13.オレら、被害者だったンだぜ!
ケガをして縄で縛られた男達は、後でやって来る護送車に収容されるという。
タケルと少年達は隊員に手錠をかけられ、軍の輸送機に乗り込んだ。
しかし、キララは姿をあらわさなかった。
『きっと、見えないところでオレらのことを見てるンだろうな…』
少年達は、皆そう思いながら、これから自分達がどうなるのか、見当もつかず、不安な時を過ごしていた。
男達に殴られて口から血を流し、頭から砂まみれで、服もボロボロの少年もいる。
少年達が激しい格闘で体力を消耗し、ぐったりしているのに気が付いた兵士が、輸送機にストックしてあった緊急時用のハンバーガーを支給してくれた。
少年の1人が、「これが地球に帰って、最初の食べ物だ…」とポツリと言った。
タケルも、地球で食べるハンバーガーを、しみじみと噛み締めながら食べた。
そばで少年達の無心に食べる様子を見ていた兵士が、なぜこんな危険な所へ転送してきたのかと、尋ねた。
「本当のこと言ったって、オレらのこと信じちゃくれないだろ?
それでも、聞いてくれるンだったら、言ってみるけどさ…
最初は、オレら被害者だったンだぜ!
宇宙ステーションでゲームに夢中になって、
親の言うことも聞かずに、遊ンでたオレらも悪かったと思うけど…
宇宙で悪い奴らに脅されて、ゲームで取ったポイントを巻き上げられて、
気が付いたら、そいつらの手先にさせられて…
もうそんな生活がイヤだったから、地球に戻って来たンだ。
でも、悪い奴らの仲間と戦わなきゃ、元の生活を取り戻せないって
ウェンディが言うから、死に物狂いで奴らをやっつけたンだ…
ウェンディは、今はいないけどね… 」
リーダー格の少年が、やるせなさそうに答えた。
兵士が「ウィンディ? 女の子かい? 」と尋ねた。
「そうだよ。まぁ、女の子って言ってもね…
…おっと、これ以上は、言わない方がよさそうだ。
頼むから、聞いてくれる?
オレらさ、あいつらのイイようにされて、殺されるくらいなら…
刑務所でも監獄でも、どこでも入るよ。
真面目にやってたら、出られるんだろ?
今度こそ、普通の暮らしがしたいンだ。
家族がいて、普通に働いて、
家で子供と一緒にゲームやって、盛り上がって…
オレらにもできるよな?
なっ! 」
その少年は、周りの少年達に投げかけるように言った。
誰からも返事はなかったが、悔しそうに涙を拭きながら、少年達はハンバーグにパクついていた。
兵士は、少年達に向かって言った。
「残念だが、刑務所は君達が思うよりひどい所だ。
牢屋に入るだけならいいが、周りには、いろんな罪人がいる。
まじめな人間の方が、ねらわれる。刑務所内のケンカで、命を落とす者も多い。
君達の罪がどの程度かわからないが、長くなれば顔つきまで変わってしまう。
無事に出られた時に、君が言ったこと、忘れてないといいがね… 」
それを聞いた少年達は、冗談じゃないと、脱出を図る決心をした。