切れ切れ爺さんの徒然撮影&日記

主に寺院や神社等を中心に、文化財の撮影と紹介。
時に世の中の不条理への思いを発言していく。

融雲寺・唯心寺 京都市伏見区・・・お向かいさん

2020-10-20 22:20:56 | 撮影

融雲寺



 融雲寺は京都山科盆地の中央部にあり、醍醐寺のすぐ南側にある。周囲は住宅地であり全体的に静かな雰囲気の地域だ。このお寺についての情報は手持ちの資料やネット上においても全くと言っていいほど見当たらず、どうにもこうにもしようがなかった。
 お寺そのものは山門から境内、本堂など一通り揃っており綺麗に整えられた樹木が目の前に広がり、なかなかいい雰囲気だ。
 このお寺は「浄土宗西山禅林寺派」に属するいわゆる浄土宗のお寺であり、いわば一般的なお寺の一つとなる。以前、ある浄土宗のお寺で住職さんから京都市内だけでも浄土宗のお寺は500以上あると聞かされたのを覚えている。なぜこんなにも浄土宗のお寺が多いのか。少し調べてみたがどうにも話は複雑で非常に分かりにくい。
   
 浄土宗はもともと法然が起こしたものであり、それまでの仏教の難しい経典の内容、教義などを一般庶民にも分かりやすく普及させようと努力をした。しかし法然亡き後弟子たちが同じ浄土宗でも、その教義の解釈の違いから小さな派閥に分かれて行く。それで良しとする者やあるいはやはり違うのではないかという僧たちが次々に現れ、さらに分派していくことになる。
 大元の浄土宗そのものは一時衰退の憂き目に遭いかけるが、江戸幕府が開設され徳川家康が浄土宗を守り信頼することによって大きく勢力を伸ばすことになった。しかしその後も分裂が続き、上記のように西山派、禅林寺派、あるいはそれらを合体したような名前の派を含め多数に分かれて行く。しかし宗派による庶民への仏教の理解を進めるために、各地域ごとに次々にお寺が創建され、その地域の人々の信仰の場だけではなく、集まりの場、あるいは学ぶ場等として、人々の生活の中に組み込まれていく。そういった意味では浄土宗の小さなお寺が数多くあるのも当然といえば当然だし、その果たした役割は極めて大きいと言える。
 別名浄土真宗とも呼ばれるが、親鸞がが起した浄土真宗とは別だ。江戸時代を過ごし、明治維新後、廃仏毀釈の動きなどがあったが、それでも浄土宗はしぶとく民衆の間に広がり、明治・大正・昭和を経てさらに分派が行われ、ずいぶん複雑なものになってしまっている。
 しかし江戸時代に浄土宗の総本山として「知恩院」が位置づけられ、その元に大本山として、金戒光明寺や東京の増上寺、長野の善光寺などが各地域の大本山として 役割を果たしていくことになる。さらにその元に本山があって、謂わば全体がピラミッド上の階層構造になっている。本山あたりまでは比較的名の知れたお寺があるが、地域密着の一般的な浄土宗のお寺については、何らかの理由によって有名になったというようなお寺は特に聞かない。
 このようなお寺は一定の年月が経つと建物自体が老朽化し、地域の檀家からの寄付なども含めて本堂などの立替が行われ、実際に訪れても何やらわりと新しそうな本堂だなと感じさせるものが多い。そういった意味では観光寺院というわけではなく、地域の人に開かれたお寺であり、遠くから来た人が本尊の阿弥陀如来を拝観させてください、というものではないのだろう。したがって浄土宗の一般的なお寺はどこを訪れても、ほぼ似たような印象になる。
   


唯心寺



 融雲寺の向かい側にある。こちらも浄土宗のお寺であり、知恩院の末寺となる。地域密着の寺院とはいっても同じようなお寺が、住宅地の道路を挟んで向かい側にあるというのもどうなんだろうか。もちろん融雲寺にしろ唯心寺にしろ、創建時からこの場にあったとは限らない。別の場所にあったものが、様々な要因でこちらへ移ってきた結果なのかもしれない。
 こちらも境内等よく整備されており、本堂も小ぶりのものながらどっしり構えている。拝観する方としては同時に2か所を訪れることができるので便利は便利だ。しかし地域の人々にとってみれば、同じ浄土宗のお寺が向かい合っているというのは、檀家さん達はどのように判断しているのか。
 こちらのお寺の宗派はわからなかった。そこに違いがあって地域の人々もそれに従って別れるんだろうか。それにしてもあまりにも多くの宗派に分かれているというのは、一般庶民にとってみれば、どこがどう違うのかというのはほぼわからないものだろう。そんなことを思いながらも写真を撮らせて頂いてお寺を後にした。

    
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