ちょくちょく拝見するこちら様では、常々国内経済の元気のなさ、国民の危機感のなさを憂い、「若く荒々しい」アジアを中心とした新興国との付きあい方を、好むと好まざるとに関わらず考えていかなくてはならないという話をされています。
ところで、“プロスポーツが、経済学の仮説を検証する「自然の実験室」と呼ばれる”のであるなら、上記の論を一番反映しているスポーツのジャンルは、プロゴルフということになるのではないかと。
日本の男子プロゴルフトーナメントが、バブル期には41試合あったのに、いまや24試合にまで減ってしまった一方、アジアン・ツアーは、米メジャーやWGCを入れて41試合、純粋なアジア地域だけに限っても27試合と、試合数だけなら日本は抜かれてしまいました。
しかも2007年のツアーでは、Jakarta Mastersや、IRDA Johor Classic、Cambodian Openなどが、New Event として新設されている一方で、昨年YEヤンがT・ウッズに勝った HSBC Champions などは賞金総額5,000,000ドルで日本のトーナメントを圧倒し、優勝賞金も833,300ドルと、日本国内の一流プレーヤーが1年かけて稼ぐ金額が一発でドドーンと出るという状況であります。。
まさに躍進するアジアの図が凝縮されてしまっているのですが、凝縮されているのは「躍進」だけではなくて、「荒々しさ」も一緒というのがアレなところで、日本ツアーでも活躍のインドのJMシンなどは、中国でのトーナメントで、ティーショットしたボールをギャラリーに持っていかれたり、動きがトロい競技委員がギャラリーに“カンフー・キック”を食らったりしたのを目撃したそうです。
で、今後ともアジア↑、日本↓なんでしょうか。もちろんツアーの話ですが。
まず、アジアンツアーですが、実はヨーロピアン・ツアーとの共催が結構あったりするんですね。だからほぼ国内資本だけでやってる日本ツアーと単純比較はできないし、アジアンツアーは大きくなったとはいえ、中身を見れば下駄履き部分がかなり大きいともいえます。
しかし見方を変えれば、アジアはヨーロッパと提携することで、よりトーナメントの価値を高めたともいえるわけです
だからツアー数のことを考えれば、日本ツアーもアジアンツアーやヨーロピアンツアーと共催するという道があります。国内資本のみでまだこれだけの規模で頑張ってるともいえるのですから、さらに外部と提携することで上乗せが望めるとなれば、そう悲観する話でもないと思います(実際に共催の話が進んでいるようです)。
しかしこれは、トーナメントに参加できる日本人選手の枠を狭めることになりますから、選手間の競争は必至であります。結果、シード権の無い選手の出場可能な試合数はますます限られることになるでしょう。この辺もアジアとの競争にさらされる現実社会と同じで、まさに「凝縮、実験室」でありますね。
で、そういう下位選手がどうしてるかというと、日本の下部ツアーだけでは食っていけませんから、逆にアジアツアーに出て行くわけです。アジアと日本の下部ツアーを行ったりきたりというパターン。この辺が逆に実社会で「凝縮、実験室」になってるかどうかはわかりませんが、こうしたキャリアの積み方は、かつてビジェイ・シンも同じ。
ジャンボや藍ちゃんを見てもわかるとおり、ツアーを救うのはスターの誕生、これが最も手っ取り早いのですから、厳しい環境下で育った日本版ビジェイが世界に羽ばたいてくれることを期待したいものであります。
もっとも「強い選手の誕生は厳しい環境から」という考えが必ずしも正しいわけじゃないのが、ゴルフ界のみならず、スポーツ界の現状なんですけどね(むしろ個人スポーツならエリート育成スタイルの方が結果は出そうな感)。
ところでこの話、週刊ダイヤモンドの特集以前に下書きしてたものでして(提出できる証拠は無いのですが)、結果的に内容が似通っちゃってるのではありますが、普通の社会人レベルで、考えることはだいたい同じなんだなということでよろしくひとつ。。