無題1.2
初春の二日続きの晴れ晴れしい空に今年の思いを託して
生と光 高瀬俊郎
翼搏(はばた)くごとく夕暮の灰色は
先づ空より消え去りて、
しろかねを撒く月こそ出てたれ。
なやめる生の傍に螢のごとく
輝きそむる靜かなる戀。
木がくれに咲く椿の花は散りゆけども
思ひは遠く空に通へり。
愛人(よきひと)よ。いまははた何を嘆かむ。
戀するものの五月の歡びは
薔薇色の叙情詩にもつれもつれて
はるかなる「あなた」より生れ來るを。
過ぎし日に落しし涙
われらが胸にあたたかく蘇り、
接吻(くちづけ)の後のつかれもいと安し。
再生のわれらが生命
あけぼのの船の如くにすべりゆく。