kochikika ノート

旧「こちら某中堅企業企画室」。リーマン話、時事の話、パリーグ話など。ぼちぼちやってます。

経済成長論議とイノベーションに思う話

2006-11-07 23:00:49 | 産業紙から

ともにアルファブロガーであり、よく拝見するこちら様こちら様との間で、経済成長の是非論がたたかわされておりました。

大雑把に言って、前者は経済成長の中身を問い、今のままの定義ならイラネと仰り、後者は成長を放棄することの大きな弊害(失業など)を考えよと仰っています(なお、現在のところ議論は収束しています)。

当方のスタンスは当然後者なのですが、本日のフジサンケイビジネスアイに、この議論の回答ともいうべき寄稿記事がちょうど良いタイミングで出てましたので、概要を紹介することとします。

寄稿したのは東大の吉川洋教授で、内閣の経済財政諮問会議のメンバーでもいらっしゃいます。タイトル「「人間力」が高い経済水準の源」。某サッカー指導者みたいな言い方ですが。。

○安倍政権は、経済成長路線を歩もうとしている。だが人口減社会の中でそれが可能なのか

○もし労働者が1人1本ずつシャベルを持って道路工事をしているような光景を思い浮かべる人は、生産量と働き手の数がほぼ比例するので、人口減社会での成長は無理だと思うだろう

○しかし戦後の高度成長期を振り返れば、1955年から70年までの間、日本経済は平均10%の成長を遂げていた

○その間の労働人口の伸びはどうだったかというと、1%である

○10%と1%の差である9%は、労働生産性の上昇によってもたらされた

○そしてその労働生産性の上昇は、資本(機械など)とイノベーション(技術革新)によって生み出された

○具体例として、自動改札になった駅の改札、一昔前の「食堂」の定食と、現在の高級フレンチの比較など

○料理人がノウハウを身につけ、うまい(付加価値の高い)料理をつくるというのも立派なイノベーションだ

○このイノベーションこそ、先進国における経済成長の核であり、労働人口よりはるかに高い影響を及ぼすのだ

○もうひとつの事例がフランスだ。フランスは1870年~1913年には隣国ドイツの人口成長率が1.2%だったのに対し、0.2%、1913年~50年には0%にまで低下した

○にもかかわらず、今日のフランスがあるのはその文化・技術、つまり「人間力」のおかげだ

○先進国の経済成長の源は、人の数ではなく、こうした「人間力」である

この線でいくと、経済成長を否定することは、「人間力」の否定、つまり料理人がノウハウを身につける努力を放棄し、自動改札機の開発といった企業努力を否定することに繋がってしまいます。
そういうことですので、当方もやはりこれは否定してはいけないだろうと思うわけであります(まさに人間の問題)。

ところで上記吉川先生の論は、商品やサービスを提供する供給側のことのみを言っていて、これだけでは片○落ちというか、例えばスラム街で高級フレンチの店出してもノウハウが無駄になるわけで、相応の消費や投資といった需要も必要になります。

供給側の話に偏る人も多い中で、吉川先生は需要面も重要だと仰っています。そして需要を起こすのも、イノベーションであるとしています。
平たく言えば、人々が財布の紐を緩めるような技術革新が求められると解釈できます。

例えば、こんなのとか、こんなのとか、こんなのとかが開発されれば(リンク先はドラえもん関連サイトです)、財布の紐も緩むでしょうし、付帯するビジネスも拡大するだろうと。

ただ当方、環境関連でメシ食ってる会社の事務リーマンでありますが、そういう身から発想すると、あまり技術革新に過大な期待をするのはどうなのかなと思ったりもするのですね。

今こそ国際競争力ある日本の省エネ技術の出番だ、という論調は多く見かけて、それはそれで正しいのですが、いくらダボス会議でボノやビル・ゲイツが貧困撲滅を叫んだところで、途上国が今の中国みたいな成長を果たしたら、日本が省エネ技術で儲ける前に国土が水没してしまうんじゃないのと(CO2温暖化主犯与太説はさておき)。

ちょっと話がでかくなりましたが、人々の欲求、需要とそれに応える技術革新のスピードの問題ですね。
例えば本当は石油に代わるエネルギー源が見つかってなきゃいけないと思うのですが、採掘技術は上がっても、送電ロスゼロの超伝導技術はまだ実用レベルに至っていないし(砂漠で太陽光発電→送電とか)。

だからこそイノベーションが必要であって、その芽を摘むような成長無用論は慎むべきとも言えるのですが、冒頭の話で経済成長に懐疑的な見方をした論客が技術屋さんであることは、この線に通じるのかなとも思ったりもしました。

そういうことであるので、当方としては過度にイノベーションに依拠することなく、まあ財布の紐を緩めさせるとしたら、この国の場合は高齢者のそれなのだから、テク無しの方策を上手い具合に考えてもらって、よろしくひとつ。。



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