交通事故と闘う

私の父は交通事故に遭い、脳に障害を負いました。加害者は謝罪せず、損保の対応は二転三転..。その「闘い」を綴っています。

医師たる前に人であれ

2006-01-09 01:44:20 | 交通事故と闘う
遅いご挨拶となりましたが、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
年末、実家に戻っておりましたが、この寒さもあって父は肺炎を起こしており、しばらくは食事の度にむせて苦しむ日が続きました。幸い、年明けには回復して、私も父の笑顔を見て郷里を発つことができ、一安心でした。

さて、正月から仕事に追われてしまい、まだまだblogの定期的な更新は実現できそうにありませんが、TV番組を観ての雑感を書きたいと思います。昨夜と今夜の二夜連続で放送された「NHKスペシャル 日本のがん医療を問うII」ですが、その第一夜で、こんな発言をした医師がいました。

・日本のがん患者、毎年新たにがんと認定される患者のうち、60%は助かる。残り40%は治療法が無いので死ぬ。
・その40%に入る人には、残念ながら「延命」ということになる。


驚きました。目の前には多くのがん患者やその家族が並んでいて、これからのがん医療をどう高めていくか、人の、患者の尊厳をどう守っていくのか、といった議論が為されている中で、あまりにあっさりと、「○○%は助かるが、○○%はどうせ死ぬ」という発言でした。
当然、患者側からは不満と非難のコメントがありました。「そうやって、あっさりと死を宣告されることが悲しいんだ」というようなコメントだったように思います。生放送であったなら、あんなものでは済まなかったと思いますが、わざわざ公共の電波で自分たち医師の非常識さを露呈しなくてもいいのに、と思ってしまいました。

調べてみたところ、その医師は「臨床医ネット」という組織を主催している、小林一彦という人物でした。JR東京総合病院という大病院の血液内科に所属しているらしく、おそらく多くの手術や治療を手がけている医師なのでしょう。しかし、立派な医師なのかもしれませんが、人間性には疑問を持たざるを得ないと感じました。「臨床医ネット」の正式名称は「患者とともに納得の医療を目指す臨床医の会」だそうですが、「患者とともに」と言うならば、どうして数字で人を選別するかのような発言が出来るのでしょうか?
患者の反論で「自分が助かる方の60%に入っていようが、死ぬ方の40%に入っていようが、自分にとっては1つしかない命なんだ」というコメントがありました。1つの命と真剣に向き合うのか、治療成績という指標の1つとして命を扱うのか、「臨床医ネット」という組織での考え方は、自明です。
以前のNHKスペシャルの際には、この「臨床医ネット」が統計の取り方について意見書を送るなどしたそうですが、そういった専門的見地からのアクションを起こすこと、あるいは医療のレベル云々の前に、まず、「人であってほしい、同じ人間同士として患者と向き合って欲しい」と、強く感じた番組でした。

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4 コメント

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非難されている件について (一患者)
2006-02-08 16:16:16
私の妻が白血病になり小林医師に大変お世話になった者です。小林先生は本当に親身にみてくださりました。去年の秋に亡くなりましたが意識がある間はずっと小林先生とお話するのを楽しみにしており、私は感謝しております。NHK番組に出られた後で非難されたりしていますが、あの番組の小林先生のご意見と、医師として目の前の患者に対して治療するのは別だと思います。それを知って頂きたくまた、このように非難されると私と妻との思い出のためにつらく感じられまして差し出がましいコメントをさせていただきました。
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きちんと内容を読みましたか? ()
2006-11-27 16:36:12
時間がたってしまってからなのでお読みになられないかもしれません。
しかし、臨床医ネットの中身をお読みになりましたか?
あの時の彼の本意はテレビでは全く伝わっていませんでした。
中身をきちんと読めば理解できるのではないかと思います。
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コメント御礼 (「交通事故と闘う」blog管理人)
2006-11-29 00:14:39
>梅 様
コメント、ありがたく拝読いたしました。
随分と前の記事なので、少し思い返すのに時間を要しましたが、TVでの医師の発言と、その時受けた印象は、非常に鮮明に思い出されました。
医師として、あくまで事実を言ったのだろうとは思いますが、「助かる率がいくら、残りは死ぬしかない」という表現は、ガン医療に希望を、それこそ命を託している患者にとっては、私の記事のようにとらえられても仕方のない発言だと考えます。
あれが、臨床研究の場や、ある程度限られた人たちとの対話であれば構わないと思いますが、TVという非常に影響力の強い、しかも基本的に単方向のメディアとなると、もう少し言葉を選んで、適切な表現をしてほしかった、そんな気がいたします。
臨床医ネットを詳しく調べれば、彼の発言とは非常に異なる内容であることは、明らかだと思います。その場合、彼の発言と臨床医ネットの発信、どちらの情報が真実なのか、というところに、つまるところ、行き着くのではないでしょうか?
私としては、彼の発言が不適切だった、真意を表していない表現だった、と思いたいです。臨床医ネットの掲げる精神こそが、真実であって欲しいと願っています。しかし、ああいった場に出て、臨床医ネットの名を出して発言した以上、その責任は免れるものではない、そう思います。
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出る杭は打たれる!でも先生頑張ってね! (ANON)
2006-12-20 04:13:07
私も番組も意見書も拝見し、このブログもすぐに拝見しておりました。
そしてこれを読んだ時、悲しかったことを思い出しました。

臨床医ネットで掲げていることが真実です。
放送後、先生は編集されすぎてきちんと伝わっていないことを惜しんでいらっしゃいました。
あの番組は全国放送ですし、確かに影響は大きい。
そして賛否両論があってしょうがないと思う。
でも、あのほんの数時間の番組の中を見て、先生に対して批判的な目を向ける人たちに、先生の日々の診療でのご熱心な姿を知って欲しいです。

それにしても数時間の番組で先生の人間性まで否定されてしまうのは、悲しすぎます。
病院名も出ているし、このブログもNHKまでいかなくとも誰でもアクセスできますし、結構影響力ありますよ。
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