九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

琵琶湖博物館の庭のササに発生したササコナフキツノアブラムシとその捕食者

2015-11-29 21:23:52 | 日記

琵琶湖博物館の庭のササに発生したササコナフキツノアブラムシとその捕食者
 武田さんは琵琶湖博物館の庭でゴイシシジミを目撃したことがあり、彼は秋になると博物館内のササが生えているあたりを通るたびにその幼虫が発生していないかと目を皿のようにして探していた。そして2015年11月16日ついにササの葉上でアブラムシを捕食している白い粉で覆われた体長15mmほどの幼虫が見つかり、早速、私がその葉がついている茎を容器に収容し持ち帰って写真を撮った。
私は昔から鱗翅目に限らず他の目の幼虫を見かければ必ず飼育したので、アブラムシ類を餌とする虫の飼育はなかなか難しいことをよく知っている。なぜなら暖かい季節にアブラムシのついている枝を密閉した容器に入れ捕食者の幼虫も一緒にいれれば、すぐに容器内は結露し腐敗するかカビが生えアブラムシも捕食者もすぐ死ぬ。しかし私が大分県九重町地蔵原でアブラムシを捕食する双翅目幼虫とコクロテントウなどテントウムシ類の幼虫をそれぞれ数種飼育し羽化させたことを九重昆虫記に書いている。そんなことができたのは地蔵原が滋賀県と比べると夏でも非常に涼しいので、プラスチックの小さな容器に捕食者を1匹ずつ入れ、餌として少数の生きたアブラムシを入れ餌がなくなるとこまめに野外から補給することができたからだ。
今回の飼育では捕食者がかなり大きかったので、ササの葉がしおれてもアブラムシは2~3日なら生きていると考え、アブラムシと捕食者がついているササの葉だけを容器に入れた。予想通りアブラムシは葉から吸汁できなくても数日生きていた。
ところで武田さんから受け取った幼虫を撮影しながら口吻の形がおかしく腹脚も見えないのでへんだなあと思った。私は、昔、多分、長野県でゴイシシジミの幼虫を見たことがある。しかしその時の幼虫の姿は思い出せないので、チョウの文献を調べてみるとやはりゴイシシジミの幼虫ではないことがわかった。写真のようにその幼虫は白粉で完全に覆われており、傷つけたくないので触らなかったが、11月19日体長12mmの囲蛹になりハナアブの幼虫だとわかった。私もハナアブ幼虫を数種羽化させた経験があるがこの幼虫は初めて出会った。その後、武田さんがもう一つ同じ囲蛹を届けてくれた。
このアブラムシは松本嘉幸著「アブラムシ入門図鑑」(全国農村教育協会、2008)によるとゴイシシジミの幼虫が餌とするアズマネザサのササコナフキツノアブラムシCeratovacuna japonica (Takahashi)(半翅目、アブラムシ科、ヒラタアブラムシ亜科、ツノアブラムシ族)に間違いない。図版の上の写真は下の写真の一部を拡大したもので白い蝋状物質に覆われているササコナフキツノアブラムシの特徴がよく写っている。なお吸汁できなくなったアブラムシは集まっていた場所から周囲に分散しばらばらにになったが数日生きていた。

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