九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

大津市和邇産シロスジアオヨトウ幼虫の食草

2016-05-01 10:52:26 | 日記
大津市和邇産シロスジアオヨトウ幼虫の食草
 武田さんがヨシを食べる幼虫を調べ始めたことは何度も書いた。その副産物であるほかの植物上で見つかったチョウやガの幼虫が時々届いた。その一つがこの幼虫だ。
2015年11月21日、武田さんが自宅に近い大津市和邇北浜で、ギシギシ(タデ科)を食べていた図版写真1と2に示す体長約40㎜の大きな薄緑色の幼虫を見つけ届けてくれた。その幼虫の頭部は黄褐色で気門下線は少し濃い緑色に縁どられた白線がある。11月23日その幼虫の写真を撮った。胸脚は橙色で、第2~3胸節下方に橙色の小さな斑紋がある。なお図鑑によるとイヌタデ、ギシギシが食草として挙げられている。
「タデ食う虫も好き好き」という諺があるが、これはおそらくタデは酸っぱいものと考えられており、大きないかにも旨そうな葉を広げていても食べられる野草のリストには入っていない。しかしタデを食う物好きの虫は結構あり、ギシギシやスイバ、特にイタドリを食べていたガの幼虫があり、私の昆虫記でもタデ科を食べる他に甲虫やカメムシなどの幼虫や成虫をいくつか紹介した。
私自身の飼育した記録を調べると、鱗翅目の幼虫ではシロスジアオヨトウ、シロモンヤガ、シロシタヨトウ、キバラモクメキリガ、アヤモクメキリガ、シロモンオビヨトウ、ナシケンモン、フトフタオビエダシャク、コベニスジヒメシャク、クワゴマダラヒトリ、ドクガ、ヒメシロモンドクガ、キスジホソマダラ、ベニシジミ¬の14種あった。これは今まで私が飼育した鱗翅目幼虫の2.4%を占めるに過ぎないから確かにタデ食う虫はきわめて少ない。昔の人は結構よく自然を観察していたと感心した。タデ食うガはヤガ科が多く、彼らは複数の科の植物を食べる種である。
11月26日ギシギシの幼虫は葉をつづって繭を作った。繭は内部の蛹が透視できるほど薄いが、ギシギシの葉が枯れてくっつき乾燥すると意外にも頑丈だった。早速、撮影し、他の幼虫たちと一緒に屋外においたダンボール箱の中で越冬させた。そして年が明けて、2016年3月下旬からまた室内に戻し羽化を待った。大きな幼虫だったし蛹も元気だったので必ず羽化し正体がわかると思っていた。
4月30日朝、いつもの通り何か羽化しないか飼育容器を点検しているとシロスジアオヨトウの♂が羽化していた。幼虫が大きく立派だったのでもっと大型のカラスヨトウの仲間が羽化するかと思っていたので、ちょっと意外だった。
 琵琶湖博物館の私の寄贈標本には本種が18頭あり、そのうち最も早い採集記録は大分県九重町地蔵原で2003年5月4日である。なお図版の写真4はその個体(♀)で、その開長は46mmであるが、♂は開長41mmとメスより少し小さい。成虫採集記録から5~6月と7~8月の成虫採集記録が多いので本種は年2化する可能性がある。分布範囲は日本(北海道、本州、四国、九州、対馬)、朝鮮、中国、サハリン、ロシアから中央アジアを経てヨーロッパまで広く分布している。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿