未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第10章 危険を感じながら ④

2021-06-29 16:02:48 | 未来記

2008-02-17

4.呪われた船

 

タケルが、キララとの話に夢中になっている時、トオルも一息入れるため、ミリより一足先に、同じレストランに入ってきた。

 

タケルが今まで見せなかった明るい表情で、いっしょうけんめい話をしている姿に気がついて、思わず微笑んだ父親だったが、何だか妙な気がした。

 

そこへ、どこかの船長らしきスーツを着た、白髪の男性が心配そうに声をかけてきた。

 

「あそこにいる男の子は、あなた方の息子さんですか? 」

 

「はい、そうです。でも…、いったい、あの子は誰と話しているんでしょう? 」

 

トオルには、タケルの相手が見えなかった。

 

ここへ来て、目も悪くなったのかと自分を疑ってしまった。

 

「…お気の毒に。幽霊とです。早く、あの子から引き離さなければ…」

 

「うっ、ちょっと…、説明していただけませんか?

 

なぜ、うちの子が…」

 

「私にも、よくわからないが、このステーションや、

 

ここを出入りする宇宙船の乗客で、何度かこういうことがあったのです。

 

そして、あの子が現われるたびに、このステーションで恐ろしいことが起こりました。

 

だから、今回も…」

 

「それじゃぁ、うちの子は?」

 

「あ、いやいや。お宅の子が殺されるとか、そういうことではないのです。

 

…ただ、危険なことは確かです。早く手を打たないと…」

 

「どうしたら、いいのでしょう。…教えてください」

 

その白髪の男性は、事のあらましをトオルに伝えた。

 

その幽霊は、何年か前に船体を傷つけたまま、漂流してきた宇宙船に憑いて、浮遊してきたものらしいこと。

 

その宇宙船が発見された時、姿が見えないのに、女の子の泣き声や笑い声が聞こえたこと。

 

その宇宙船を解体処分した後、宇宙ステーションのあちこちで、謎の女の子が出没するようになったこと。

 

その後、宇宙ステーションで疫病が流行ったり、宇宙船の発着場で爆発が起こったりしたこと。

 

その幽霊と話した子が、謎の病気にかかり、今も入院している子がいること。

 

それを解決するには、早く幽霊から離れることだと言われていること…。

 

 

トオルは、話の多少聞き取れなかった部分も、自分で良い方に解釈しながら、白髪の男性に会釈して離れ、深呼吸してタケルに近づき、普段通りに話しかけることにした。

 

タケルは、ようやく話を終え、父親が近づいてくるのに気がついたようだ。

 

「パパ…。僕、この宇宙ステーションに来て良かった。紹介するよ…、あれっ?」

 

「どうした? タケル。何だか、さっきは楽しそうにしてたじゃないか」

 

「そう、パパ見てたの。キララって女の子としゃべってたンだ」

 

タケルはキョロキョロと、あたりを見回した。

 

「そのことだけどね。タケル。まぁ、先に食事を済ませよう。

 

ほら、ママもやってきた。さぁて、何を注文しようか…」

コメント
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