とね日記

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量子力学(II):小出昭一郎

2010年08月07日 17時22分53秒 | 物理学、数学
量子力学(II):小出昭一郎

量子力学(I):小出昭一郎」では1個の粒子を扱ったが、第2巻である本書では多粒子系の取り扱いについて解説している。全体の流れは次のとおりだ。

第9章:多粒子系の波動関数
第10章:原子と角運動量
第11章:数表示と第二量子化
第12章:相対論的電子論
第13章:光子とその放出・吸収

じっくり時間をかけて丹念に読んだ。第10章の「原子と角運動量」がこの第2巻で計算がいちばん面倒で難しい。僕の理解度もこの章については7割止まりだった。もちろんどんなことが説明されているのかは理解できたのだが。この章によって原子を構成する電子殻内の電子配置の理屈が解き明かされる。

僕にとって目新しく面白く読めたのは第11章~第13章。相対論的電子論については昨年「ディラック 量子力学 原書第4版」で読んでいたが背伸びしすぎていたようで理解度がいまいちだった。それに対し本書の説明は、学生が学ぶべき題材を盛り込みつつ理論的な解説を行っている。長年にわたる教授法の結果が生かされていると思った。

第二量子化など「場の量子論」へ通じる解説も僕にとっては有益だった。これまでに読んだ量子力学の教科書では触れられていなかったからだ。

僕にとっては第13章の「光子とその放出・吸収」がいちばん面白く読めた。電子の状態が遷移することで、遷移前と遷移後のエネルギーの差が光子を放出したり、吸収したりするわけだが、そのからくりが量子力学の数式として明らかにされる。粒としての電子や光子を見たことのある人は誰もいないわけで、それらが電子の対生成、対消滅、そして光子の放出、吸収という形で数式による形で認識できるわけだ。

電磁場と電子の相互作用のある現実的な状況をどのように計算するかということについても興味深かった。古典的な電磁気学ではマクロ的な視点から理解できなかった「電磁波としての光」と、ミクロな世界での「光子」の吸収と生成がどのように結びついているか理解できたのが収穫であった。

本書全体としての理解度は85パーセントくらいだと思う。第1巻にくらべて楽しく読めたのは僕にとって目新しい題材が第2巻には多く含まれていたからだろう。

明日からは江沢洋先生の教科書に進み「量子力学の教科書の読み比べ」を続けよう。こちらは2002年初版の比較的新しい教科書だ。


量子力学(I):小出昭一郎
量子力学(II):小出昭一郎


【目 次】

『量子力学(II)(改訂版)』

9 多粒子系の波動関数 
 9.1 多粒子系のシュレーディンガー方程式
 9.2 相互作用がない場合の波動関数
 9.3 ハートレーの近似
 9.4 ハートレー - フォックの近似
 9.5 クーロン積分と交換積分

10 原子と角運動量
 10.1 元素の周期律
 10.2 角運動量の保存
 10.3 角運動量の固有値
 10.4 二電子スピンの合成
 10.5 スピン一重項と三重項のエネルギー
 10.6 電子配置(np)(n'p)
 10.7 電子配置(np)2
 10.8 ラッセル - ソーンダース結合
 10.9 LとSの合成

11 数表示と第二量子化
 11.1 マクロな自由粒子系
 11.2 フェルミオン系の生成・消滅演算子
 11.3 生成・消滅演算子による表示
 11.4 ボソン系の生成・消滅演算子
 11.5 数表示とその応用例
 11.6 場の演算子
 11.7 場の演算子の諸性質
 11.8 第二量子化
 11.9 フォノン

12 相対論的電子論
 12.1 ローレンツ変換
 12.2 クライン - ゴルドンの方程式
 12.3 ディラックの方程式
 12.4 ディラック電子のスピン
 12.5 ディラック電子の平面波
 12.6 電子と陽電子
 12.7 電磁場内のディラック電子

13 光子とその放出・吸収
 13.1 電磁波の古典論
 13.2 光子
 13.3 光子の運動量
 13.4 電子系と光の相互作用
 13.5 非定常状態の摂動論
 13.6 光の放出と吸収
 13.7 許容遷移と禁止遷移
 13.8 選択規則
 13.9 振動子の強さ


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