庭木師は見た!~ガーディナー&フォトグラファー~

庭木師が剪定中に見たあれこれ。

庭木師は見た! ~人間失格~

2023-07-01 14:21:06 | 日記

         

 

        「人間には

行方不明の時間が必要です。

なぜかはわからないけど」

          (『行方不明の時間』茨木のり子)

 

 この赤紫色の植物は、「バーベナ・ボナリエンシス」という名前で、この地では5~6月ごろ、あちらこちらの道ばたに咲いている。先っちょが3つに分かれており、筆者はこの地に来て最初に見かけた時、その形状に強い印象を受けた。

 筆者らは3人ひと組で、殺虫剤散布の仕事もしている。トレポンという薬を溶かした大きなポリタンクを軽トラに積んで、各家庭を回っているのだ。ある日、撒いた霧状の薬が風に流され、畑仕事をしていたその家の老婦人にかかってしまった。注意していたのだが。

 その老人、顔をしかめて「…コロナの殺菌をしてくれたね、有難う」と。

 申し訳ないと謝った時、ふと、庭先にバーベナ・ボナリエンシスが咲いているのを目にし、「あの植物、売ってもらえませんかね」と口にした。その時、この花が雑草だとは知らなかったのだ。 

 3本欲しい旨を伝えたら、夫人は「じゃ1千円」というので、それでは、と1,500円払った。夫人は無表情で受け取っていた。

 


庭木師は見た! ~人の妻~

2023-07-01 07:38:53 | 日記

          

「見ても食えぬは 描いた餅よ

 焦(こが)れて添えぬは 人の妻

                       (朝鮮の民謡)

 

 旅館に隣り合った小さな庭。赤い花を付けた庭木を剪定していたら、「その花は椿? それとも山茶花?」と、同僚が声をかけた。

 答えられずにいると、「それはサザンカ」と、ベテラン庭木師の声。「…ツバキとサザンカの違いは見てすぐ分かるようにしておかないと」と続けた。

 同僚が旅館を見上げてつぶやいていた。「さざんかの宿だな。

 

 


庭木師は見た! ~人の妻~

2023-07-01 07:38:53 | 日記

          

「見ても食えぬは 描いた餅よ

 焦(こが)れて添えぬは 人の妻

                       (朝鮮の民謡)

 

 旅館に隣り合った小さな庭。赤い花を付けた庭木を剪定していたら、「その花は椿? それとも山茶花?」と、同僚が声をかけた。

 答えられずにいると、「それはサザンカ」と、ベテラン庭木師の声。「…ツバキとサザンカの違いは見てすぐ分かるようにしておかないと」と続けた。

 同僚が旅館を見上げてつぶやいていた。「さざんかの宿だな。

 

 


庭木師は見た!~ラブフラワー~ 

2023-07-01 07:03:45 | 日記

         

 

  「夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ」

                                     (万葉集)

 

 5月初めの昼下がり。剪定依頼主の広い花畑を散策していたら、枯れかけたチューリップの道ならぬ恋を見てしまった。…左手背後の目も知らないで。