未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第21章 同じ時を生きる君に ①

2021-02-28 14:34:47 | 未来記

2014-02-14

1.自分を信じるって…

 

うなだれたままのタケルに向かって、キララはこう言った。

 

「アンタが、自信ないのって、よくわかるよ!

 

耳が聞こえないって、人の言うことがわからないってことだろ?

 

でもさ。 聞こえても、人の言うことなんて聞かない奴、いっぱい生きてるよ!

 

アタシの言うことだって、聞いてくれない人ばっかりだよ!

 

…アンタ、アタシの言うこと聞こえてるンだろ?

 

アンタは自分を信じて、自分で未来を作ればいい!

 

アンタ次第で、未来が変わるンだよ!」

 

 

ヒロもじれったそうに、続けた。

 

「タケル!

 

お前だったら、何だってなりたいモノになれるさ!

 

オレも協力してやるよ!!

 

要はオマエ次第なんだ!

 

もっと、自信持てよ~」

 

それでも、タケルは自分に与えられた試練の前に、立ちあがる気持ちが持てなかった。

 

それまで、黙ってタケルとのやり取りを聞いていた少年のひとりが、話しかけてきた。

 

「ねぇ、ウェンディ。タケルにあの秘密の空間を見せてあげたら?

 

オレら、あれ見てから、気持ちが変わって、ここまでついて来たンだ。

 

忘れかけてたけど、今思い出したよ。

 

こんなオレでも、がんばって戦わなきゃって奮い立ったンだ。

 

タケルにも、アレ見せてやりたいよ、なぁ!」

 

少年達は、顔を見合わせてうなずいた。

 

キララは、少し考えてタケルに言った。

 

「そうだね。アレを見せてやればヨカったンだ。

 

タケルには、ちょっと早いと思って、後回しにしてた。

 

それじゃ、準備するか。 タケル、覚悟しなよ! 」

 

キララは、また呪文を唱え始めた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第21章 同じ時を生きる君に ②

2021-02-26 14:38:43 | 未来記

2014-02-21

2.ドコデ アエルノ?

 

ケンは、Mフォンでヒロとやり取りしていたが、キラシャに聞かれてはマズイことがあるのか、音声モードを使わなかった。

 

キラシャは、自分にもわからない、とんでもないことが起こる気がして、不安な気持ちでケンを見守った。

 

タケルには、今スグにでも会いたいと思う気持ちがある半面、もしタケルに何かあるようなら、このまま会わない方がイイのかも…

 

タケルへの想いが募り過ぎて、胸がキュンとなるような、複雑な思いでいっぱいのキラシャだった。

 

 

しばらくして、ケンがキラシャの方を向き、ニコッと笑った。

 

「タケルは、今、宇宙船に乗っているらしい。

 

やっぱり、あいつは耳が聞こえないってことが、相当ショックだったンだろうな。

 

でも、あいつならきっと、自信を取り戻せると思うよ。

 

うまくいけば、すぐにでも会えるかもしれないンだ…」

 

「ホント? でも、さっきケン言ってたけど、

 

タケル、宇宙からフォンの転送で帰ってくるの?

 

あれって、危険なンでしょ?

 

アタシは、海洋ドームからいきなり外海に転送されちゃったもンね…。

 

ドームのボックスと違って、宇宙で急に転送しちゃうと、

 

意識失うくらい苦しいこともあるらしいよ!

 

急がなくても、普通に帰って来ればイインじゃないの…? 」

 

「まぁな。オレもそう思うんだけど…

 

ヒロは、もう転送に使うMフォンを送ってるらしい。

 

あとは、タケルのやる気次第だって言ってた。

 

MFiエリアじゃ、勝手にMフォンで転送するのは、ルール違反だからな。

 

このエリアだと、もともとそんなルールがないンだって。

 

ヒロも、使うのなら今がチャンスだって言ってたンだ…」

 

「でも、やっぱりあたし、タケルが無事で生きててくれる方がイイ!

 

ヒロの実験台になって、身体壊すようなことになって欲しくないよ!!

 

今は、会いたいけどガマンできるモン。

 

いつかまた会えるンだったら、その時でもイイヨ! 」

 

「いや、オレにもよくわからないけど…。

 

ヒロが言うにはね、

 

今を逃したら、タケルがどうなるかわからないンだ…」

 

それまでじっと耳を傾けていたパールが、ケンの言葉をさえぎるようにたずねた。

 

「タケル カエッテ クル?

 

イツ? ドコデ アエルノ? 」

 

「そうだよ、ケン。タケルは、どこへ 転送されるの?

 

それだったら、あたし達もそこへ行かないといけないんでしょ?」

 

「まぁ、そうあわてるなよ。キラシャ、少し休んでた方がいいよ。

 

ヒロから、また連絡あるからな…」

 

パールのパパが亡くなったことで、歓迎会などの行事が明日以降になり、長旅で疲れている子供達をしばらくこの部屋で休ませることになっていた。

 

キラシャは、不安を感じながらも、ケンの言うとおりに横になって眠ることにした。

 

結局、タケルのことが心配で、キラシャは眠ることができなかったけれど…

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第21章 同じ時を生きる君に ③

2021-02-24 14:40:19 | 未来記

2014-04-05

3.秘密の空間

 

タケルの周囲が暗くなったと思った瞬間、

 

無重力の真っ暗な空間に、ポ~ンと放り出されたかと思うと、

 

近くで何かが爆発した。

 

 

その爆発の音の凄まじさに、タケルの耳の鼓膜が激しい痛みとともに、

 

パーンと破れたような感覚があり、

 

『もう、これでホントに耳が聞こえなくなるンだ…』と、タケルは覚悟を決めた。

 

 

その後も、どこかで爆発するたびに周囲が明るくなるが、音がまったく聞こえないので、

 

タケルはかえって冷静に、爆発の様子を見守ることができた。

 

 

そんなタケルに、キララが話しかけてきた。

 

「この爆発って、タケルが地球に帰ってから、すぐに始まるのさ。

 

これから起こることなンだよ!

  

アンタに会うのを待ってる女の子がいる。

 

キラシャだっけ…

 

アンタの友達、ケンと一緒にね。

 

 よっぽど、アンタのことが好きなンだろうね。

 

 

でも、アノ子、ケンにも心を動かされてるみたいだよ。

 

ずっとそばにいると、情が移っちゃうのかね。

 

 

まるで、アンタとアタシみたいだ…』

 

 

タケルの怒りが、爆発した。

 

 

『何言ってやがンだぁ!

 

よく聞け! オレは、オマエがだいっっっきらいなンだ!

 

人を操り人形みたいに使いやがって!

 

 

キラシャはな! 

 

オレに反抗した時だって、

 

オレの言い分が正しいってわかったら、

 

ちゃんと言うこと聞いてくれたぞォ!

 

 

オマエみたいに、何でも思い通りに人を巻き込もうなンて、

 

人の気持ちがわかンない奴に、何がわかるって言うンだァ!

 

オマエに未来が見れるって言うンなら、オレがその未来を変えてやろーじゃねェか!

 

オマエがどんな未来を見せたって、そんな未来なんてくそっくらえだ!』

  

『だからさ… 

 

このまンまじゃ、アノ子は爆発で死んじゃうンだよ!

 

ケンとかって、友達と一緒にね。

 

アノ子を助けられるのは、アンタしかいないンだ。

 

 

…でもね、アンタひとりじゃ無理だよ。

 

アンタさえやる気になれば、今は宇宙ステーションに戻りたいって言ってる子らも、

 

一緒に地球に行って、アンタを助けてくれるかもしれない。

 

アノ子らは、家族と宇宙の旅してる途中で、ゲームに夢中になってさ。

 

親からこっぴどくしかられて、置いてけぼりにされた子もいるっていうのに、

 

悪党に目つけられて、ゲームでせっかく獲ったポイントだって、はぎとられてさ。

 

挙句の果てに、あの連中の手先になって、コソ泥に使われるしかないのさ…。

 

 

アノ子らにも、この秘密の空間で自分の未来を見せて、

 

こんなことになンないようにって、言い聞かせたんだけどさ。

 

『こんなのウソだ! オレをだまして、働かして、オマエがカネをせびるつもりだろ!』

 

だってさ。 

 

けどね…。

 

アノ子らも、アンタと同じで、いずれアフカに行く運命持ってるらしい。

 

アフカは、アンタも知ってるだろうけど、今も戦争で殺し合いをやってるトコさ。

 

あるグループは、自分達の仲間だけじゃ人数が足りないってさ、

 

行き場を失った子供達をかき集めて、戦争が起こった時の兵士にしてンだ。

 

自分達のテリトリーを守るためにね…。

 

アノ子らは、身代わりに死ンでゆくのさ。

 

アンタが見ているこの爆発も、そのグループの仕業だよ。

 

これをホッとくと、アノ子らは鞭を打たれて、寝る間も与えられずに歩かされて、

 

戦争に駆り出されて、戦闘の盾にされて、銃に打たれて死んでゆくンだ。

 

アノ子らにも、あいつらのやり口を何度も見せてやったよ。

 

今まで犠牲になった子らが、どんな目に遭ったかってね…。

 

例えば、こんな風に…」

 

キララは、タケルにアフカの子供達が、大人に銃で脅され、暴行され、殺され、穴に次々に葬られるというシーンを3Dホログラムで見せた。

 

タケルは、女の子達が泣き叫ぶ中、次々に犯されては殺されるという、目を覆いたくなるような映像が流れるのを、歯を食いしばって、見つめた。

 

キララは、そんなタケルを見ながら話をつづけた。

 

「アンタは、平気かい…?

 

アノ子らは、ビビッて目をそむけるし、そんなはずがないって、反発してたけど…。

 

何しろ、戦争してないエリアで育った子ばっかりだからね…。

 

アタシが宇宙ステーションで起きる事故を予知して、それがホントに起きたからね。

 

アタシの言うこと、少しずつ聞いてくれるようになったンだよ…。

 

それにさ。

 

悪党連中の言いなりに、人の部屋に入って盗ンだものとか、

 

人のMフォンで買い物したものを、転売して金にするンだ。

 

たくさん稼いだって、全部あの悪党達に取り上げられるンだよ。

 

そのくせ失敗したら、ぶん殴られるしね…。

 

あんまりひどいことされるから、警察に届けようって、手もあったけどさ。

 

自分らもその手先として働いてたからね。

 

自分のやったことが警察にバレたら、捕まるしかないだろ。

 

何人もいたよ。奴らに連れて行かれて、帰ってこなかった子がね。

 

今残ってる子らも、あくる日にはいなくなってたかもね。

 

だからさ。地球に帰って、生きれるトコ見つけてやろうと思ったのさ。

 

…タケル。アンタはどう思う?』

 

 

『オレの知ったこっちゃないさ。

 

それに、本物の戦争してるトコだぞ!

 

そンなトコへ行く方が、よっぽど危ないじゃないか!

 

アイツ等だって、コレ見せて喜ンでるお前から逃げれた方が、よっぽど幸せだよ。

 

何だよ。人の運命がどうのこうのって…。

 

オマエこそ、自分の運命を変えりゃいいンじゃないか!

 

オレはゴメンだぞ! 

 

アイツらはあの宇宙ステーションに戻って、家族に会えばいいンだ。

 

何だったら、オレもさがしてやるよ!

 

その方が、幸せだよ!

 

オレは、まだ裁判も終わってないンだ。宇宙ステーションに帰らないとな。

 

地球へ行くのは、それからだ! 』

 

 

キララの『それでいいのか? 』という言葉が聞こえると、

 

いつの間にかタケルの周りが明るくなり、

 

元の宇宙船に戻っていた。

 

 

タケルの周りにいた男の子達は、みなタケルを見ていた。

 

「どうだった? 秘密の空間は…」

 

「怖かった? ウェンディは、時々オレら驚かして、おもしろがってンだ」

 

「ウェンディといたら、悪い奴から殴られたら、すぐ隠してもらえるし、

 

おいしいものも食べれるし、ゲームしてて楽しいけど…

 

怒られるたびに、あの空間見せられるンだ…」

 

「自分がこうなるって言われてもな。

 

まだ、子供なのに、銃持って戦わされるなンてな…」

 

「アフカじゃ、子供も武器持って戦わないと殺されちゃうンだ。

 

相手が怖い奴だと、ちょっとビビるよな…」

 

タケルは、てっきりあの爆音で耳が聞こえなくなったと思っていたので、少年達の声が普通に聞こえるのが不思議に思えた。

 

「別に。映画やゲームの方が、もっと怖い格好して、派手に血の出るシーンやってるさ。

 

オマエら、ナンであンなもの見せる、悪魔みたいなウェンディについてきたンだ? 」

 

タケルは、今までずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第21章 同じ時を生きる君に ④

2021-02-22 14:42:13 | 未来記

2014-04-05

4.地球を目指す理由

 

「オレ達が、地球へ行くって話か?」

 

「…タケルだっけ。それより、オマエはこれからどースンだよ? 」

 

「オレ達、一応、自己紹介してたンだけどな…。

 

オマエ、聞いてなかったろ! 」

 

「てか、耳悪くて、聞こえてなかったンじゃねーの? コイツ」

 

大きい少年達が、まるでケンカでもふっかけるような雰囲気で、タケルを挑発し始めた。

 

「オレたちゃなぁ。地球にいられなくて、家族で宇宙に出てきた奴らばっかりなンだ」

 

「まぁ家族旅行なンて、テイサイのいいこと言ってたけどさ。

 

家族ごと地球にいられなくて、出てきたのさ。

 

親に地球で仕事がないから、借金して宇宙で仕事見つけようってね。

 

正直、宇宙ステーションに戻って家族に会ったところで、先が見えねンだよな。

 

警察に、オレらがやってたことがバレたら、

 

子供でも、監獄みたいなトコに入れられるらしいし…」

 

「たとえ、そこから出て来れてもな。

 

親に会えるかわかんないし、借金できるかわかんないけど、

 

金があったら、親を探して旅を続けるしかないってわけさ。

 

 

でも、ウィンディが地球に帰ろって言うから、

 

オレ達だけで地球に戻ってでも、生きてくとこ見つけたらいいジャンって、

 

ちょっと期待してたンだ。

 

だけどなぁ…。

 

オレ達だけじゃ、信用ないよな…。

 

何しても、海賊みたいに疑われるだけだし…」

 

「親に暴力振るわれて、一緒にいたら命だってあぶねぇ奴もいるンだ。

 

 家族が他のトコに移って、オイテケボリの奴もいるし、

 

  誰かが、メンドウ見てやンないとな…」

 

最初は、威勢よく話し始めた少年達に、またケンカが始まるのか、とビビッていたタケル。

 

本音を聞いてみると、みんな悩みをかかえ、不安に思いながらも、仲間を助けようと思っていることがわかって、ちょっとホッとした。

 

「そうか。みんなも、先のことわかンないンだよな…。

 

オレだって、いつ耳が聞こえなくなるンだろうって、

 

それが不安で、気が狂いそうだった…。

 

でもさ…。

 

オレ、自分の耳が聞こえないことばっか心配してたけど、

 

オレの知らない世界で、もっとひどい目に遭ってる子がいるンだよな…。

 

オレと同じくらいの年の子が、大人に好き放題ヤラレテ、挙句に殺されるなンてな…。

 

何だか、耳が聞こえないくらいで悩ンでるのって、ちっぽけな気がしてきた。

 

 

オマエら、これから宇宙ステーションに帰って、どうするンだ?

 

オレ…、オマエらに、何かできることないか…? 」

 

タケルの問いかけに、少年達はそれぞれに思いをめぐらせた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第21章 同じ時を生きる君に ⑤

2021-02-20 14:43:41 | 未来記

 

5.タケルに会いに行こう!

2014-05-04

 

ケンがベッドから降りて、何かゴソゴソ始めたな~っと思ったキラシャが、急に眠気を感じてウトウトしていた時だった。

 

「キラシャ 起きるンだ!

 

会いたいンだろ? タケルに…」

 

ケンがキラシャの肩を揺さぶりながら、周りを気にした小さい声で言った。

 

キラシャはケンをしばらくボーっと見つめながら、今の自分の状況を思い出していた。

 

『そうだ、あたしは今、ケン達とアフカにいるンだ。

 

タケルは、宇宙にいて、地球に帰ろうとしているンだっけ…?

 

何だか、ヒロのおかげで、とんでもないことが起きそうなンだけど…』

 

ケンがキラシャを強くゆすぶったせいで、パールも目を覚ました。

 

「ヒロがせかしてくるンだ。

 

オレにこのMフォンを送ってきた。

 

たぶん、タケルはこれをたよりに転送してくるらしい。

 

ただね…。

 

オレもちょっとわかんないンだけど、転送してくるのはタケルだけじゃないンだ。

 

10人ぐらいの男子が一緒に来るらしい。

 

だから、広い所にいなくちゃならないンだ。

 

それにドームの中じゃ、ヒロはまずいって言うンだ。

 

なんだか、チョー危険な気もするンだけど…」

 

すると、パールが言った。

 

「ドームノ ソト ナラ

 

ワタシ ヒロイトコ シッテル

 

タテモノ バクハツ シタアト

 

イシ タクサン ノコッテル ダケ

 

ムカシノヒト スンデタ ケド

 

センシャ ヒコウキ コワレタ ママ

 

イマハ ダレモ イナイ

 

マワリ ヒロイ テツノ サク アル

 

キケンナ ドウブツ コナイ

 

ソコハ キット ダイジョーブ」

 

「オレやキラシャは身軽だから たぶん大丈夫と思うけど…

 

マイクはなぁ~? 」

 

ケンがマイクを見やると、マイクはイビキをかいて、おへそをポリポリとかいていた。

 

「マイクは置いてくか~ 」

 

パールも苦笑いしながら、ウンとうなずいた。

 

キラシャは会えるうれしさより、タケルが無事なのか心配で、身体も心も固まっていた。

 

ケンは、そんなキラシャをそっちのけで、パールとその場所の位置を確かめるために、Mフォンで3Dホログラムの地図を広げた。

 

ケンとパールが、ここからどうやってそこへいけばいいのか、ルートを試行錯誤しながら探していると、突然ヒロが送ってきたMフォンから声が聞こえてきた。

 

「バッカだな~

 

ケン! オレ言ったろ!?

 

アフカじゃあ、Mフォン使っても、別にルール違反じゃないんだぜ!

 

ケンとパールとキラシャさえ、その気になりゃ~

 

このMフォン使って、転送すればいいンだヨ。

 

まぁ、無理にとは言わないけど…。

 

でも、そのまま歩いて外へ出たら、時間がかかるし…

 

途中でバレて、たどり着けないかもなぁ~ 」

 

「ゲッ!? オレ達もオマエの作ったMフォンの実験モルモットになるのか?

 

オレ、そこまで考えてなかったヨ!

 

それに、パールは事故で入院するはめになっちゃったからさぁ。

 

無理してやったら、パールのママが心配で倒れちゃうよ!

 

やるンだったら、オレとキラシャぐらいだな。

 

キラシャだって、海洋牧場のことでコリてるみたいだけどな~ 」

 

ケンは、ちらりとキラシャを見やった。

 

キラシャも、ヒロとケンのやり取りは聞こえていたが、自分のことよりも、タケルことで頭がいっぱいで、どう答えていいのか、しばらく迷っていた。

 

しかし、キラシャは覚悟を決めたように、Mフォンに向かって声をかけた。

 

「ヒロ…。あんたのMフォン、信じていいの…? 」

 

ヒロは、自信たっぷりに「信じていいよ! 」と答えた。

 

キラシャは、ケンに向かって言った。

 

「タケルが、ホントにここへ来てくれるンだったら、

 

あたしもそのMフォンで、タケルが無事に着ける場所へ行ってみるよ。

 

だって、せっかくタケルが来ても、あたしがそこにいないとがっかりするでしょ?

 

ケンひとりに任せたりしたら、ケンだってタケルのこと怒ってたでしょ?

 

ひょっとして、ケンカになるかもしれないじゃない。

 

あたし、ケンとタケルがケンカするのだけは、やめて欲しいンだ!

 

2人とも大好きだし、2人とも仲良くして欲しい!

 

…ケンさえ良かったらだけど、あたしと2人で転送してもらえる?

 

ひとりだけじゃ、勇気ないンだ…。

 

ケンのこと、心の底から信じてるから、2人でタケルが来るのを待っていたい。

 

それで、いいかな…? 」

 

ケンは少し胸がキュンとなって、

 

『なんで、こんなかわいいこと言うキラシャが、オレの彼女じゃないンだろう…』

 

くやしい思いをしながらも、だまってウンとうなずいた。

 

ヒロは、妙にセキばらいをしてこう言った。

 

「Mフォンは、こっちから制御できるから、

 

2人とも安心して、目的地に着くことだけ考えとけばいいヨ! 」

 

キラシャは、ヒロの言葉にうなずいてから、パールに向かって言った。

 

「パールは、ここで待っててね。じきにマイクも目が覚めるだろうから。

 

タケルがこっちに着いたら、パールにも必ず会わせてあげる! 」

 

パールとキラシャは、お互いを見て微笑んだ。

 

ヒロがせかすように言った。

 

「よし、じゃあ急いで着替えてくれ。準備ができたら、合図をくれよ! 」

 

キラシャとケンは、あわててパジャマを脱いで、出かける服に着替えた。

 

「OK! 準備できたよ! 」

 

「それじゃあ、深呼吸して~。はいっ、送るよ~」

 

キラシャとケンは手をつないで、呼吸を合わせながら目的地へと消えて行った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする