未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第21章 同じ時を生きる君に ⑮

2021-02-01 16:10:42 | 未来記

2021-09-14 22:43:00 | 未来記

 

15.司法取引

 

防衛軍の輸送機は、基地の定位置に降り立った。

 

ドローンが進化した航空機なので、移動する音は静かだ。

 

11人の少年は、すぐに基地の会議室へ移動させられた。

 

牢屋にぶち込まれると思っていた少年達は、かえって警戒した。

 

全員手錠をされたまま、会議室の椅子に座らされ、手錠は椅子につなげられた。

 

銃を持った兵士達が見守る中、しばらく待っていると、防衛軍の上官らしき人が先頭で、兵士が何人か入って来た。上官の胸には、バッジがたくさん輝いていた。

 

「君達、ご苦労だったな。君達の戦いは、空からの映像で見ていた。賞賛に値する。

 

 たったこれだけの少年が、無頼漢ばかリそろった大人を大勢倒すとはな。

 

いろいろ聞きたいことがあるが、協力してくれるかね? 」

 

少年達は、思っていたのとずいぶん様子が違うことに、戸惑いを感じた。

 

「君達の立場は、微妙なところなのだ。

 

このまま、無断転送の件で取り調べを行っても良いのだが、君達の使った戦略に、私達は興味を持っている。

 

君達は、司法取引を知ってるかね…? 」

 

MFiエリアのルールの授業で、その言葉を覚えていたタケルが言った。

 

「はい。犯罪で実刑を受けた人でも、社会にとって有益なことに協力することで、刑を受けなくてもよくなることだったと思います…」

 

「そうか。わかる子がいるなら、話が早い。

 

君達が、こちらの言うことに理解を示してくれたら、その手錠を外すことも可能だ。

 

さて、君達はある女の子の魔法で、すぐにでも消えることができるそうだね。

 

君達の仲間で、宇宙船に残っていたニックという少年が、話をしてくれた」

 

それを聞いた少年達は、口々にニックを罵った。

 

「あいつ、しゃべりやがったのか… 」

 

「なんだよ。いっつも、勝手なことばかりしやがって… 」

 

「自分が助かりたくて、オレらのことバラしたのか…」

 

それを聞いていた上官は、手を振って話を続けた。

 

「君達が誤解しないように言うが、

 

ニックという少年は、まず自分のやっていた犯罪を白状した。

 

地球に転送した君達が、同じような犯罪に関わっていたとも言った。

 

だが、それを強要したグループから、暴力を振るわれ、逃げると連れ戻され、しかたなくやっていたことも、くわしく説明した。

 

彼は、ラミネス宇宙ステーションに戻って、これから裁判にかけられる。

 

その時、そのグループのことや、君達のことも発言するだろう… 」

 

少年達は、言葉を失った。

 

「君達も、彼と同じように、これから裁判を受けなくてはならない。

 

ただ、君達の戦い方が、わが防衛軍にとって、有益なことをもたらすかもしれない。

 

君達は、女の子の魔法が功を奏したとはいえ、味方に犠牲も出さず戦った。

 

しかも君達より、腕力のある大人をひとり残さず、動けないように縛り上げた。

 

全員が未成年だというのに!

 

まぁ、まずは君達の刑罰が確定してからでも良い。いくら悪い奴に強要されたからと言っても、君達のしたことで、被害届も出ている。

 

今、ラミネス宇宙ステーションでは、これまでにないくらい犯罪が多発しているのだ。

 

多くの子供達が犯罪に巻き込まれ、行方不明の子を探す親が、何人も捜索願を出している。

 

君達もその1人かもしれない。

 

君達を手下に使っていたグループは、すでに捕まっているが、君達の証言で、より重い刑罰を与えることができる。

 

被害を受けた人達への、罪を償う気持ちで、裁判に臨んで欲しい。

 

そのあとで、君達が素直に実刑を受けて刑務所に入るか…

 

それとも、君達が防衛軍に役立つような働きをしたいと希望するなら、

 

その道も与えてあげよう。

 

もちろん、君達を探している親との話し合いも必要だ。

 

よく考えて決めたまえ… 」 

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