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バブルなしでやっていく By PAUL KRUGMAN 

2008年12月23日 20時05分13秒 | ポールクルーグマン

バブルなしでやっていく By PAUL KRUGMAN 2008.12.22

新しい政権が何をしようが、われわれは何ヶ月かは、いや一年は経済的にどんぞこにいることになるだろう。結局、オバマ大統領の経済刺激策、うん、政治的に正しい用語としては「経済復興計画」ではずみがついて、事態はよくなるだろう。来年後半には、経済は安定し始め、2010年に関しては僕は楽観している。

でもその後はどうなるだろう。いまはみんなが、そう、二年間の経済刺激についてはなしをしていて、二年は計画の期間としては理解できるものだ。僕が読んだほとんど全部の経済評論は、それで十分だって考えているようだ。一時的に赤字財政支出を急拡大させることで、すぐに経済をいつもどおりのものにもどせると。

ただ、実際のところは、事態はこの危機の前のようにもどることはない。僕はオバマ政権の人たちがそれをわかっていることを望んでいる。

ここ数年に起こったような、利益は膨大だったが、賃金はそれほどあがらなかった繁栄は、住宅バブルによるもので、それは以前の株式バブルにとってかわったものだ。住宅バブルがもどってこないから、危機の前に経済を支えていた支出も同じようにもどってこないというわけだ。

もっと事態を詳しく見れば、われわれが経験した住宅危機は最終的には終わったが、ブッシュ時代の盛大な住宅バブルはふたたび起きないということだ。消費者は最後には自信をとりもどすだろうが、2005-2007年に消費していたように消費をすることはないだろう。その時代には多くの人が自分の家をATMのようにつかっていて、貯蓄率はほとんどゼロになったんだから。

注意深い消費者と地に落ちた住宅業者がその任に当たれないとしたら、誰が経済を支えたらいいんだろうか?

皮肉たっぷりの紙面のオニオン紙のヘッドラインを数ヶ月前にかざったのは、いつもながらにすばらしいもので、このひとつの答えを示してくれた「不況に苦しむ国には新しく投資できるバブルが必要だ」と。民間の需要を満たすには何か新しいものが必要で、たぶん設備投資において明るい兆しが必要となる。

ただこの兆しは、大きなもので、設備投資をGDPのかつてないほど大きな割合まで増加させ、消費者や住宅で落ち込んだ分をおぎなってくれなくてはいけない。こんなことでもないと、ほかにあてにできそうなことはない。

回復を支えるルートとしてもっとありそうなことは、アメリカの貿易赤字の大幅な削減だ。住宅バブルがふくらむとともに、大幅に赤字も増加している。もっと他の国にものを売り、アメリカ産の製品で収入を得れば、消費や投資で増加がなくても完全雇用を達成できる。

ただ住宅バブルの破裂を埋め合わせるまでに貿易赤字が改善するには長い時間がかかるだろう。ひとつには、輸出の伸びは、ここ数年はよかったのだが、すっかりとまっているし、その理由のひとつは国際的な投資家たちが過敏になって、安全そうな資産へとにげこみ、ドルは他国の通貨にくらべて高くなり、アメリカ製品が価格競争力をなくしてしまっているからだ。

そのうえ、ドルがふたたび下落しても、輸出を急増させて輸入競争できるような製品を製造できる能力はどこからやってくるのだろうか? サービスにおける貿易は増加しているが、世界貿易のほとんどはいまだに製品によるもので、ほとんどが工業製品によるものだ。アメリカの工業製品の分野は、長年の不動産や金融業界がえこひいきされる一方で無視されていたので、多くの点で追いつかなければならない。

とくに、世界の大部分はアメリカの貿易赤字が急激に小さくなることに対処する用意ができていないだろう。僕の同僚のトム・フリードマンは最近、とくに中国経済の大部分は、アメリカへの輸出で成り立っており、それをかえるのにはかなりの困難がともなうだろうと指摘している。

結論は、財政政策がなければわれわれの経済が復興するのは難しそうだ、しかも延々と時間がかかりそうだというところに話をもどそう。僕が言ったとおり、オバマ政権の人たちがこのことがわかっていればいいんだが。

今や経済はどんどん落下していくままで、みんなが大不況2.0に戦々恐々としている。連邦政府の強力な力に反対することには、支持は集まりにくい。共和党院内総務のジョン・ボーナーは、自分のウェブサイトをつかって「信頼にたるアメリカ経済学者」が「刺激策に懐疑的」な人物のリストに名前をのせないかを捜し求めるまでになっている。

ただいったん経済が上向けば、新政権には松葉杖をほうりなげろといったプレッシャーはどんどん強くなるだろう。でもあまりにすぐに新政権がそのプレッシャーにまけてしまうようだと、フランクリン・デラノ・ルーズベルトが1937年にやってしまった失敗を繰り返すことになってしまう。1937年にルーズベルトは支出をけずり、増税し、アメリカが大不況へと落ち込むのを後押ししてしまった。

ポイントは、アメリカがバブルなしでやっていけるには、ほとんどの人が考えるよりずっと多くの時間がかかるということだ。そしてそれまで、経済には政府の助けがうんと必要になるだろう。



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