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生きてるだけで、愛。

2019-02-27 13:15:43 | 映画2019
 ウォシュレットの話題は興味深かった。ちょっと寧子に共感してしまうほど、水圧で痛いんじゃないかとか、トイレが水浸しになることを恐れて、未だに使ったことがない(家のトイレには付いてる)。むしろ、他の3人が全く平気だと言ってることに驚いてしまったくらい。あ、もしかして寧子と同じじゃ・・・と感じてしまった。

 過眠症を含むうつ病。目覚まし時計を何個も並べて万年床状態の寧子。それでも津奈木がコンビニで買ってくる食事には食欲を示す。国民健康保険に入っていないので精神科に通うこともできない。津奈木は3年も同棲しているのに、この辺りは無頓着なのだろうか、せめて保険に加入させて受診することが大事だろ!と最初は冷めた目線で見てしまいました。

 多分、“サタデーナイト”というゴシップ誌の仕事が忙しすぎて、津奈木の方も睡眠不足となり精神を病んでいる状態がうかがえたが、そうした二人が妙にバランスを保っていたのだろう。そのかろうじてバランスをとっていた寧子の前に突如現れたのが津奈木の元カノ安堂(仲里依紗)だった。ヨリを戻すためには寧子に自立してもらわねばという理由で、無理矢理バーのアルバイトを決めてしまうという展開だ。この有り得ないような不可思議な設定が本谷流だと思うのだが、それを甘んじて受け入れる寧子も崩れそうな精神状態から抜け出したかったのかもしれない。演出も素晴らしく、三人三様のそうした心の葛藤を見事に描いていた。

 壊れてゆく津奈木(菅田将暉)の描写もなかなかのもの。俳優業として多忙な彼も、もしかすると地で疲れ切った演技もこなせたのかもしれない。ブチ切れたせいで、ボツとなった「東京五輪そこにある危機(だったかな?)」という記事を入稿してしまう。一種のブラックジョーク的なネタではあるが、忖度しまくりの現政権下においては、タブーとも思える五輪ネタを映画の中で堂々と扱うこと自体が勇気のいることだと思う。

 分かり合える一瞬のために生きる。別れたくても自分とは別れられない・・・津奈木や寧子の発する言葉にはかない真実味があり、共感もできる。一瞬のために3年間苦労することも哲学的かもしれないけど、多分我々の人生においては必要な時間なのだろう。彼らの未来、津奈木はそのまま不眠症からくる睡眠障害を患い、寧子とは逆のタイプのうつ病になっていく気がする。うつ抜けしつつある寧子とは丁度いいバランス。さらにお互いを深く知るきっかけになることだろう・・・


★★★★・

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