2008-02-28
1.ヒロの好奇心
学習ルームとのオンラインが途切れて、病室でたった2人だけになったキラシャとパール。
キラシャは、心の底からタケルのことが好きだと思ってたのに、今まで耳が聞こえないなんて、気づかなかったこともショックだった。
それに、今どんなにタケルを助けてあげたいと思っても、何もできないキラシャ…。
ふてくされて、ベッドにもぐり込んでいると、ヒロからの音声メールが届いた。
[ヒロだよ。オレ、ロングホームルームに退屈してたから、タケルにメールしたんだ。
だって、あんな短い時間に、クラスで仲良くしようなんて、結論出るわけないじゃないか。
それより、タケルがどうなってるのか知りたい。
ダンがオレに任せるって言ってたから、これからユウキ先生に相談して警察に連絡してみるよ。
オレは、防衛軍にも知り合いがいるンだ。何かあったら、防衛軍にも動いてもらわないとね。
タケルのことは、あンまり好きじゃないけどさ。
あいつが戻ってきたら、また遠慮なしにケンカできるからな。
あいつ、なンかオレを本気にさせるトコがある。
オレ、あいつを助けてやりたいンだ。
何か事件に巻き込まれてるかもしれない。
解決できたら、バッジもらえるかもな。
タケルのアドレスも入れてるから、キラシャもタケルにメール送ってみればいい。
早くメールしないと、マギィが先にタケルにつまンないメールするかもよ。
じゃ、パールにもよろしく! ]
メールをパールにも聞こえるように、音声モードで聞いたキラシャ。タケルのこと好きじゃないというヒロに、キラシャはムッと来たが、いかにもヒロらしいコメントだ。
「ヒロガ タケルヲ タスケル? ヨカッタネ」
「こんなこと、めずらしいンだけどね。ヒロって、へんなトコで気が利いてるンだ。
物知りすぎて、おせっかいなトコもあるけど…」
『きっと、あたしのそばにパールがいるから、ヒロはイイトコ見せるチャンスだと思ってるンだろうね。まぁ、ヒロはパールのタイプじゃないから、別にいいけど…』
それでもヒロのおかげで、タケルにメールが送れる。
そのことが、キラシャにはうれしかった。
そばで黙って見守ってくれるパールにも、心の中で『ありがとう』と思いながら、タケルへのメッセージを考え始めた。