未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第21章 同じ時を生きる君に ⑩

2021-02-10 15:37:38 | 未来記

2021-09-09 15:34:00 | 未来記

10.姿を変えた少年達

 

キララの呪文によって現れた空間のひずみが、少年達を覆うと、その姿が一瞬消え、黒いカラスが空中を舞い始めた。

 

驚いた顔で、上空のカラスを見上げる男達。

 

ハッと我に返った男の一人が、「なめやがって! 」と怒鳴ると、目の前に歩かせていた2人の子供に向かって手榴弾を投げつけた。

 

手榴弾は、なぜか空中に舞い上がり、ドッガーンと音を立てて、煙があたりを覆った。

 

強い風に煽られて、煙が流された後、キラシャとケンの姿はなかった。

 

「ふざけんなよ! 」

 

「てめえら、なにしやがったンだ! 」

 

「くそっ! カラスなンて、うち殺しゃいいンだろ? 」

 

「カラスの丸焼きでも、してやろうか! どうだ! 」

 

男達は、カラスに向かって怒鳴りながら、発砲し始めたが、次元が違うかのように、弾はカラスを素通りして、パンパンパーンと上空へむなしく打ち上がった。

 

上空に舞っていたカラスは、次々に急降下で男達の腕に舞い降り、銃を握る指を激しく突くと、足で銃をもぎ取り、次々に遠くへと飛ばした。

 

銃を渡すまいと、カラスに向けて撃ち続ける男達。

 

 

カラスの集団は、銃以外の武器も男達のベルトやポケットから取り出しては、遠くに放り出し、執拗に男達の身体をくちばしで突き続けた。

 

タケルは、少年達の突然の変身と、その激しい戦いに驚き、爆発後に消えてしまったキラシャとケンがどうなったのか、状況が把握できずに、ただ茫然としていた。

 

そんなタケルに向かって、キララが怒鳴った。

 

「タケル! アンタの方が動きはいいンだよ!

 

あの子らが、カラスになって武器をもぎ取ってやったンだ!

 

アンタはカラスにならなくたっていいンだからさ。

 

あそこまで飛ばしてやるから、早く仕留めてやンな! 」

 

「だって、キラシャは? ケンだって、どこに行ったんだよ!

 

話が違うじゃないか! オレ、何のためにここにいるンだ… 」

 

キララは、そんなタケルに言った。

 

「安心しな! アンタの友達は、ヒロが元いた場所に戻したンだよ。

 

そこが安全かどうかは、わかンないけどね。

 

アンタが、あいつらを全部縛ったら、会わせてやるよ!

 

大好きな、キラシャにね。

 

わかったら、早くあの連中を動けないようにしてやれ!

 

今はまだ優勢だけど、あいつら素手でも人を殺せる連中だからな。

 

アンタの技がいるンだよ! 相手の息の根を止めるって技がね! 

 

さぁ、タケル! さっさと、行ってやっつけちまえ! 」

 

キララが呪文を唱えると、タケルの周りの空気が歪んでいった。

 

気が付くと、タケルの目の前で、元の身体に戻った少年達が、素手で男達と戦っていた。

 

カラスを撃つつもりが、味方同士で撃ち合いになって、何人かの男が倒れ、呻いていた。

 

戦っている男の人数は、少年の数より少なくなっていたが、2人でかかっても、投げ飛ばされたり、殴られたりしている。

 

カラスに身体中突かれていた男達は、血まみれになりながら、それでも子供相手に負けてはいられないと、取っ組み合いの殴り合いが続いた。

 

「タケル! 早くこいつを縛ってくれよ! 」

 

「お前なら、とどめが刺せるンだろ? 」

 

「手が足りないンだ、早くしてくれ! 」

 

タケルが、あの真っ暗な宇宙船の中で、一瞬で男を倒したのを見ていた少年達は、自分もこれくらいはやれるンだぜと、言いたげにタケルをせかした。

 

見ると、小さい男の子が、男に腕をつかまれて振り回されていた。

 

それを見たタケルは、その男の背中に向かって回転しながらジャンプ。その勢いで太い腕を取り、少年を払いのけて、一本背負いで男を倒した。

 

タケルはすぐに男をうつぶせにして、両腕を後ろで組ませると、動けない状態にして、素早く縄を受け取り、ギュッと手首を縛った。

 

タケルが、他の少年を押さえつけていた男達の急所を突いて倒し、縄で縛っていると、遠くから防衛軍の輸送機が飛んでくるのが見えた。

 

「防衛軍だ~ぁ! 」

 

「カッコイ~イ! 」

 

「オレらも、あンなのに乗れたらな~! 」

 

少年達の羨望を受けながら、輸送機から降りた防衛軍の兵士達が、銃を持ってタケルの方に向かってやって来た。

 

先頭の兵士が、少年達に向かって言った。

 

「君達の自由は、ここまでだ!

 

君達を逮捕する。

 

宇宙から無許可で地球に転送してはいけないという、

 

コズミック・ルールに違反した。

 

おとなしく、我々に同行して、取り調べを受けるんだ! 」

 

兵士の意外な言葉に、少年達と同様、タケルも何も言えず、立ちすくんだ。

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