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「逃げる人」から「創る人」へ

2010-04-07 | clipping
女。MGの日記。|NHKスペシャル「無縁社会part2」に関して 2010-04-04
http://d.hatena.ne.jp/iammg/20100404


ツイートで、「@sayuritamaki「NHKスペシャル」は、民放のバカ番組が多い中でとてもすばらしい番組をいつも提供してくれていると思うけど。だけど今日の内容もひどかった。未来への展望がなさすぎる。どうしてあんな構成になるの? 」と辛口のコメントをしたけれども、広井良典さんの「コミュニティを問いなおす」が注目されたように、再度、人と人の縁、そしてその縁から生まれるコミュニティに関して老若男女、真剣に議論することはとても重要だと思う。

だから、NHK取材陣の試みは大変有意義なものだ。


日本は「課題先進国」だと言われる。

超高齢化社会、ポスト経済成長後の社会のデザイン、なんやかんや知識人たちから文句を言われても、多くの人々の精神安定の拠り所であったコミュニティ(家族・会社)の崩壊。数えればキリがないほどの課題を日本社会は抱えている。


よく、「アジア諸国の人々は貧しいにもかかわらず目を輝かしている。なのに日本人はどうなのよ?」という議論を目にするが、そのような問題提起からはなんの建設的な議論も生まれやしない。

日本の現実に責任をもちたくない、あるがままの現実を直視しない、責任逃れ議論である。

今日本が直面している問題は、遅かれ早かれ近隣のアジア諸国も直面せざるを得ない課題なのだ。

その課題をいかに解決するのか?


日本は、戦後欧米諸国に追いつこうと、「会社」や「家族」という閉ざされたコミュニティを築き、そこを生活の基盤とし、すさまじい勢いで経済発展を成し遂げてきた。しかし、今直面するのは、「経済成長の終焉」と「閉ざされた共同体の崩壊」というダブルパンチだ。


かつて、浅田彰さんは、

逃走する文明と称し「男たちが逃げ出した。家庭から、あるいは女から。どっちにしたってステキじゃないか。女たちや子どもたちも、ヘタなひきとめ工作なんかしてる暇があったら、とり残されるより先に逃げたほうがいい。行先なんて知ったことか。とにかく、逃げろや逃げろ、どこまでも、だ。」

という文章を、ブルーータス1983年1月1・15日号に書いた。

浅田さんは、「住むヒト」から「逃げるヒト」への転換を予兆し、「会社」や「家族」にがんじがらめになってる人々よ!そんなもんから逃走しちゃってもっと自由に生きたらいいじゃないか!だってそのほうが楽しいでしょう?っと言ってのけた。


なるほど、80年代の日本においては「逃げるヒト」になることって、楽しいことだったんだ。

しかし、2010年代の日本においては、かつて「逃げるヒト」に憧れた、50代、60代が「無縁死のリアルに直面し、私の人生これでよかったのかしら?」と悩み、はたまた20代30代は、望んでもいないのに「逃げるヒト」にならざるをえない。

この現実をどう受け止めるべきなのか?私は他人事じゃなく、自分ごととして非常に考えさせられる。


心配かけちゃだめな社会ってどないやねん!~脱役割社会に向けて~

本日のNHKスペシャルの中で取上げられら無縁ビジネス。

その1つに、10分1000円の「話し相手サービス」が紹介された。

そこに電話をかけてきたある男性が、NHK取材班の「なぜこのようなサービスを利用するのか?」という問いかけに対し、

「友人・家族に言ったら心配させちゃうかなって思って。」

と述べていたことに他人事ではない!という思いを強くもった。

人々が、「役割」で交流し「人格」で交流できなくなっている。それがたとえ家族でっても、友人であっても。


ここで私の人生観を変えたリアル体験を1つ紹介したい。

この体験を通し、私は『「社会を変える」とか「世界を変える」とか言う前に、目の前にいる人に真剣に向き合いその人の人生に責任をもつことそがもっとも重要である』と気付かされたのだ。


エピソード1

大学の友人との出会い

彼女は、同じ大学で同じクラスだった。ろくに授業にも出ず、私ともほとんど口を聞いたことはなかった。しかし、大学3年生の時たまたま4人しか受講しないゼミで一緒になり彼女のものの考え方のおもしろさに私は惹かれよく話すようになった。彼女は今、なんと保育士になり、保育の現場で10年の修行に出ている。そんな彼女が語った言葉で私が心が震え、魂が共鳴した言葉を是非みさんに紹介させて頂きたい。



「基本的な生活習慣は保育園までに身につける。そして小学生で社会性をみにつける。子どもは人をよくみている。小学3年になると、親とか学校が入れ知恵する内容に非常に影響を受けるようになる。

素直さがなくなってくる。思考が硬くなってくる。可能性がどんどん狭められる。

私は、たとえ恵まれない教育環境にある子どもであっても、学童保育の時間で子どもたちがいかに有意義に過ごすかで彼女彼らは変わると思う。だから、私はそういう子どもたちの成長にとって大切な場に、いい人材が投入されるようにしたい。だって、そんな場所に京大生の私みたいなぶっ飛んだのが入ってきたらきっとおもしろいと思わない?今の学童保育は正直いってダサイ。私はそれをもっとおもしろいものにしたいんだ。だから現場で私は修行するんだ。とっても子どもって奥が深いよ。日々学ばされる。」


「人と本気でつながると自分も変わる。」


「遠めでサポート。迫ってくるサポートが多すぎる。手出し口出しをあえてしない。忍耐強くその人を見守る。こういうことができる人は、人に責任を持てる人。」


「人との関係は一方通行じゃない。ちっぽけでどうしようもない自分であろうと、あるがままの自分を見せることを厭わなければ真剣な人がよってきてくれる。」


「人との接し方。ちゃんと目の前にあるものとして関わる。

現象としてではなく、体温のある関わり方。そのためには、勉強が必要。自分とは違う何かを許容できるということは何でも受け入れることじゃない。こういうのもありああいうのもありと想像できること。

自分とは異なるものを想像力で許容することは何でも認めることじゃなくて、自分がそのものを許容することで、その先に起こりえる何かをも許容できるかを考え抜くこと、受け止められるかを考えること。つまり、許容には責任が伴う。」


このような言葉を次々に紡ぎだす彼女に、私はただ呆然とし、何なんだ!この友人は!と私は頭を雷で打たれたような思いだった。

そして私はこんなにもすばらしい友人に出会えたことに心から感謝した。そして、他人とは地獄なりとはよく言ったものだが、自分の身の周りにいる人の人生に責任をもとう、と決意するに至ったのだ。

そして、自分が今までなんて「自己中心的」なものの考え方をもっていたかということに気づかされた。



人と真剣に向き合い、その人に責任をもつ


脱無縁に向けて、今日から、明日から始められる個人としての行動は、人と真剣に向き合い、その人の人生に責任をもつことをしんどいけど実践していくことではないか?

そして忘れちゃいけないのが、コミュニティに所属していて一見、無縁ではなさそうな人も、精神的無縁に陥っている人もいるってことだ。要するに、責任や真剣さのないコミュニティにしか所属できていない人がいるってこと。そういう人も実際は無縁人だ。


無縁社会化している日本の社会構造をシステムから変えていくことももちろん重要なんだけども、そんなことを待ってる時間的猶予は、ない。

個人レベルでできることも多いから今すぐできることをやっていきたい。




新しいコミュニティ



今回のNHKスペシャルでは取上げられなかったけど、若者は新しいコミュニティを作りはじめてる。

陸上選手が、トラックを1周し、「住む人」から「逃げる人」にバトンをわたした後、第2周目は、「逃げる人」から「創る人」へのバトンが渡される。そんな段階に突入しているのではないか?


私の友人は、若者が学び合うシェアハウスである「まれびとハウス」をオープンした。

ここでは日々、起業家や学生が集まって自分たちの不安の共有そして未来への展望を語る場になっている。先日私もお邪魔してきたが、とてもいいコミュニティになっていると思う。

また以前伺った、コレクティブハウジング社は多世代住居を可能にするシェアハウスの試みを実践されている。


どちらも、擬似家族というコミュニティを創りだす試みだ。


「創る人」は閉ざされたコミュニティをつくるわけでもないが、自分たちがいかに精神的に不安定な生き物であり孤独に耐えることができない弱い存在かを認めたうえで、それでもなおクリエイティブに活動できる場を自ら創造しているのだ。


たった1人の人でもいいから、その人の人生に責任をもつ。

たった1人の人でもいいから、真剣に向き合ってみる。


その1人が家族であろうが、友人であろうが、恋人であろうが、ネットで知り合った人であろうが、関係ない。


心配かけたっていいじゃない。

そのかわり自分も人の心配を引き受ける必要があるけどね。

それはお互いさまなんじゃないかな。

かっこつけんじゃないよ、みんなウンコすんだよ。

そんなに人間強くないしかっこいいもんじゃない。



追記

以前脱無縁社会に向けて、ネット縁の可能性を議論した。⇒コレ。

今回のNHKスペシャルでは、ツイッターが取上げられてたが、情報縁だけで話しが終わってたのが残念!

情報縁からリアル縁にまで発展する姿を描かないと!それが今起きてるんだから。

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以上。