京都の松原通り、鴨川東岸側の地域は、平安時代の京都の葬送地のひとつでした。
毎年、お盆の時期(8月7日~10日)になりますと、亡くなった先祖の霊である「お精霊(しょうろう)」を迎える「六道まいり」という行事が行われます。
今回も、京都の妖怪絵師にして妖怪伝道師・葛城トオル氏の案内で、六道まいりの松原を歩きます。
「六道まいり」が行われるお寺のひとつである西福寺では、毎年その時期になると、寺に古くから伝わる地獄絵(六道絵)や、美しい皇后が死体となって朽ちていく様を描いた「檀林皇后九相図」などが公開されます。
本シリーズでも、第53回でとりあげたことがありますが、今回はそんな西福寺の貴重な絵図を、京都の妖怪絵師にして妖怪伝道師である葛城トオル氏の解説で見ます。
まずは、前回の続きから。
鴨川以東の松原通りを進んでいきますと、西福寺の入り口が見えてきます。
西福寺については、シリーズ第31回と第53回とでとりあげたこともありますが、今回は改めて葛城氏の解説付きで。
まずは、「西福寺」と、西福寺のある「六道の辻」について、簡単な説明を。
【動画】葛城トオル、西福寺で地獄絵を語る(1)
境内に入っています。
「六道まいり」の期間中のためか、多くの参拝者で賑わっています。
そして、その中にありました。
地獄絵が。より正確には「六道絵」です。
人間が生死を繰り返しながら、仏教で言う「六道(天道、人道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道)」を巡る様子が描かれています。
以下、この六道絵について葛城氏の解説です。
【動画】葛城トオル、西福寺で地獄絵を語る(2)
仏の世界。
人間が、生まれて、年老いて死ぬまでの一生も。
六道絵の上半分に描かれています。
人が老いて死に、朽ち果てていく様子でしょう。
これは、賽の河原と、子供たちを救う地蔵菩薩でしょうか。
三途の川の様子です。
前回にも解説されましたが、その死者の生前の行いによって三途の川やその後の世界で受ける扱いが違ってきます。
善人は橋が現れてたり、比較的浅いところを通れたりして、楽に渡河できます。
しかし行いの悪い人ほど、川の深いところしか渡れなかったり、川が濁流となったり、龍に襲われたりして、苦労します。
そして、向こう岸に居る「奪衣婆」が、その死者の衣を取って、木の枝にかけます。
善人ほど着物の濡れ具合も少ないので、木の枝のしなり具合も小さくてすみます。
しかし、生前の行いが悪かった者ほど、川を渡るときに着物が濡れているので、木のしなり具合が大きくなってしまいます。
この段階から、その死者が六道のうちどの世界に送られるか、その後どのような扱いを受けられるが決められていきます。
有名な、地獄の閻魔大王の裁きの場面です。
横にある「浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)」に、死者が生前に行ってきた所業が全て映し出されるので、閻魔王の前では絶対に嘘は通用しません。
この話も、ほとんどの日本人に知られています。
修羅となって、無限に戦い、怒り、苦しみ続けるという「修羅道」。
牛馬などの動物に生まれ変わる「畜生道」。
餓鬼となって、飢えや渇き、嘔吐などに苦しみ続ける「餓鬼道」。
そして、「地獄道」。
生前の罪に応じて、様々な責め苦が与えられます。
何度身体を潰されたり、焼かれたり、切り刻まれたりしても、風が吹いたら元通りの身体に戻り、苦しみだけがいつまでも続くという……。
昔は、ほとんどのお寺にこうした図絵があって、教化などのために使われていたそうです。
そしてこの寺には、「六道絵」の他にも、教化のために使われたであろう図絵が、古くから遺されています。
それが、「檀林皇后九相図」です。
これは、知性と美貌にあふれる皇后として有名だった、嵯峨天皇の后・檀林皇后(だんりんこうごう)が死に、その遺体が朽ち果てていく様子を描いた図絵です。
(※ちょっとグロいので、ご注意ください)
何故、こんな図絵があるのか?
どのような意図で描かれたのか?
以下、この絵に関する葛城氏の解説です。
【動画】葛城トオル、西福寺で地獄絵を語る(3)
日本の先人たちは毎年、こうしてお盆を迎えることによって、先祖や亡き人の供養だけでなく、その度に世の無常を知らされ、自らの生き様をも見つめ直すことにしてきたのでしょう。
それでは今回はここまで。
シリーズ次回も引き続き、「六道まいり」の松原通りを葛城氏と歩きます。
【追記】:
8月31日まで京都・高台寺と圓徳院にて、葛城トオル氏の作品展なども開かれています。
高台寺・百鬼夜行展
http://www.kodaiji.com/topic/28.html
圓徳院・百鬼夜行展など圓徳院夏の拝観案内
http://www.kodaiji.com/entoku-in/topics/column/news/new.html
*妖怪堂のHP
http://www.maekake.com/yokai_index.html
*葛城トオル氏のブログ
http://blog.livedoor.jp/maturowanumono/
(葛城氏主催のイベント等について詳細は、こちらをチェック!)
*祇園祭ののHP
http://www.gionmatsuri.jp/
*京都妖怪探訪まとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm