ぶろぐのおけいこ

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三岐鉄道 北勢線

2023-08-20 18:09:58 | PiTaPaより遠くへ

 昨年、桑名にやってきたときに、北勢線の黄色い電車には気づいていました。近鉄やJRの桑名駅の東側にあるのに西桑名と名乗るのはなぜかも調べがつきました。でも、まさか北勢線に乗りに来るだろうとは思ってもいませんでした。

 このお話のスタートは三岐線の伊勢治田駅。何も思わず駅舎を出てしまいましたが、以前NHKの番組で、三岐鉄道のどこだったかの駅に住まいし、駅員として働く女性の話題を見た記憶があります。この原稿を書きながらふと思い出して、検索をしてみたら、なんとこの伊勢治田駅の駅員さんだったことがわかりました。いつも、後で気づくんですよね。

 ここから北勢線の阿下喜駅まで2km弱。20分ほど歩けば到着するはず。駅前はクルマが旋回できるくらいの広さになっています。私が駅舎から出たとき、いなべ市の福祉バス(ハイエース)が駅前にやってきました。私はよそ者ですから、バスには無縁な振る舞いをしていました。バスは乗る人がいないのを確認して、出発しかかりました。ところがなんということかそのバスがバックしてくる。運転席の窓が開いて、どこまで行くのかを聞いてくるのです。阿下喜まで歩くつもりだと答えました。すると乗っていけというのです。私はよそ者ですからと固辞したのですが、無料だ、乗っていけと誘われ、福祉バスのお世話になりました。車内には地元の女性客が一人。福祉バスですから、町中を細かく回って、阿下喜に到着。汗もかかずに到着です。いなべ市のご厚意で、市に何の縁もない私を運んでいただきました。ありがとうございました。こういうことがあると、一気にその土地を好きになってしまいます(チョロいもんやな)。

 着いてびっくり。同じ会社の駅かと疑うくらい今まで見てきた三岐線の駅とは趣が違う。駅前も整備されていて、三岐線の昭和の雰囲気と比べていえば、令和の駅(2006年に新しくなった駅舎ですから平成というべきですが)。

 自動改札機がある。ということは例の日付スタンプ式のパスは改札機を通らないということになります。パスに書かれた案内によれば、北勢線13駅のうち有人駅はたった5駅。ということは有人化率38%。三岐線ではえーと、15駅のうち14駅が有人駅なので有人化率93%。この違いはなんでしょう。車両もびっくり。

   古いは古いのですがラッピング車両。三岐鉄道は黄色い車両だと思っていたのですが黒い。サッカーボールチームの「ヴィアティン三重」関連のラッピングだそうです。のどかなナローゲージとはまったく別の精悍な黒っぽい電車です。ホームの西隣には軽便鉄道博物館と書かれた場所があり、近鉄色の車両が一両置かれていました。この博物館は月に2度開館されるらしいです。これも貨物鉄道博物館同様に、ほかにはないものですね。

 何しろナローゲージ(線路幅が762mm)というのは、全国を探しても3社しか残っていないのでそうです。三重県内に2社(どちらも元近鉄の路線ですね)と、黒部峡谷鉄道の3社のみ。四日市あすなろう鉄道は、ずっと昔、近鉄内部線時代に乗っていますので、後は富山県。これの乗車はなかなか難しいです。

 ものは考えよう、整理のしようですね。駅には「日本最西端のナローゲージ駅阿下喜駅」と書かれています。確かに。ナローゲージの最西端ではある。うん。そのナローの黒い電車に乗ってみましょう。駅員さんに声をかけてパスを見せ、ゲートを開けてもらいます。ホームで待っている黒いヤツは4両編成ですが、冷房装置がついているのは西桑名寄りの3両。阿下喜寄りの1両は非冷房車。扉の上に「非冷房車」とはっきり書いてあります。「弱冷房車」は知っていますが、この「沸騰」する季節にまるで誇るように。当然、この車両だけ窓が全開。扉もこの車両だけ開いている。非冷房車から乗り込んで、先頭車両まで歩きます。涼しいのはありがたいと思いながら車内を観察すると、冷房装置が屋根上でも床下でもなく、車両の隅っこスペースに鎮座しています。後付けの証拠でしょうかね。

   車内幅はどれくらいかというと、ロングシートですから、私が座ってお尻を前に出し、足を投げ出すと前方のシート足元に届くくらい。かわいらしいといえば、かわいらしい。線路のポイントが模型みたいです。阿下喜を出発してしばらくは森のトンネルをくぐって走る。カーブも多い。ナローゲージは速度も輸送力も落ちますが、少ない費用で敷設してちょこまか走れるのが魅力でしょうからね。もっと細かく停車するのかと思いましたが、案外駅間が長い印象があります。特に阿下喜駅を出てから数駅分が長いようです。全線20.4kmで13駅。小学生の算数の知識を使えば、平均駅間1.7km。三岐線が26.6kmの15駅で平均1.9km。ちょこまか走る割には駅間が長いですね。

 右側に田んぼの緑が見えてきて、名所であるめがね橋、ねじり橋もここだろうと見当がつけられました。これらの橋を超えるあたりから、住宅地の間を走ることになります。通過する駅の駅舎も三岐線よりも近代的になります。

   券売機も自動改札も駅舎も近鉄時代に近代化されたということでしょう。

 星川で一旦下車してみます。三岐線ではほとんど見られなかった1面1線です。やはり、パスを駅員さんに見せて改札を開けてもらいます。かなりの町中で、商業施設や飲食店等が並んでいます。北勢線でもパークアンドライド(鉄道利用者は駅の無料駐車場を利用できる)を実施しているようです。

「三岐鉄道90周年記念事業 90年の歩み」には次のように書かれています。

 当初北勢線は2003(平成15)年3月で廃線となることが決まっていたが、路線存続を願う多くの沿線住民の期待と地元自治体からの強い要請に応え、三重県や沿線1市3町(当時、合併により現在は桑名市、いなべ市、東員町の2市1町)からの支援を受けて、同年4月から三岐鉄道が運行を受託することになった。

 住民の皆さんは、乗らなきゃ存続できないということをよくご存じだということでしょう。

 昔、国鉄分割民営化の前に、特定地方交通線と分類されて多くの地方路線が廃止されたり第三セクターに移行されたりする時期がありました。第2次廃止対象路線(輸送密度2,000人/日未満の路線)として、国鉄足尾線(現わたらせ渓谷鐵道。群馬県から栃木県に向けて走る)もリストアップされました。当時学生だった私は足尾線内で、廃止を止めさせるために乗車しているという老人と話をしました。役所から切符代をもらって、乗車人数を稼いでいるのだと話してくれました。しかし、データの「盛り」のための乗車ではだめですね。好んで乗車する、喜んで乗車できる仕組みがなければ持続しませんね(もちろん、そのわたらせ渓谷鐵道は、数々の努力で1989年の発足以来34年間継続しているわけです)。

 ところで、三岐というくらいだから三重県と岐阜県を結ぶ…というようなことを書きましたが、現時点では三岐にならず三三鉄道です。三岐線、北勢線とも三重県を出ていません。もともと、関が原まで結ぶ予定で社名がつけられたそうです。

 待合室で過ごして次の電車で西桑名に向かいます。住宅の間を縫って近鉄線、JR線をオーバークロスしたら西桑名に到着。これで(乗車できる)三岐鉄道全線に乗ったわけですから任務は果たしたことになります。始発駅で1面1線って珍しいですね。もともとの始発駅でない証拠でしょうか。駅員さんは忙しそうなので、パスを手にもって自分で(手動の)改札口を開けて出ます。しかし、かわいらしいナローにもう少し触れていたい。西桑名駅で電車を待ちます。

 このホームから見える電車の景色は面白いですね。近鉄名古屋線の特急だけでもたくさん種類があります。さらにJR線。こちらには貨物列車もありますからね。待ち時間が楽しい西桑名駅です。

 蓮華寺駅まで1往復。ここも1面1線。無人駅でした。例のパスでこの駅を乗り降りするためには、改札口横のインターホンで、パスをカメラに見せて自動改札を開けてもらうという仕組みです。

 三岐鉄道。軌間だけでなく雰囲気もまったく違う二線があって楽しいところです。

(2023年7月訪問)

 


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