2008-02-16
3.久々のデート
タケルの両親との待ち合わせの場所は、レストランに近いロビーだ。このレストランだと、時間を気にせずキララと話ができそうな気がした。
2人で空いた席を見つけ、ウェイトレスが近づくと、キララはメニューを確認して、おいしそうなドリンクを注文した。
タケルも、すぐに同じ物を注文した。
「今まで、アンタどこにいたの?」
「えっ、地球だけど」
「そうみたいね。MFiエリアかな? …なんとなく、わかってたけど」
「わかってた?
『…オレの共通語って、なまってるかな~』
キララは…?」
「アタシ? …ちょっと遠いとこかな?」
「どこ…?」
キララは、ウェイトレスからドリンクを受け取り、おいしそうに飲みながら言った。
「フ~ン。まだ、教えらンないね。それより、アンタ何かスポーツやってなかった?」
「えっ?どうして?」
タケルも、のどが渇いていたせいか、ドリンクを受け取ると一気に飲んだ。
「なんとなく…。アタシって、感が強いんだ。当ててみようか…」
「うン!」
「そうだね。…ちっちゃなボール使ってるでしょ」
「あってる!」
「それから、ラケットも使ってる」
「そう!」
「卓球とか…」
「あらら~」
「今のは、軽い冗談だよ。バドミントンでも テニスでもないでしょ?」
「うン!」
「そろそろ、当てに行こうか。…パスボーでしょ」
「あたり!!」
「もう、最初からわかってたよ。あんたに好きな子がいるってこともね!」
「えっ!?」
タケルは、ドリンクをゴクリと音をたてて飲み込んだ。
「アタシって、透視能力があるンだ…」
「そう。さっきから、気になってたンだけど、なんで掃除してたの?
何か罰を受けるようなことしたから?」
「ウ~ン… ちょっと違うかな? 」
「MFiエリアじゃ、掃除はスクールのルールだからやってるンだ…
廊下とか、トイレやシャワー室は、罰を受けたときだけだよ! 」
「別に罰でやってるわけじゃないのさ。
アタシを見て、こんな風におごってくれる人もいる。
それにね。掃除しながら人を見てると、いろんなことがわかってくるンだ…」
「あンな人がいるところで掃除なンてさ。
人に見られたら、なンか恥ずかしいし…」
「でも、アタシは慣れてる。
家族もいないし、人に見られて恥ずかしいなんて、思わない。
…家族って、いたらいたで厄介なんだろうね。ああだ、こうだってうるさくって…」
「そんなことないよ。僕は家族がいなくなるなンて、考えたこともないンだ。
他の誰より心配してくれるし、応援もしてくれるし…」
「甘えん坊だね」
「透視って…、どのくらい、わかるの? 」
「必要なことだけかな? アンタの顔見たら、ふっと浮かぶンだ。
…キラシャって、アンタのガールフレンド? 」
タケルは、頭を横に振った。
「あの子は、どっちかと言うと親友なンだ。
オレといると文句ばっかだけど、イイ時もワルイ時も、応援してくれるンだ…」
「だから、好きだった…でしょ?」
「ウ~ン…でも、今はもう関係ない。きっと、オレのことなンか、忘れてる…」
タケルは思い出して、Mフォンを確認した。
「ほら、もうずっとメールが来てないよ。
きっと、ケンやマイクと遊んでいる方がいいンだ。
オレだって、他の子と遊びたいし…」
「それで、アタシとこうしているわけだ。
…OK。ここにいる間は、アタシとデートし放題だね。
よし、楽しみにしておこうっと」
「まぁ、そういうことだね…」