京都の闇に魅せられて(新館)

上品蓮台寺の蜘蛛塚と夕焼け桜(2019年4月) @ 京都妖怪探訪(618)





(記事中の写真はクリックで拡大します。プライバシー保護等の為、人の顔部分に修正を加えていることがあります)


 どうも、こんにちは。
 今年(2019年、平成31年)の『霊場魔所の桜』シリーズの第6弾。
 シリーズ外記事を含めたら、今年9本目の桜の記事かな?
 「桜の樹の下には屍体が埋まっている」という言葉もあるように、桜には死のイメージもつきまとっている。
 古来より日本人は、桜の散っていくはかない姿に死や世の無常のイメージを見出してきたようですが。
 今回は本シリーズでとりあげるにふさわしい、死と世の無常のイメージが付きまとう妖怪伝承地を巡ります。
 妖怪・土蜘蛛の伝承が遺る古刹・上品蓮台寺(じょうぼんれんだいじ)です。

 まずはいつもの通り、交通アクセスから。
 千本通り沿いにある京都市営バス「千本鞍馬口」停留所もしくは同「ライトハウス前」停留所から歩いてすぐの場所にある、上品蓮台寺の山門です。





 ここで以前訪れた時の復習になりますが、上品蓮台寺に着いて説明を。
 寺伝によれば、あの聖徳太子が母の菩提を弔うために創建したとされていますから、平安京より歴史が古い寺院ということになります。当初は「香隆寺(こうりゅうじ)」と称していたそうです。
 天徳4年(960年)に宇多法皇の勅願により、東寺長者でもあった僧正・寛空(かんくう)が再建し、寺号も「上品蓮台寺(じょうぽんれんだいじ)」と改められています。
 現在は真言宗智山派という宗派に属する寺院となっているそうです。


 山門から中へ。








 この時、門近くの桜はもう散り始めていたようですが。
 それでも、少し左奥の大師堂や鐘つき堂あたりには、まだこんな桜が。


















 確かここから奥は墓地しかなかったので、入り口・庫裏の付近へ戻り、入り口から向かって右側の奥へと進みます。






 そう言えばもう夕方近く。
 傾いた陽の光が、桜の花を少しだけ赤く染めているようです。








 これは境内墓地すぐ側の桜の木々です。
 さらに言えば、この寺院があった辺りは確か、平安京の外側、内裏の北辺りだったかな。
 シリーズ前回記事でも触れましたが、かつては京都の葬送地のひとつ、蓮台野(れんだいの)が広がっていた辺り。
 そう、おそらくは多くの死体が転がり、無数の卒塔婆が立っていたかもしれない地だった。
 やはり、そういう場所の桜が美しいのでしょうか……。


 鳥居が見える辺りにも、桜の花が咲いています。





 確かこの鳥居の奥には、歓喜天が祀られていましたが、何故鳥居が?
 これも神仏習合の形でしょうか。


 さらに北の奥へ。
 傾きかけた陽の光が満開の桜を照らしています。





 さて、ここで。
 シリーズ第396回第485回の復習になりますが、この地に伝わる妖怪・土蜘蛛と土蜘蛛塚の伝承を。

 平安時代の頃。
 大江山の酒呑童子退治などでも有名な武将・源頼光が原因不明の熱病にかかり、床に伏していた時のこと。
 ある夜、頼光の枕元にあやしげな法師が現れ「もっと苦しめ」と言いながら、襲いかかってきます。
 頼光は名刀「膝丸」で法師を斬りつけると、法師の姿が消えます。
 翌朝頼光は、配下の四天王(渡辺綱、坂田金時、卜部季武、碓井貞光)に消えた法師の追跡を命じます。
 斬られた法師が流したと思われる血の跡を辿っていきますと、北野の森の中にあった大きな塚に辿り着きました。その塚を掘り返してみると、中に巨大な蜘蛛がうごめいていました。
 四天王がその大蜘蛛を退治し、遺骸を賀茂川に晒しました。
 すると頼光の熱病はすぐに治りました。

 鬼や妖怪を退治した武将としても知られる源頼光ですが、この土蜘蛛退治伝説は、頼光の伝説の中でも「大江山の酒呑童子退治」と並んで有名な伝説で、能や歌舞伎の題材にもなっています。
 なお、第485回で紹介しました『千本えんま堂大念仏狂言・土蜘蛛』も、その伝説をモチーフにした芸能作品のひとつで、以下にその一部の場面を。















 そして桜の木々の向こうに広がる墓地の中、花も葉もつけていない不気味な老大木がそびえ立っています。





 あの木の下に「源頼光朝臣塚」と刻まれた石碑が立っています(シリーズ第396回を参照)。
 真偽のほどは不明ですが、この塚は、四天王に倒された土蜘蛛の塚があった場所だとも、倒された土蜘蛛が埋められた場所だともいわれています。
 やはり真偽は不明ですが、この老木を切り倒そうとした人が原因不明の病気にかかって死んだという話も伝わっています。


 あの伝説の真偽や真相は今も不明ですが。
 そして今年も桜は咲き誇り。
 あの墓場に立つ老大木も、そしてあの塚もおそらくそのままで……。






 今回はここまで。
 また次回。




*上品蓮台寺への地図・アクセスはこちら





*『京都妖怪探訪』シリーズまとめページ(新)
https://kyotoyokai.jp/



*『京都妖怪探訪』シリーズまとめページ(旧)
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm




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