地域の図書館で目に留まったので借りて読みました。少し前に話題になった本です。ローワン・ジェイコブセン著、中里京子訳、文藝春秋出版(2009年)。文庫本でも出ているようです。著者は食や環境問題に関するライターで、原題は "Fruitless Fall”(実りなき秋)で、ハチがいなくなったら果実の実らない秋が来るという警鐘をならしているのです。レイチェル・カーソンの有名な”Silent Spring”(沈黙の春)を意識しているのは明白で、邦題も「実りなき秋」の方が良かったのではないかと思いました。
内容は、2007年に始まった米国での蜂群崩壊症候群(Colony Colapse Disorder; CCD)と呼ばれるミツバチの大量死の原因を追及するドキュメンタリーです。始めに、ミツバチの生態や現代の養蜂業について詳しく書かれ、それだけでも興味をそそられました。私たちの食卓に上がるパン(コムギ)、野菜、フルーツなどがいかにミツバチ(などの花粉媒介者)のお世話になっているかを思い起こさせてくれます。また、米国のような大規模農業にあっては、自然の蜂だけでは授粉が間に合わなくて、養蜂業者に蜂をつれて来てもらって広大な農園(カリフォルニアのアーモンド農場について詳しく書かれています)に蜂を放して授粉させていること、それが養蜂業者の経営上も大いに助かっていることなどに驚かされます。米国の養蜂業は、フロリダのオレンジ栽培が南米産に押されて衰退したため、オレンジの蜂蜜が採れなくなったこと、あるいは、安価な中国製の蜂蜜に押されて、経営が成り立たなくなりつつあるからです。しかし養蜂業者は、ミツバチ貸し出し料を得る代わりに、効率化を目指したアーモンド農場での過酷な労働を強いられたミツバチは弱ってしまい、生還できない「カミカゼミツバチ」となるリスクも負っているとか・・。
CCDでは、巣箱に幼蜂と女王蜂を大量の蜂蜜と共に残して、働き蜂が失踪してしまう。ハチの死体も見当らない。謎の失踪事件を追うミステリーは、いまだに未解決のままのようです。犯人の候補としては、ミツバチを襲うミツバチヘギイタダニ、それを退治するための殺ダニ剤、ウィルス感染、農薬(イミダクロプリドやネオニコチノイド系など)などが挙げられていますが、いずれも否定的な結論になります。花を求めてのトラックでの長距離移動、過酷な労働によるストレスも含めて、原因は一つではなく複合汚染、その結果、免疫系が損なわれたり、神経系に障害がおきて、ミツバチは自分の巣に戻る方角を見失ってしまうのではないか? 著者はそんなふうな考えているようです。
長くて、終わりの方はちょっと疲れてしまいましたが、いろいろ考えさせられる本でした。
何回かコメントを書きましたがちっともうまく
いきません。
コメント、ちゃんと書き込まれています。
次回のコメントをお待ちしています。