未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

キラシャ物語を読んでくださる方へ

2023-12-04 16:25:45 | 未来記

キラシャのお話を始めて もう20年近く経ちましたが

いまだに 一つの物語として 終わりを見つけることもできず

先を楽しみにしていただいている人がいる かどうかもわからず

ブログを続けさせていただいています

 

最近投稿もしていないのに

ここへ訪れていただいている方が増えているので

ちょっと 不思議な思いでいるのですが

 

コメントは 受け付ける設定にしておりますので

どこが 良いのか 悪いのか

批評家になっていただいて

コメントを残していただけると

ありがたいです

 

地球上に生きる 多くの人達が

ともに支え合って 暮らせる方法を話し合い

これから 80億といわれる人々が

一つの地球の上で

共通のルールを決めて

それを守りながら

その中で自由な生活空間を維持できる

新しい街の建設が始まることを

願いながら このお話を続けさせてください

 

今起こっていることが 未来を変えてゆきます

次の一歩をどう踏み出すかで

将来が 左右されます

 

核兵器よりも

もっと大事な未来社会の生活について

話し合える機会が得られますように!

世界中の人とともに

未来に向かって

より平和に暮らせますように!

 

長いこと 無料でブログをお借りしている

Gooさんには 大変感謝しております

 

もう少しのんびりと この未来のお話を続けさせてくださいね

 

作者より

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キラシャ物語について

2023-12-04 16:12:40 | 未来記

この物語は 山口県で行われた未来博で

劇のオリジナル脚本の原案を募集されたことが

きっかけで考え始めたのが始まりです…

 

その時は 採用されなかったので

もし 自分で未来を考えるなら

こういう物語を作ってみたいという

そんな気持ちで 書き始めました…

 

天真爛漫な 未来少女キラシャ

平和なドームの世界で

幼なじみの イケてるタケルと

一緒に恋愛学を学んで

おとなになっても 一緒に暮らしたいと思っていたのに…

 

キラシャは 突然起こる試練を乗り越えながら

どんな風に 一緒に暮らす人を選ぶのでしょうか?

 

この物語は 私の理想とする未来があって

そんな未来でも 今の子供たちと同じような悩みや

苦しみを乗り越えようと

たくましく生きてゆく子供達の姿を描いています。

 

キラシャとケン、タケルが経験する

いろんな出来事を

読んでいただきながら

 

コロナ禍や戦争によって 変わらざるを得ない これからの時代に

この物語が 少しでも皆様の未来に反映されることで

平和な未来の地球へと つながることを願っています。

 

今後も 状況に応じて 内容を変えてゆく予定にしています。

 

まだ 何のご連絡も受けておりませんが

作品として使われる場合は

こちらの許可を確認してくださいね。 

 

  人として なんてひどいことをするんだろう

  なぜ こんなルールで人をしばるんだろうと思うことは

  未来でも あり続けると思います。

  

  今は いろんな悩みをかかえて

  解決できないでいる子供達も

  大人になって 努力を続ければ

  自分達で みんなが守れるような

  ルールを作ってゆくことができるンだ

  

  という前向きな気持ちに なってもらえると

  こちらも 幸せです。

  

  キラシャの 今後の成長とともに

  皆様の明日が より心豊かなものになりますように!

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第1章 未来社会 ①②

2021-08-28 14:59:05 | 未来記

2004-12-26

1.大流星群との戦い

 

これは、私が夢で見た、未来の地球のお話。

 

地球をおおっていた自然の大気が、環境の変化で薄まったためか、未来の地球は人工の特殊なシールドで包まれていた。

 

国の境界線は、やがて消え、横に広がるドーム・エリアが栄えた。

 

地球の温暖化や、さまざまな環境汚染が、時には地球規模の災害へとつながり、民族の紛争やエリア内外の戦争も、絶えずどこかで繰り返された。

 

地球の各エリアの代表が集まる会議に、月や宇宙ステーションや火星などで生活する、新しいエリアが加わった。

 

やがて世界中のエリアを統合する機関は、コズミック・ユニオンと名称が変わり、コズミック防衛軍が結成された。

 

このコズミック防衛軍は、誰でも入れるわけではない。

 

各エリアの警察や軍隊などで活躍している若者の中から、特に優秀な隊員が防衛軍の訓練生として推薦され、

 

訓練生として招集された後、どんな危険な状況でも、冷静に戦える技術を習得したことを認められた者にだけ、正式な防衛軍のバッジとユニフォームが与えられるのだ。

 

コズミック防衛軍の兵士は、常に宇宙の安全を優先する。

 

時には、トラブルに遭って宇宙をさまよう宇宙船を救出し、極悪非道な海賊が狙う宇宙船や宇宙ステーションへの救助活動を行い、激しい戦闘の中でも犯人逮捕を敢行する。

 

地球上でも、エリア内やエリア間で起こった紛争や戦争への介入。

 

その活躍が認められると、名誉の勲章の授与。

 

冒険心が強くて、宇宙での活躍を目指す子供達にとって、コズミック防衛軍は、エリアの警察や軍隊に入れたら、その次に目指したい、あこがれの職業なのだ。

 

 

そんなある日、突然、宇宙空間に大流星群が現れ、地球の方向へと近づき始めた。

 

『信じられない数の流星が、地球に衝突する恐れがある』

 

この情報を入手したコズミック防衛軍は、最新鋭の武器を使ってその進路を変えるよう攻撃を始めたが、飛来してくる流星の数は、軍の想定を超えていた。

 

どんなに撃破し続けたとしても、大きいものから小さいものまで、何千何万という星のかけらが地球へと向かい、その一部が大小の隕石となって、地上へ衝突する可能性がある。

 

未来は、情報の流れるのが早い。

 

宇宙探査船が、大流星群による最初の被害を報告し、まもなく地球の危機が広く伝わった。

 

宇宙を無数に航行する宇宙船から、被害に遭ったという情報が次々に舞い込み、人々をいっそう不安に駆り立て、暴動にも発展した。

 

地球は人工の特殊なシールドで覆われているが、膨大な数の衝突に耐えられるかわからない。

 

最新のドームや、宇宙に配置した最新のステーションが、隕石や暴動で破壊されることを恐れた、先進エリアの指導者や科学者や技術者達。

 

コズミック・ユニオンの中央議会では、どのエリアの代表も、自分のエリアを守るべく、コズミック防衛軍への協力を求め、議員の間で調整がつかず、議会場はパニック状態だ。

 

事態の収拾をつけるため、コズミック・ユニオンの議長ウィル・キリィは、緊急のニュースとして全エリアに向かって伝えた。

 

「流星衝突の恐れがある、宇宙ステーションや宇宙船の艦長は、防衛軍の指示に従い、安全な宇宙空間に早く移動すること。

 

被害が予想される各エリアの首長は、それぞれエリア警察や軍隊の増員を図り、エリアの住民が安全に避難場所へ移動するよう、緊急に救助隊や警備隊を組織し、指示すること。

 

避難場所が確保できないエリアの首長は、それぞれ独自の判断で、安全策を図ること…」

 

各エリアでは、大勢の若者が救助隊員や警備兵として召集され、避難場所への誘導や、暴動への鎮圧、地上への隕石の衝突を防ぐための攻撃に駆り出された。

 

ドームの建設が進まなかったアフカ・エリアでは、グループ同士の縄張り争いから、避難場所が確保できず、救助の人員を増やしても、難民があてもなくさまようばかりだ。

 

暴動の鎮圧に功績のあった、アフカ・エリア出身のエリック・マグナーが、コズミック防衛軍の臨時・最高指揮官に任命された。

 

エリック・マグナーは、各エリアへ暴動鎮圧のため、軍事介入する前に、全エリアの人々に向かって訴えかけた。

 

 

「我々、コズミック防衛軍は、人類のふるさと地球と、宇宙に暮らす人類を救うために、果てしなく飛来する無数の流星と戦っている。

 

しかし、我々がこの戦いに敗れることで、ドーム社会が破壊され、我々の得たすべての財産を失ってしまうだろうという言葉に、多くの人が惑わされている。

 

軍は何の理由もなく、同じ人間を威嚇する道具として、兵士を育てたのではない。

 

あなた方の命を守るため、数多くのエリアが誇る警察官と救助隊員、警備兵とともに、自らを犠牲にして戦って来た。どうか、自分達の力を信じてほしい。

 

これより我が軍は、コズミック防衛軍ルール第10条第1項にもとづき、人類の生存を優先し、正義のために戦うことになる。

 

これ以降エリアを混乱させ、人命を危険にさらし、軍の命令に違反した者に対しては、命の保障はない。

 

どうか、暗い孤独な宇宙の中で、今生きているあなた方と、未来のために戦っている、寡黙な兵士のことを忘れないでほしい」

 

 

そして、流星の爆発に巻き込まれ、命を落とした兵士達の名前と映像が浮かび上がり、愛する人達へのメッセージが、本人の声で流された…。

 

同じ時に、同じ苦しみを感じながら、他の人を助けるために命を落とした兵士達の冥福を、人々は祈った。

 

しかし、大流星群は容赦もなく、宇宙船や宇宙ステーションを襲った。

 

暗黒の宇宙が稲光に包まれる中、防衛軍の宇宙船に追従し、安全な場所を求め、逃げ惑う宇宙ステーション。やがて、地球にも光の大群が押し寄せて来た。

 

遠くで雷と地震と戦争が同時に起こったような、そんな激しい光と雷鳴が延々と続き、ドドドォーンッという、激しい爆音が鳴り響く。

 

 

避難所のせまくて暗い場所に閉じ込められ、息苦しさに耐えかねて、泣き叫ぶ子供達。

 

人気のないドームに入り込み、残された金品を狙って、暗躍する強盗団。ドームに覆われていない場所にも、多くの人々が取り残され、無数の生き物がそのまま置き去りにされていた。

 

シールドを突き抜けた大きい隕石が、海に落ちて津波を引き起こし、島のエリアを襲った。

 

大陸のエリアにも、砕けた隕石の雨が降り、海からの津波が、地上の人々や生き物をさらって行ってしまった。

 

ドーム社会の指導者の言いなりに戦うことは、ドーム社会を助けることになっても、地上に取り残された自然や、自然とともに生きている人々を失うことになる。

 

 

誰かが、その人々を助けなければ…

 

 

エリック・マグナー指揮の下、軍への出動要請のあったエリアには、指令に従順なマシン部隊を中心に配置。

 

一方、軍の有志を募って、ドームの外の救出活動を急いだ。大勢の若者が、進んでドームの外へ飛び出し、被災地へと向かった。

 

彼らの後を追うように、使命感の強い医療技師や、多くの勇気あるボランティアが、支援物資を背にして、保護された区域を離れた。

 

 

 

 長い長い時が過ぎ、ようやく音が鳴りやんだ。

 

 

人々は、長いこと閉じ込められた苦痛に、少し背伸びをした。

 

大流星の衝突によって、少し地球の軌道がずれてしまったようだ。

 

その変化に順応するための対策と、破壊された地域の復興という、新たな苦難に立ち向かうため、人々は立ち上がった。

 

少しホッとしたせいか…各エリアの管理の目が行き届かなかったせいか…この年、子供がたくさん生まれた。

 

そして、キラシャも、この年に生まれた。

 

  

2004-12-30

2.ドームの社会

 

未来の地球のある時期には、理想の生活を目指すユートピア・エリア、自由な生活を目指すフリーダム・エリアという広大な2大エリアがあって、その時代をリードしていた。

 

また、宇宙開発に貪欲なユニバース・エリア、食料の増産や技術開発に意欲的なディヴィロプメント・エリアが、人類の未来と生活を支えているようだ。

 

いろんな民族が所々に共存するアフカ・エリア、多数の民族が入り混じったオリエント・エリア。

 

民族間の階級の厳しいヒンディ・エリア。

 

これら民族の違いが、また新たなエリアを生み出し、エリア内にも外にも、貧富の差はさまざまに広がっていた。

 

特徴を生かした小さなエリアも点在し、周りのエリアと経済や技術を提携し合って、共存共栄を図っている。

 

キラシャの暮らすドームは、北半球の小さなエリアにある。

 

何度も地震や火山の爆発などに見舞われながら、長い年月に位置を移動し、形を変えて、成り立ってきた島のエリアである。

 

地球上の他の場所に比べて、磁力の働きが強いのが特徴で、マグネティックフィールド・エリア、略してMFi(エムフィ)エリアと呼ばれている。

 

MFiエリアは、点々とした島のドームで成り立っているが、ごく微小なマシンを駆使した医療技術の発達で、先進エリアと認められるようになっていた。

 

もうすぐ11歳になるキラシャは、ドームのスクールで、クラスの男の子と仮想空間でのアクション・ゲームや、未来のスポーツを楽しんでいる。

 

クラスの中でもとびきり元気なキラシャは、冒険好きな男の子とドームから外に出たくて、ドームの外出許可資格を取ろうと、午後の厳しい訓練に参加していた。

 

ドーム内の澄んだ空気に慣れてしまった未来人。

 

特殊なマスクをつけないでドームから出てしまうと、呼吸をしても外の空気の成分がうまく身体に取り込めず、倒れてしまう人もいる。

 

調整された空気しか知らない子供達は、訓練しないでドームの外へ出ることを禁止されている。

 

スクールの行事や競技のために、ドームの外に出る生徒もいるが、訓練後の外出許可証が発行されないと参加が認められない。

 

見慣れた植物や動物ばかりのドームに、たいくつしていたキラシャは、まだ自分の目で見たことがない、自然に満ち溢れた広い外の世界に、人並み以上のあこがれを抱いていた。

 

チルドレンズ・ハウスでは、大勢の子供達が、にぎやかな日常生活を繰り広げている。

 

平日はチルドレンズ・ハウスで生活し、土曜・日曜の休日は保護者の所でホームステイする。

 

もっとも、子供の保護者は、血のつながった親ばかりではない。

 

休日に子供を引き取る実の親は年々減り、子供を育てることで、その成長を楽しみにする代理の保護者が多い。

 

キラシャは、自分のおじいさんを知らない友達や年下の子を引き連れて、自分の血のつながったおじいさんの住むオールディ・ハウスへ、休日に遊びに行った。

 

このドームには、子供が学ぶスクールと、寝泊りするチルドレンズ・ハウスと、病気やケガの時にお世話になるホスピタルが併設している。

 

スクールでの学習に役立つ博物館や歴史館、さまざまなアート・ミュージック・ダンス・ミュージカル・ドラマ・カラオケなどを楽しむ大小の施設もある。

 

ゲームの中に入り込んで、新たなストーリを作りながら、謎を解いたり、恋をしたり、仲間を作ったり、敵を倒して得点をゲットしたり、子供達が楽しんで遊べる仮想空間もある。

 

また、未来に進化した、多くのスポーツの練習場や試合会場もある。

 

これらの施設は子供だけでなく、大人も利用できる。仕事を終えた夕方から夜まで、多くの人に趣味を通じた出会いを提供している。

 

今も進化し続けているスマホは、“M(マルチ)フォン”へと進化して、ドームで暮らす人々の生活を支えている。

 

おしゃれや便利さを追求する未来人。

 

Mフォンを持ち歩かず、自分の身体・服・メガネ・アクセサリーに埋め込んで使う人もいる。

 

ただ、スクールの子供達は、「自分の持ち物を、責任を持って管理する」という教育目的で、事情のある場合を除いて、Mフォンを所持するように、ルールで定められている。

 

未来では、人が別の所へ行きたい時には、このMフォンの操作で、瞬間に移動できる。

 

転送装置という、とても便利な道具だ。もちろん、モノの移動もMフォンで操作できる。

 

ところが、ドームにはたくさんの人が通路を移動しているし、転送先が安全な場所とは限らない。

 

Mフォンだけでは、判別できない障害物にぶつかって、人が大ケガをしたり、送ったモノが転送ミスで大破したり、ゼンゼン違う場所へと転送されたりと、被害も多発した。

 

そこで、緊急の場合を除いて、Mフォンだけで転送することは禁止され、ボックスという転送装置と、そのリモコンとしてMフォンを利用した移動が認められた。

 

 

人の転送用として、ドームの各階のフロアに、大人が2、3人入れるくらいのペアのボックスが、点々と置いてある。

 

ボックスの右手が送り側。中に入って、Mフォンで行き先を指定すると、数秒後には希望の地点のボックス左手、受け側のボックスにたどり着く。

 

同じボックスに、同時に転送しようとする人が何人いても、ボス・コンピュータからの指示で、重ならないように待ち時間があり、順序良く転送が行われるのだ。

 

もちろん、転送が苦手な人のために、広場ではエレベーターやエスカレーターもあるが、急いでいる時は、ボックスの方がウンと早い。

 

エレベーターやエスカレーターの数は多くないから、移動するのに苦労する。

 

住宅街は同じような廊下が延々と続いているから、自分がどこにいるのかも、さっぱりわからないことがある。

 

しかし、そんな時だって、Mフォンが目の前に3Dホログラムを映し出し、現在地と行き先への道案内をしてくれるのだ。

 

 

ところが、Mフォンが何でも教えてくれるから、未来の人に悩みはないなんて、思ってはいけない。逆に、このMフォンの存在が悩みだったりすることもある。

 

MFiエリアは他のエリアよりも、管理がウンと厳しくて、大勢の人が秩序正しく暮らすよう求めている。

 

 

もちろん、人だけでなく、モノの転送にも、きちんとルールが定めてある。

 

製造されたモノは、製造場所・責任者・移動経路・所有者などがコード形式で表示され、ボスコンピュータにも、暗号化されたコードが、圧縮して記録される。

 

モノの現在の位置も、MフォンのGPS探索アプリで確認することができる。

 

ドームの住民の各部屋には、モノの転送用のボックスがあり、ネットで購入したモノをボックスに送ってもらえる。

 

食べ物などは、テーブルの上に置いた専用のボックスに、大きなものは物置くらいのボックスに送ってもらう。

 

 

ただ、人のモノを勝手に転送して、自分のモノとして使ったり、他の人に転売して儲けを企んだりする人達がいる。

 

そんな時、被害者は、エリア警察に被害届をMフォンで送信すればよい。

 

警察は、Mフォンの転送記録・製造コード・GPSで、現在の位置を特定して、犯人を追及する。

 

偽造したモノも、Mフォンをかざせば、製造コードを確認でき、ボスコンピュータに記録されたコードと突き合わせ、本物かどうかをチェックすれば、偽物だとバレてしまうのだ。

 

そうはいっても、未来にネット犯罪がなくなることはない。

 

日々、ボスコンピュータのAI機能で監視を行っているが、犯罪の多さと巧妙さに対して、摘発数が追いつかないのが現状だ。

 

スクールで犯罪を行わないよう指導を行ってはいるが、人に隠れて悪さをしたいと思うのが、人間の本性なのかもしれない。

 

このエリアでは、ルール違反に対して厳しい罰則がこと細かく決められ、裁判で罪が確定すると、罰則に応じたマネーの支払いか役務を終えないと、その後の生活は保障されない。

 

ルール違反をすると、ルールのアプリが入ったMフォンから警告を受けることもある。それを無視して違反を続けると、Mフォンが自動的に警察に通報するシステムになっている。

 

 

毎日毎日、人々はMフォンからのモーニングコールで目覚め、仕事のスケジュールを確認する。

 

Mフォンは、手際よく1日の予定を報告してくれるし、都合で予定を変えようとすると、こうした方が良いとアドバイスしてくれる。

 

ところが、そんなに親切に指導されると、かえってうっとうしいと思うのが人間というものだ。

 

あまりうるさいと、Mフォンの音声をバシッと切ってしまうこともある。

 

大事なアドバイスを聞き逃して、後で後悔することも多いが…。

 

 

それから、未来の若者は人間関係に、とても敏感だ。

 

恋愛に関しても、知り合った相手と仲良くなってから、結婚を決心するのも早いが、別れるのも早い。

 

結婚の届けを2人で管理局に出したら、2人っきりの部屋で、落ち着いた生活ができるかというと、どうもそうではないようだ。

 

衛生にうるさいドームでは、部屋にキッチンがない。食事をした後は、クリーニングを行うのがルールだし、それがイヤなら外で食べるしかない。

 

部屋で仕事をする人を除けば、寝る時だけ帰って来ることも多い。

 

部屋のクリーニングも、ロボットかヘルパーに任せるので、お互いに相手のことを気づかう、愛情あるコミュニケーションが取りにくいのかもしれない。

 

仕事で疲れた2人が顔を合わせても、相手のいやなとこばかり目につき、部屋の中ではつまらないことでケンカを繰り返し、結局別れてひとり部屋へ引っ越す人が多い。

 

それがイイことか、ワルイことかは、私にはわからないが、未来の人は合理的だ。

 

結婚した相手とは、会いたい時に会って、食べたい時に一緒に食事をして、デートしたい時に、一緒に過ごせば良いのだ。

 

愛を語りたい時は、ムードあふれるホテルで2人っきりに…。

 

 

ただし、ドームの中のどこにいても、今日の食事の予定は、どこでどんな食事をするか、Mフォンからの質問に答える義務がある。

 

この小さな島のドームでも、何万という人口を抱えている。よけいな人数分の食事の準備をするのも無駄だし、残飯を捨てるのも経費がかかるし、何よりモッタイナイ。

 

サプリやドリンクで済ませるときは食事はキャンセルし、部屋で食べたいときは、レストランから食事を転送してもらえばよい。

 

希望する場所を利用する時は、決められた時間までに予約しておけば問題はない。

 

こういった場合も、Mフォンは欠かせない。

 

 

未来の携帯Mフォン。

 

テレビ電話・ネット・マネー・カード・カメラだけでなく、目の前に3Dホログラムを映し、道先案内、転送ボックスのリモコン、あらゆる機能を持つすぐれものだ。

 

さらには、ルールのアドバイザーであり、仕事や生活のパートナーでもある。

 

ドームの大集団の生活を支える、便利なMフォン。

 

未来のドームに住む人々は、それがなくなったら、何もできないほど、Mフォンに依存していた。

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第1章 未来社会 ③④

2021-08-28 13:01:03 | 未来記

2005-01-08

3.子供達の生活

 

医療技術の発達したMFiの子供には、液体状のマシンが注入されている。

 

―MFiの住民は、ピコ・マシンと呼んでいる―

 

長年の研究で、体内に注入しても無害なマシンが開発され、それが子供の身体をケアしながら、その子の居場所もMフォンを通じて教えてくれる。

 

Mフォンは、体内のピコ・マシンのデータを、一時的に記録保管し、整理した上で、確実にドームのボス・コンピュータへと送信するためにも使われている。

 

キラシャの暮らすチルドレンズ・ハウスの朝は、早い。

 

早い子は生まれてすぐ、遅い子でも3歳の誕生日を迎えるまでには、チルドレンズ・ハウスに引き取られ、先生の指導によって、社会で働くための基本的なしつけを学ぶ。

 

保育コースの子供は、決められた時間に寝室から遊び場に移動すればよいのだが、それでもまだ甘えていたいのか、ぐずぐずしている子が多い。

 

子供への指導で手一杯の先生を手伝う、年若いスタッフが汗を流しながら、子供の世話に明け暮れている。

 

初級コース以上の子供達は、眠い目をこすりながらMフォンにせかされて、トレーニング場へとジョギングで移動し、全員が集まると軽く体を動かすような体操を行う。

 

月に1度は、災害が起きたときに何をするか確認して、非常用食料や防災グッズのチェックなどを行う。

 

ドームだから災害には強いはず、と思う人もいるかもしれない。

 

ドーム自体は頑丈でも、地球上にあるいくつかのプレートは、常に重なり合って、押し合いしながら動いているから、いつどこで地盤が崩れて、大地震が起こるかわからない。

 

地震や火山の噴火、台風や津波など、災害の多いこのエリアでは、ドームでの非常事態にすぐ反応して、安全な場所へ避難して、救助活動を手伝うための訓練が日課なのだ。

 

朝に弱いとか、身体を動かすのが苦手な子供は、恒例の朝の行事をすっぽかすこともあるが、大多数の子供達は、これを乗り越えてから一日が始まる。

 

どんな状況でも、すぐに自分のすべきことを考えて、行動できる習慣を身に着けることが、ドーム社会の必要不可欠な条件だ。

 

今、世界中でその行動を阻むように感染拡大を続ける新型コロナは、ウィルスの形は変わっても、未来でも存在する。

 

日々、新しいウィルスのワクチンが研究され、ピコ・マシンに添加して投入されているが、ウィルスも、次々に新しいものが発生している。

 

ウィルス感染が災害レベルに拡大すると、ドーム内での集団感染を防ぐために、スクールは封鎖。チルドレンズ・ハウスは人数が制限され、多くは保護者のもとにステイする。

 

ウィルスの陽性患者が、ホスピタルで受け入れられなくなるほど増加すると、スクールはホスピタルだけでは収容できない、症状の重い患者のホスピタルとして使用される。

 

トレーニング場の床下は、緊急時用の医療設備が収納されている。非常時には、床が開いて数百のカプセル・ベッドや医療装置がせり上がって来る。

 

患者数に応じて、各教室にもベッドや症状に応じた医療装置を移動させる。

 

チルドレンズ・ハウスは、一部を隔離状態にして、感染した子供の待機・医療施設へと早変わりする。

 

さまざまな分野の医療技師が召集され、感染医療の研修を受けると、多くの病状の重い感染者がベッドへ転送され、治療が開始する。

 

その間、無感染の子供達は保護者と過ごしながら、スクールで提示された数多くの学習項目の中から、リモートで自分の勉強したい項目を選択して学習を続ける。

 

リモートでは行えない、スポーツや文化的な活動の授業は、Mフォンのアプリで無感染が証明された子供だけが、マスクをして参加するという条件で、許可されている。

 

未来のマスクは、酸素を鼻から体内に取り入れるカプセル状の装置が、マスクの内側に付いている。

 

ピコ・マシンが体内の酸素不足をMフォンに知らせると、自動的にカプセルから供給を始めるので、マスクをして息が苦しくなることはないようだ。

 

ただし、そばに近づいただけで感染し、多くの人が短時間で重篤化するようなウィルスが蔓延し始めると、ロックダウンが発令される。

 

 

やがて感染が治まり、ホスピタルとしての役目が終わると、隅々まで消毒が施され、子供達が安心して戻って来るスクールとチルドレン・ハウスに早変わりする。

  

MFiエリアの子供は、なるべくウィルス感染を防ぐために、軽い食事に、サプリや栄養ドリンクを取ることが基本なので、やせた子が多い。

 

体格も小さめだが、運動能力は発達しているので、子供同士で気に入らないことがあると、すぐにケンカになってしまう。

 

気がついた先生が止めようとしても、殴り合いになると歯が立たない。そうなると、スクール内に待機している、エリア警察のパトロール隊員が止めに入って来る。

 

犯罪の低年齢化も問題になっていて、子供同士のイジメや暴力行為、モノやマネーなど、権利の奪い合いは、年々深刻化している。

 

エリアによって違いはあるが、MFiエリアでは、子供でもケンカがこじれた場合は、裁判で解決するよう指導している。

 

しかも、子供達にとって、もっとも貴重な休日に、子供専用の裁判が行われるのだ。

 

これは、子供同士のイジメを少しでも減らしたいという気持ちで、休日にボランティアで裁判の仕事を引き受けてくれる人達のためだ。

 

子供同士がケンカをしてケガをした場合、ホスピタルでケガとその原因を特定してもらう。

 

被害を受けた子供やその保護者が、スクール裁判所にMフォンで被害の内容を届けると、休日に時間を設定し、裁判用の個室で話し合いが行われ、加害者側に罰が言い渡される。

 

まぁ、ボランティアで行う子供用の裁判だから、早ければ2、30分で決着するし、反省の態度次第で、罰も軽くてすむ。

 

例えば、廊下・トイレ・シャワー室の掃除や、幼い子の世話をするスタッフの手伝いなど。

 

ただし、イジメで相手に相当な精神的被害を与えたとか、殴り合いで大ケガをさせたとか、集団で計画的・組織的にイジメを行ったとなると、本格的な裁判が行われる。

 

裁判の結果次第では、スクールに戻ることは許されない。

 

MFiエリアでは、防犯のために、ドームのいたるところでカメラとボイスレコーダーが作動しているし、パトロール隊員もすぐに駆けつけられるよう、校内を常に移動している。

 

それでも、裁判を受ける子供は後をたたない。

 

活発なキラシャは、ちょっとしたことでケンカに巻き込まれることが多く、何度か裁判のお世話になっていた。

 

同じ年の子供は、他のエリアからの移住者が多く、人種の違いや、生まれの違いによって、子供同士の言い争いが絶えなかった。

 

とはいえ、キラシャの場合、イジメに遭う友達や年下の子をかばって、イジメの相手を攻めてしまい、ちょっと手が当たって、こけただけでも、ケンカの加害者にされてしまうのだ。

 

それに、罰としてスタッフの手伝いを言いつけられると、どんな子とも仲良く一緒に遊んでしまうから、キラシャの罰がスタッフの手伝いだと喜ぶ子が多い。

 

裁判の結果にがっかりしているキラシャが、幼い子供のいる大部屋へ入ってゆくと、「キラシャが来た!」という声が聞こえ、歓声がわあっと上がる。

 

あまりの歓声に キラシャも今までのいやなことをすっかり忘れ、仕方がないなぁとテレながら、遊びの中に入って行くのだった。

 

2005-01-09

4.未来の教育

 

MFiエリアに生まれた子供達は、誕生してからスクールの卒業まで、毎月定額の育成金が支給される。

 

大人になれば、働くことでドーム社会に貢献してくれるので、先行投資ということだろうか。

 

子供の親が負担する教育費を地域社会が負担することで、社会に役立つ大人になるような教育活動を地域社会で行うという考え方だ。

 

MFiエリアでは、3歳から教育が始まり、6歳までは保育コースで学ぶ。

 

Mフォンを使って、いろんなゲームで遊びながら基本のルールを学び、規律のある行動を身につけることが求められている。

 

親に甘えたい盛りだから、先生や大勢の若いスタッフが、それぞれ泣きじゃくる子に付き添い、一緒にゲームで遊びながら、集団生活に馴染むよう奮闘努力をしている。

 

初級コースの7歳から9歳までは、ドーム社会で働くために必要な基本的知識を学ぶ。仮想の空間で仕事を体験し、実際の仕事場で見学し、作業を手伝うという授業もある。

 

中級コースの10歳から12歳までは、ドームのしくみを理解する。

 

ドームで生活するのに必要な設備やさまざまな仕事、働いて得られる給料、税金や保険など、細かく決められたルールを映像の説明を使って、わかりやすく教えられている。

 

自分達の住むエリアやさまざまなエリアの特徴、他のエリアとの共同事業、未来にはどんな仕事が必要とされるのか、といったことも学んでゆく。

 

 

上級コースの13歳から15歳までは、社会人として働くためのマナーを身につける。

 

卒業すると、進学も就職も関係なく、自分で住む所を決め、部屋の契約をして、家賃を支払わなくてはならない。

 

今の時代は、まだ親が心配して、子供の下宿を探すことも多いと思うが、この時代では、スクールの卒業=成人とみなされる。

 

成人したら、日常の行動にも責任のある態度が望まれるので、ルール違反にとても厳しい罰則が与えられる。

 

それを回避するため、社会にはどんなルールがあるかを授業で学ぶ。

 

例えば、基本的な権利、最低限の衣食住は、ひとりひとりに保障されていること。

 

それに対する義務として、ドームの新しいライフスタイルに対応し、その変更や維持に貢献する態度を身につけること。

 

パートナーや、仕事をするために協力し合う人や、マシンなどに対する暴力行為、人をだまして利益を得るような詐欺行為など。

 

自分の罪を認めると、役務を行うための施設に収容される。

 

そこでは、それまでの違反行為を繰り返さないためのプログラムを実行することで、責任ある社会人としての行動ができるよう矯正される。

 

また、人間関係を円滑にするために、社会的なマナーを学ぶ教科もあり、人との付き合い方も、授業でいろんなケースを取り上げて学ぶ。

 

自分だったら、トラブルを解決するためにどう対処すれば良いか、クラスの生徒同士が討論し、自分の考えをレポートするといった内容だ。

 

必要な知識を学んだ後で、その事象が起こった背景や、未来で有効とされるためには、どうしたらよいか、といった考察を生徒同士で意見交換。

 

その中で自分の考えをレポートにまとめ、Mフォンで先生へ送信する。

 

だまって椅子にすわって、授業が終わるまでじっとしていればよいという、消極的な態度では、担当の先生は良い評価を与えない。

 

例え意見をたくさん言っても、それが周りの支持を得られないものでは、先生の評価は低い。

 

あまり評価が低いと、競争率が高い進学先では、受け付けてもらえない。

 

評価を上げるためには、授業の予習をしっかり行い、生徒同士の意見交換の上手なやり取りを、自分で経験しながら、マスターしなくてはならない。

 

 

スクールの卒業後、進学先に自分が希望するカレッジを選ぶ。

 

希望の仕事に就くために、必要な技能や知識を学ぶための教育機関だ。

 

未来の学校制度では、スポーツや文化活動を将来の職業として選ぶ場合、それを実現するためのカレッジに進む。

 

多くのカレッジは、新しい戦力を育てたい会社・組織・お店が出資、運営に関わっている。

 

1年~3年くらいの訓練で、合格ラインに到達した学生に対して、仕事場の上司が採用を決定する。

 

ある特定の資格を得るための研修を含めたコースを2~3ヶ月のみ受講して、合格するとそれを利用した仕事が与えられる場合もある。

 

医療技師やさまざまな技術者も、必要な技術を研修で身に着けると、即実践の仕事に駆り出される。

 

未来の医療現場では、患者に対して担当医が決まると、専門の分野を得意とする人材をその都度集めて、チームで治療や手術を行う。

 

カレッジでは、そのための才能を見出し、その技量に応じた教育プログラムが用意されている。

 

医療技師の免許は、習得した技術の内容や本人の技術のレベルに応じて、ナンバーで付与される。

 

新種の感染症が拡大すると、その病気の治療に対応できる人達が集められ、研修が始まる。

 

研修が終わると、免許にその資格が加わり、すぐに即戦力として、感染した患者への治療に取り掛かる。

 

感染が治まって来ると、大勢いた医療技師も、別の仕事に就くためにカレッジに通って、新しい生活を始める。

 

医療技師も、他のドームに関わる技術者も、すべて公務員として働いている。ただし、必要とされる仕事を行う間だけ働く、臨時の公務員なのだ。

 

仕事がなくなると、収入がなくなるので、資格を利用して、別の仕事を見つけなくてはならない。

 

モチロン、臨時と言っても、働いている間は、資格や医療の重要性に対する特別手当があるし、働いている間に、その業績が認められたら、正式に採用される人もいる。

 

コロナ禍や災害によって、働けないときも、管理局から生活補助金が支給される。

 

1つの仕事を続けることもやりがいがあるという人もいれば、いろんな仕事を経験した方が、人生に幅ができるという人もいる。

 

資格のレベルによって、給料の違いはあるが、未来人はもらえる給料にあった生活の楽しみ方をネットで探して、副収入も得ながら、それなりにエンジョイしているのだ。

 

 各分野の技術者も、教育指導者も、需要に応じて、必要とされる人員が増減する。

 

研修を受けた内容のレベルで免許が与えられているし、その資格は定期的に継続されるかどうか、テストが行われる。

 

技術や知識は、常に新しいものが求められているので、働きながら、カレッジを利用して免許を取得・更新している。

 

企業に就職するより、自分で起業したいと思えば、起業に必要なことを学べるカレッジに進めばよい。

 

ネットで自分の得意なものを紹介して、金稼ぎを目指す若者も、カレッジで登録者数を上げる方法を学んでいる。

 

他のエリアで働く場合も、そのエリアの言葉や習慣などを学びながら、希望の仕事をマスターできるカレッジで研修を受けることになる。

 

それから、カレッジを終えると、もっと将来を見据えた技術や知識を得るためのラボがある。今の大学院と研究所に該当する。

 

ルール・ラボもその一つだ。

 

ルールは、裁判のたびにその内容の意義を問われることがある。裁判の結果を反映しながら、ドームに必要な新しいルールを作成するための資料を提供している。

 

新しいライフスタイルを開発するための研究も、日々さまざまなラボで行われている。

 

その成果を、新しいドーム社会に反映させるために、カレッジで学ぶ内容の指針とすることが、ラボの使命となっている。

 

カレッジやラボは、さまざまな老若男女が、さまざまな理由で受講・研究している。

 

 

MFiエリアでは、スクール卒業後の学費を、親や保護者が払うことはルールで禁止されている。

 

スクールは、義務教育なので無償だ。

 

カレッジ以降は、自分で奨学金を提供してくれる機関に応募して採用されるか、クラウドファンディングで、資金を提供してくれる人の協力を得て、進学しなくてはならない。

 

それができなければ、自分で働いて資金を得るか、ローンで就職後返してゆくか、資金を提供してくれる恋人を見つけて、就職後に2人で暮らすための生活費に還元してゆくか…だ。

 

 

ただ、未来人は

 

…今もそうかもしれないけれど…

 

恋愛も早熟だし、結婚といった共同生活など、決して長続きを求めることはできない。

 

 

将来の生活のためにと思って、恋人のカレッジの学費を出したのに、就職が決まるとさっさと別れを切り出して、資金を返してくれないという残念な話も多い。

 

こういった人間の習性に、教育側が歩み寄るべく、出会いと別れが、もっとも適切に行われるように、スクールの上級コースで恋愛学を必修科目として履修する。

 

もっとも、ラブラブなおしゃべりや、それ以上のことを想像している君には申し訳ないが、そうではない。

 

むしろ、お互いに選び合った相手と、一緒にどれだけの困難を乗り越えられるかといった課題があり、それに対して、お互いが協力できたかといった評価も成績に関わる。

 

だから、自分のことだけでなく、相手のことも常に考えないといけないので、この単位を修得するのは、決してラクではない。

 

 

この教科で、どれだけお互いのことを思い合って、共に幸せを目指すための行動ができるかといった経験

 

…時には、逆に苦くてつらい経験もあるが…

 

それをひとつひとつ積み重ねることで、社会人になってからの、実際の恋愛に役立てる目的で導入された。

 

今も、男女を区別しないジェンダーが増えているが、未来においても、自分の身体の性と心の性が違うなど、男女の区別を拒む子供達は多い。

 

恋愛学も、性の違う相手を選ぶ必要はなく、恋愛の対象となる人と一緒に、いろんな体験を積み重ねることで、相手を大切な存在として、接するようになることが教育の目的なのだ。

 

スクールでは、恋愛学や生徒が個別に選択する授業は午後に行い、子供達が社会で生活するのに必要な授業を午前中に行っている。

 

まず、宇宙へと発展し始めた未来人には、世界中で通じるコミュニケーションをマスターする義務がある。

 

未来のコミュニケーションは、先生がヒタイに汗して、生徒に文法や単語を覚えさせようと躍起になる必要はない。

 

暗室にした学習ルームで、自分のレベルにあった会話を選択して、ヘッドフォンから流れてくる音を聞き分けて、言葉を脳に記憶させる。

 

それが終わると、マイクを通じて発音練習。各席に設置してあるマシンが採点して、アドバイスをしてくれる。

 

生徒はテストのたびに、自分の成績を先生に送信する。

 

先生は生徒の成績を管理しながら、生徒の進路や悩みの相談にのっている。

 

キラシャのように、授業中も意識がボーっとどっかに飛んでいる生徒にも、目が離せない。

 

また、地球を含めた銀河宇宙に関する授業は、単元ごとに専門分野の先生が担当。映像を見せながら、詳しい内容を説明、生徒が理解できたかどうかをテストで判定する。

 

他の科目も、生徒は先生の説明を受けた後で、自分に合ったレベルのテストを受ける。

 

エリア言語や共通語の学習、ルールや社会の基本的知識に関する授業は、必修で、短い時間で集中して行われる。

 

 

計算問題に関しては、ただ答えが合えばよいのではなく、どうやって答えを導くか、これを解くことで、どういった問題の解決に役立つか、という理解の仕方も、テストされている。

 

 

生徒はテストを受けるたびに、自分の成績レベルを、マシンやMフォンで確認する。

 

しかし、レベルが高いほど周りに威張れるとか、自慢できるかというと、そうではない。

 

なぜなら、スクールを卒業してから、希望のカレッジへ行くために、必要な単位さえ取れたら、良いのだ。

 

ヘタに高得点を取り続けると、同じクラスの仲間から、飛び級したいのかと疑われ、かえって仲間はずされやすい。

 

この時代にも、授業が物足りなくて、飛び級して早くカレッジへ進もうとする生徒がいて、周りからのやっかみや、イジメを受けることが多いのだ。

 

また、キラシャが時々思うように、下級生と一緒に勉強がしたいなという子供もいる。

 

早い話が…落第だ。

 

キラシャは、運動機能は男の子にも負けないくらい発達しているのに、計算問題や知識問題は大の苦手だ。

 

問題を考えていると、なぜだか途中でまったく関係のない、とんちんかんなことを考え始めて、間違った答えを選んでしまうのだ。

 

スクールには、いろんな子供が集まっている。理解の仕方が異なるので、集団で学ばせると落ちこぼれてゆく子供が多い。

 

スクールにいると、嫌いな科目も強制的に学ばなくてはならないし、スクールで学びたくても、友達とうまく付き合えず、保護者の部屋にステイする子が多い。

 

そんな子のために、オンライン授業も活用されている。

 

家庭教師のように、1対1で学べる子もいるが、ステイホームする子供を十人単位でリモート授業する場合もある。

 

参加者が複数だと、キラシャのようにボーっとして、ついてゆけない子もいるが、リモートの先生が面白おかしく説明すると、子供達は笑いながら授業を楽しむことができる。

 

ただ、リモートの勉強が偏ってしまうと、進学先で困ることもあるので、必要最低限の知識は、学年末のテスト前に急ピッチで学ばなくてはならないが…

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第1章 未来社会 ⑤⑥

2021-08-27 16:03:03 | 未来記

2005-01-11

5.未来のスポーツ

 

キラシャと幼なじみで仲の良いタケルは、キラシャより一足先に11歳を迎えた。

 

彼は、MFiエリアで流行っているパスボー・ゲームの主力選手でもある。

 

午後の授業は、スポーツやミュージック、アート、科学実験など、生徒が希望する講座を選択して受講する。

 

タケルは、時間が許される限り、スポーツの時間と、その後夕食まで行われているクラブ活動の時間、ほとんどをパスボー・ゲームのために使っていた。

 

この未来のスポーツ、パスボー・ゲームは、1チームの出場者が6人。監督の指示で何度か選手交代が行われる。

 

天井の高さと横幅が同じ球型の壁に囲まれた、すべてがコートとして競技を行う。

 

コートの中央から上下25度線までは、周りを強化ガラスで覆われ、観客はその外側に設置してある観客席から応援する。通気穴からは、選手の熱気も伝わって来る。

 

試合が始まると、球状のコートの天井にポツンポツンとある穴の、どこから飛び出してくるかわからないボールを追い、先に取った方が、先攻で主導権を握る。

 

空中に浮くスケボーに乗り、球状のコートの中をグルグルと移動しながら、金色に光り輝く小さなボールを追いかける。

 

ボールを奪ったチームの味方同士が、ラケットを使ってパスを繰り返しながら、ゴールへ。

 

ゴールは、コートの中央に浮いている、四方八方穴の開いた、サッカーボールを大きくしたようなカゴの中に入れば、5点。

 

カゴの中にボールが入ったとたんに、

 

 

ゴーォォォ―ル!!!のアナウンス

 

 

同時に、ボールを入れたチームの選手がスポットライトを浴び、シュートした選手の指定したテーマ曲が場内に流れる。

 

カゴは常に上下左右に移動しているので、移動先を考えに入れながら、シュートを決めなくてはならない。

 

観客前の強化ガラスの面にも、開いたり閉じたりしている、小さな穴があって、これにボールをたたき入れると、2点の追加。

 

ゴーォォォ―ル!!!というアナウンスは、真ん中のカゴへのゴールより、ややおさえめ。

 

だが、ボールが入った穴の周りがと照らされ、入れた選手にもスポットライトが浴びせられる。

 

このゲームは反則にも厳しい。相手が故意にぶつかって来たら、抗議をすると、すぐに3Dホログラムのビデオを再生して判定される。

 

反則した方が、3点の減点。ラケットで殴ったとなると、6点の減点と退場。

 

選手は、コート面の小さな穴か、中央の空中にさまようカゴをめがけて、ボールをラケットで変化させながら

 

シュ

 

時には、激しいボールの取り合いで、ケガ人がホスピタルへ運ばれることも・・・。

 

ヘルメットやサポーターを身につけていても、ぶつかる衝撃で選手はアザだらけだ。

 

試合が白熱しすぎて、両チームが入り混じり、殴り合いのケンカになることだってある。

 

前半15分と、5分の休憩をはさんで、後半15分の短い時間で勝負が決まる。

 

空中での回転ジャンプとパスを繰り返し、ゴールの動きに合わせて自由自在に動きまわり、絶妙なタイミングでシュートを決める、パスボーのプロチーム。

 

アニメ・宇宙船艦ヤマトの主題歌を、自分のテーマ曲に指定しているタケル。

 

自分もプロのチームに参加して、新たな得意技を編み出して、観客を思いっきり沸かせるシュートでこの曲を流してみたいなぁと、ずっと夢に見ていた。

 

パスボー・ゲームは、他のエリアでも流行っているゲームなので、Mフォンで、いろんなエリアの試合が観戦できるし、ステーション広場でも巨大な3Dホログラムで楽しめる。

 

熱烈なファンは、やっぱり熱戦を直接肌で感じるのが最高だ。

 

パスボーの会場では、アルコール入りのドリンクを片手に、敵同士がお互いの選手をなじっては、自分のお気に入りのチームを応援する。

 

と空気を切るような勢いで、スケボーをあやつり、目の前を通り過ぎる選手達。

 

酔いがまわった観客からは、遠慮なしにヤジが飛んで来る。

 

「もっと、早くボールを取れ、バカやろー」

 

「おまえのせいで、点取られたじゃないか、このアホが!」

 

そんなヤジに、選手はチェっとつばを吐き出して、必死でボールを追いかける。

 

大人の激しいスポーツも観客を魅了するが、子供の小さくて、すばしっこい動きも、パスボーを愛するファンにとっては、たまらない魅力だ。

 

医療技師をしているタケルの両親も、激しいスポーツに熱中している我が子を心配しながら、試合会場へと駆けつけた。

 

チームの中でもシューター№1として、監督からもっとも信頼されているタケルは、試合のたびに、応援する女の子を増やした。

 

チアガールも応援に駆けつけ、悲鳴に近い声でタケルの名を叫び、他の選手の負けん気を誘った。

 

しかし、タケルは相手チームの隠れた反則行為や、観客のヤジにもまったく動じることなく、冷静にチームの得点を加えた。

 

大事な試合に勝った夜は、家族でレストランへ行き、楽しく話しながら団らんを過ごす。タケルにとって、それが幸せなひとときだった。

  

2005-01-14

6.小さな恋

 

タケルとキラシャ。

 

パスボーのヘルメットをはずした時、キラッと目が光るのが印象的なタケルは、端正な顔立ちで、応援する女の子を魅了する。

 

キラシャの方は、生まれたころはふっくらして、少女らしい顔立ちだったが、厳しいトレーニングのせいか、年々、顔つきも男の子らしく成長している。

 

2人は、初級コースのころからずっと同じクラスで、時には言い合いのケンカもするけど、勢いあまって絶交しても、気がつくと前よりずっと気持ちが通い合っている。

 

水中に潜ったり、走ったりすることには男子にも引けを取らないキラシャだが、ボールを使ったスポーツは苦手なので、パスボーに関しては、タケルにかなわない。

 

タケルの出場するゲームには、手作りの旗を持って大声で応援をすることもあるが、タケルには、いい迷惑だったりして、それがケンカの原因なのだが・・・。

 

それでも時々、お互いに機嫌がいい時は、タケルの家族とキラシャの家族が一緒に食事をしていた。

 

まだ10歳のキラシャに、恋愛という言葉は早すぎるかもしれないが、タケルには、他の男の子にはない、赤い糸のようなものを感じていた。

 

もしも、2人とも一緒に上級に進級したら・・・

 

 

・・・ここで、“もしも”という言葉を使うのは、

 

2人とも勉強が苦手で、ヘタをすると進級テストに落第する可能性もあるからだ。

 

恋愛学のパートナーは、タケルだけ・・・。

 

キラシャは口には出さないものの、心の中でずっとその気持ちを温めていた。

 

義務教育だが、未来の教育は今より厳しい。

 

特に中級コースからは、進級テストで合格点に達していないと、再テストを受けなくてはならない。それでも、合格した科目が必要な単位数ないと、留年だ。

 

授業だけで理解できない子は、土曜日も補習を受けているが、試験が近づいてくると、子供達は平日の夜も自主的に勉強に取り組んでいる。

 

キラシャとタケルも、自分の成績に危険信号を感じてからは、仲間と一緒に広い食堂の一角を陣取って、肩を寄せ合って勉強を始めた。

 

しかし、パスボーの練習でほとんどの体力を使い果たしているタケルは、しばらくすると、キラシャの肩を借りて眠り始める。

 

はっと気づいたキラシャは、照れ隠しに周りの仲間に「やだね~」と言って、タケルを起こそうとするが、皆あわててそれを止めた。

 

仲間はみんな、キラシャの気持ちに気づいているし、タケルが疲れていることも良くわかっている。

 

2人をかばおうとしてか、タケルのパスボーチーム仲間のケンが、口をはさんだ。

 

「タケルはだいじょうぶだよ。こいつは、ヒーローなンだ」

 

子供達は、お互いの口に人差し指をあてて、静かに勉強を続けた。

 

自分の肩で熟睡しているタケルに、誰より頼られていると感じるキラシャだったが、決してライバルがいないわけではない。

 

タケルに群がってくる女の子は多いし、そんな彼女らに、タケルの方も顔を赤らめながら話していることもある。

 

特に、同じクラスのマギィとジョディは、チアガールの中でも目立つぐらい、タケルの応援に力を入れていた。

 

タケルに関しては、女の子らしいジェラシーを感じるキラシャだったが、一方でタケルの様子がおかしいことにも気がついていた。

 

パスボーの練習を休んだ日。一緒に勉強しようと言ったら、用事があるからといって、プイッとどこかへ行ってしまった。

 

担任のユウキ先生には、何やら相談をしているようで、秘密の話があるらしい。

 

いつもならキラシャがそばへ行くと、すぐに振り向くタケル。

 

いきなり後ろから肩をたたくと、びっくりして無茶苦茶に怒り出した。

 

そのくせ、遠い目をして、悲しそうなため息をついている。

 

『どうして? 』

 

『何があったの? 』

 

目が合えば、お互いすぐに分かり合えたのに・・・。

 

 

タケルが試合に出なくなったせいで、タケルのそばに群がる女の子も減ったが、そのかわり家族同士の食事もなくなってしまった。

 

このままタケルが、どんどん遠くに離れて行きそうな予感がして、キラシャの不安は募るばかり。

 

そんなある日、タケルが休んだ学習ルームで、ユウキ先生が突然こんなことを告げた。

 

「タケルは、家庭の事情で火星へ移住することになりました」

 

学習ルームは、騒然となった。ユウキ先生は、皆が静まるのを待って、話を続けた。

 

「急なことでびっくりしていると思うけれど、旅立つ彼のことを応援してほしいと、先生は願っています。

 

火星へ出発したら、少し長い旅になるから、メールが送れるよう宇宙船のことは確認を取っておきます。

 

出発するまで、1週間ありますが、タケルのことはそっとしておいてあげてください・・・」

 

 

キラシャの顔がスーッと青ざめ、そんなキラシャをケンが心配そうに見つめた・・・。

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