
- 超弦理論の帰結を利用できる文明とは?
- 宇宙には高度に発達している文明が存在しているかもしれない
- 利用するエネルギー源によって3つのタイプに分類できる
- タイプ1の文明:惑星の全エネルギーを支配できる文明
- タイプ2の文明:恒星の全エネルギーを支配できる文明
- タイプ3の文明:銀河の全エネルギーを支配できる文明

- 太陽系外惑星探査機ケプラー
- 銀河系には10億個ほどの地球型惑星があり得る
- 超弦理論の帰結を利用できる文明はタイプ1やタイプ2
- なぜエイリアンは地球を訪れないのか?エイリアンは高度な文明をもつので我々に興味がないから

- 人間の知能を進化させた要素:物をつかむ能力、立体視、言語
- 物理学で宇宙の未来についてはあまりわかっていない
- 50億年後、太陽は赤色巨星になり地球に死が訪れる
- 太陽は矮星という星(核廃棄物)になって終わる
- 宇宙は数兆年後には冷え切ってしまう、それまでに文明はタイプ3に進化し、別の宇宙に逃げるべきだ

並行宇宙について詳しく知りたい方は「隠れていた宇宙:ブライアン・グリーン」という記事をお読みいただきたい。


もし人類がひとつになりタイプ1~3の文明へ進化するのだとしたら、それ以前に地球上の問題を解決しておかなければならない。文明がひとつになるというのは反乱分子を排除するということでもある。もし、テロリストがそのような便利で高度な技術を利用したら、どのような争いがおこるのか?つねに科学や技術が「諸刃の剣」であることを心にとめておかなければならない僕は思うのだ。


なお、第2回までの放送はすでにネット上に公開されてしまっている。見逃した方はここから検索してみるとよいだろう。(この記事を投稿した時点では「NHKオンデマンドの見逃し番組」からは見れるようになっていない。)


以下、ミチオ・カク先生の著書をジャンル別に紹介しよう。

科学教養書:

アインシュタイン よじれた宇宙(コスモス)の遺産:ミチオ・カク」- 2007年刊行



内容
アインシュタインの相対性理論はイメージとして現れた。光と並んで走るイメージ、いすから落ちるイメージ。そして宇宙の謎を統一する未完の試み、統一場理論。アインシュタインのイメージを軸に、現代理論物理学の権威ミチオ・カクがその生涯と業績を分かりやすく解説する。


科学(?)教養書もしくは科学SF書: Kindle版がお買い得だ。

パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ:ミチオ・カク」(Kindle版)(紹介記事)- 2006年刊行



内容
ブラックホールへの決死の旅や、タイムマシン、もうひとつの宇宙、そして多次元空間―本書は宇宙論の世界を席捲する革新的な宇宙の姿を鮮やかに描き出す。今日、ひも理論とその発展理論であるM理論は圧倒的な支持を得て、世界の名だたる物理学者や天文学者が、最先端の波検出器、重力レンズ、衛星、天体望遠鏡を動員し、多宇宙(マルチバース)理論の検証に取り組んでいる。もしパラレルワールドが存在するのなら、いつかこの宇宙が暗く凍ったビッグフリーズを迎えるとき、われわれの未来の先進文明は、次元の「救命ボート」によってこの宇宙を脱出し、パラレルワールドへと至る方法を見つけるであろう。

サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か:ミチオ・カク」(Kindle版)- 2008年刊行



内容
今でも当たり前のGPSや携帯電話は、かつて想像の世界にしか存在しなかった。だとしたら、タイムトラベルやテレポーテーションも、実現できる日が来るかもしれない。『スター・トレック』や『透明人間』など、古今のSF作品に登場する「ありえない」テクノロジーは、いつ、どのように実現できるのか…。現代物理学界を代表するミチオ・カク博士も、昔はSF大好き少年だった!だれもが持つ「少年時代の夢」をかなえる最先端の科学理論をカク博士が熱く語った、全米ベストセラーのポピュラー・サイエンス書。

2100年の科学ライフ:ミチオ・カク」(Kindle版)- 2012年刊行



内容
コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行…近未来(現在~2030年)、世紀の半ば(2030年~2070年)、遠い未来(2070年~2100年)の各段階で、現在のテクノロジーはどのように発展し、人々の日常生活はいかなる形になるのか。世界屈指の科学者300人以上の取材をもとに物理学者ミチオ・カクが私たちの「未来」を描きだす。

フューチャー・オブ・マインド―心の未来を科学する:ミチオ・カク」(Kindle版) - 2015年刊行



内容
テレパシー・記憶の増強・AI…SFが現実になる!「心」をめぐる科学の最前線、そこから導かれる驚愕の未来図。NHK「NEXT WORLD私たちの未来」出演の理論物理学者が綴る第一級のサイエンス・ノンフィクション。


専門書: 通常の教科書である。場の量子論までの物理学を学んでいることが前提。(参考:「超弦理論に至る100冊の物理学、数学書籍」)

超弦理論 :ミチオ・カク」- 1989年刊行



内容
過去50年もの間解けなかった、場の量子論と一般相対論の統一という問題を解決する超弦理論についての本格的入門書。2000年刊行の改訂版では省かれた「アティヤ=シンガーの指数定理」の証明が掲載されている。

超弦理論とM理論:ミチオ・カク」(購入リンク2)- 2000年刊行



内容
過去50年もの間解けなかった、場の量子論と一般相対論の統一という問題を解決する超弦理論と、その最近の定式化であるM理論を追加して改訂した本格的入門書。1989年刊「超弦理論」の改題改訂。


関連記事:

NHKニューヨーク白熱教室:第1回 アインシュタインの夢
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/274adc0121aba0485a16318d343c176f

NHKニューヨーク白熱教室:第3回 科学が変える未来社会
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/94a3e2d36e33b12098be80d6c527b1e5

NHKニューヨーク白熱教室:第4回 変貌する“心の未来”
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/af868d9e78346e91a6f2056201a0afa3


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4 コメント

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見ました (プロの素人)
2015-04-11 01:08:15
今回も見ましたけど、1回目の方がよかったです。

2回目は、なにかこう空想の世界の話に感じてしまった・・・
返信する
Re: 見ました (とね)
2015-04-11 01:18:30
プロの素人さま

そうですよね。数万年後から数兆年後の話をされても。。。。という感じです。

もっとワクワクする物理学の話題は、他にもたくさんありますよ。NHKにはそのようなテーマで番組を作ってほしいと思いました。
返信する
タイムとラベル (hirota)
2015-04-11 13:36:50
何のラベルかと思った。(4箇所)
たぶん言ってる事の9割以上が捨てられて理論に残らないんだろうなー。

僕としてはLorenz群がSO(2,10)のF理論 (M理論がmotherならfatherのF理論があってもいいらしい) はどうなってるのか? SO(2,10)は時間2次元,空間10次元を意味するが時間2次元て何? とか誰か説明して欲しい所。
数学者による数学者のためのString Duality概論
https://www.math.kyoto-u.ac.jp/~fukaya/stringdual.pdf
を見てもサッパリ分からんし…
返信する
Re: タイムとラベル (とね)
2015-04-11 13:48:10
hirotaさん

ありがとうございます!修正しておきました。
タイプミスは恥ずかしいですよね。推敲していないのがバレバレです。

2次元の時間もそうですが、全体的に説明不足なところが多いですよね。

タイムラインの分岐とは別の文脈でですが、竹内薫先生がお書きになった「図解入門 よくわかる最新時間論の基本と仕組み―時間・空間・次元の物理学」に2次元の時間のことが説明してあって、そのような時間は存在できないことが示されていたのを思い出しました。

F理論って響き、新鮮ですね!
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