未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第21章 同じ時を生きる君に ⑭

2021-02-04 20:29:04 | 未来記

2021-09-14 19:43:00 | 未来記

 

14.ママがパールへ望むこと

 

ホテルにいた人達は、集会所のような所に移動して、毛布を渡され、そこで夜を過ごすことになった。

 

周りにはエリアの警備隊が、何十人も見回りを続けている。

 

デビッドおじさんが、毛布を何枚か重ねて敷いて、子供達にそこで休むよう言った。

 

パールのママも、オパールおばさんも一緒だ。

 

パールは、待っていたかのように、ママのそばに座った。ママの懐かしい香りに、自然と顔がほころんでくる。

 

キラシャとケンとマイクは、遠慮して少し離れた所に座った。

 

でも、ママは緊張した面持ちで、パールを見つめていた。

 

「パール、長旅だったけど、危険な中、無事に帰って来てくれてありがとう。

 

天国のパパも、きっと喜んでくれていると思う。

 

パールにやっと会えたってね。ずっと、あなたを待っていたから…

 

ただ、ここは危険な場所。

 

あなたが、ここにいて無事に暮らせるか、ママは心配しています。

 

あなたは、オパールおばさんと一緒に、MFiエリアに戻った方が良いと思う。

 

昨日の集まりで、あなたの存在を多くの人が知ったから…。

 

いつ、誰に狙われるかわからない…。

 

あなたは、お友達に会えると思って楽しみにしていたと思うけど…

 

どうやら、それもできそうにないの… つらいと思うけど…

 

あなたがMFiエリアで勉強して、将来なりたいことを見つけて、

 

帰ってくるのなら、私はそれでいいと思う。

 

そのころには、今より治安が良くなっているかもしれない… 」

 

ママから急に言われたことが、まだよく理解できていないパールは、不満気だ。

 

「デモ ママ。

 

ワタシ アイタイヒト イル。

 

マダ アッテナイ。

 

MFiエリア イッタラ モウアエナイカモ… 」

 

ママは悲し気な顔をして、パールを抱きしめた。

 

「ママだって、つらいの。

 

あなたの希望が、かなえられないって言うことがね。

 

でも、ここは危険なの。パールもよくわかってるでしょ?

 

爆弾騒ぎは、いつものことだし、急に銃撃が始まることだってある… 」

 

困っているママを見かねて、デビッドおじさんがパールに声をかけた。

 

「今、このエリアの住民が使うネットは、統制が厳しくて自由に使えない。

 

でも、おじさんがこれから交渉して、MFiエリアとオンラインでつながるよう働きかけてみるよ。

 

君が友達とリモートで話ができるまで、時間はかかると思うが、待っていて欲しい… 」

 

パールは訴えるようにキラシャを見たが、キラシャはどうすることもできない。

 

パールには、どうしても会いたかった人がいるのに…

 

でも、キラシャだって、タケルに会ったとは言え、話もできる状態ではなかったのだ。

 

突然、背中に銃口を突き付けられた時の恐怖を思い出して、会わない方が良かったのかもと、いつかパールと笑って話せる時が来るといいなと思った。

 

まだ納得はしていないパールの一方で、マイクは少し希望が持てたような顔になって、ケンに言った。

 

「モシ パール MFi イクナラ

 

ボク パパト ハナシテ イッショニ イク!

 

ママ オコッテル。

 

ココ アブナイ。ハヤク アンゼンナトコ イキナサイ。

 

リョヒ オクル ダッテ! 」

 

ケンはびっくりして、マイクに尋ねた。

 

「でも、マイクのパパはどうすンの? 

 

マイクの保護者がいないと、MFiエリアに帰れないよ… 」

 

デビッドおじさんが、マイクに声をかけた。

 

「ちょうど良かった。おじさんも、これからMFiエリアに行くことにしたんだ。

 

マイクのお父さんに相談して、おじさんが保護者になって連れて行ってあげるよ。

 

しばらく、マイクはおじさんが預かることになっていたからね」

 

マイクは、うれしそうにうなずいた。

 

結局、その夜にホテルの爆破は行われなかった。

 

ただ、通路で銃を撃ち合う音は、その後も何度か聞こえ、そのたびに4人の子供はお互いの身体をすり寄せ、鳴りやむまで耳を手で押さえた。

 

キラシャは、こんな音も、タケルは聞こえないのかなと思いながら…

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