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ポールクルーグマン コラムの翻訳

2008年12月28日 11時45分10秒 | ポールクルーグマン

バラク うまくやってくれ  By PAUL KRUGMAN 2008.12.25

時代はかわる。1996年にビル・クリントンは、右派から執拗な攻撃をうけて、「大きな政府の時代は終わった」と宣言した。でも大統領に選ばれたバラク・オバマは、保護主義がもたらしたものへの嫌悪の波にものって、「政府をふたたびすばらしいものと」したいと言っている。

ただオバマが政府をすばらしいものにするまえに、少なくとも機能するようにはしなくてはならない。特に政府を改革(goo-goo)する必要がある。

意味がわからないといけないので言っておくと、政府を改革する(goo-goo)とは、古きよき日のことばでgood governmentの略語で、腐敗や収賄の対極にある改革者をしめしている。フランクリン・ルーズベルトはなみはずれた政府の改革者で、政府を大きくするとともにきれいなものとした。オバマも同じことをやる必要がある。

いうまでもなく、ブッシュ政権は、政府を改革することのこれほどの反対例をあげたくてもあげれないほどのものだ。ブッシュの後援者たちは政府がうまく統治しているかとか正直にやってるかなんてことは気にかける必要はなかった。仕事で失敗しても(しょっちゅうそうなっていたが)、その失敗こそが、政府は小さくするべきというイデオロギーが正しいことの証明で、公共部門では何ひとつ正しいことはできないんだという実証になっているというだけでよかったんだから。

その反対に、オバマ政権では1930年代にニューディールに直面したのときわめて似た状況にあるといえる。

ニューディールのように、次の政権は政府の役割を大幅に拡大し、不調の経済をすくわなければならない。そしてニューディールのときとおなじように、オバマのチームは政府のやっていることにけちをつけようとして腐敗や不正の兆候をつかむ、あるいは必要ならでっちあげるような政敵に対抗しなければならない。

フランクリン・ルーズベルトは、こうした不安定な政治状況をぶじにのりきって、政府の役割を大きく拡大したにもかかわらず政府の評判はよくなった。全米経済研究所が最近出版した研究ではこう書いている。「1932年以前は、公的福祉の管理は政治的に腐敗していると思われていた」。そしてニューディールの大規模な福祉プログラムは「歴史上、腐敗にとってはまたとない機会を提供した」。ただ「1940年までには、腐敗と政治的な詐欺の告発は、ものすごい減少を示した」

いったいどうやってフランクリン・ルーズベルトはこの巨大な政府をこんなにきれいにしたのだろうか?

その答えの大部分は、ニューディールプログラムには最初から、監査がもりこまれていたことにつきる。とくに作業進捗管理部門は力を持っていて、詐欺の申告について専門で調べる独立した「調査作業部門」だった。この部門の働きはすばらしいもので、1940年に議会の小委員会が作業進捗管理部門を調べたが、ミスはひとつとして見つからなかったくらいだ。

フランクリン・ルーズベルトは議会が、収賄こみでないと経済刺激法案を準備しないこともわかっていた。作業進捗管理部門や他の緊急手段に資金を提供するようなひも付きの予算はそもそも存在しなかった。

そしてこれが大事なことだが、フランクリン・ルーズベルトには労働者階級のアメリカ人と感情的なきずながあった。それが経済を復興しようとする試みをとりまいていた、避けられない副作用や失敗をのりこえて政権がやりとげられた理由だ。

オバマのチームは何を教訓にすればいいのだろうか?

第一に、政権の経済復興プランは、ピカピカのものでなければならない。純粋に経済のことだけを考え、刺激策が迅速に機能するようには近道が必要かもしれない。でも政治の状況は、どうやってお金を使うかには細心の注意が必要だと言っている。そして実行こそが肝心だ。全体の査察は強力なもので、独立した機関でおこなわれるべきで、内部通報者はブッシュ政権で罰せられたのとは正反対に、報いられなければならない。

第二に、プランは本当に収賄がないものとしなければならない。副大統領のジョセフ・バイデンは、プランは「クリスマスツリーにはならない」と約束している。新政権はこの約束をまもらなければならない。

オバマ政権と民主党は全体として、フランクリン・ルーズベルトが大衆ともっていたようなきずなを、全力を挙げて作り上げる必要がある。オバマの現在の高支持率は、やってくれるだろうという期待に基づいていることを忘れてはいけない。物事がうまくいってないときでも、かわらず支えてくれるような確固たる支持基盤が必要なのだ。

そして言っておかなければならないが、民主党はこの点では出だしからつまづいている。キャロライン・ケネディーが上院議員なるように計画することは、40年にわたる保守プロパガンダの「リベラルのエリート」を非難するものの思う壺といっていい。そしてこれは僕だけじゃないことは確かだろうけど、オバマが借りた贅沢な海辺の別荘でのレポートには顔をしかめずにはいられなかった。そりゃあ、大統領の家族がすばらしい休暇を送ってわるいわけじゃないが、象徴的なこととして、何百万ものアメリカ人がお金でこまっているときに見せるべきイメージじゃないのは確かだろう。

うん、でもまだ時間はある。それこそが肝心なことだ。経済を復興するには時間がかかる。オバマのチームは、期待が高いときに、どうやったら仕事をやり遂げるのに十分な政治的な糧を蓄積して保管しておけるか、よく考える必要がある。


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