未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第21章 同じ時を生きる君に ⑬

2021-02-06 16:07:25 | 未来記

2021-09-13 16:13:00 | 未来記

 13.オレら、被害者だったンだぜ!

 

ケガをして縄で縛られた男達は、後でやって来る護送車に収容されるという。

 

タケルと少年達は隊員に手錠をかけられ、軍の輸送機に乗り込んだ。

 

しかし、キララは姿をあらわさなかった。

 

『きっと、見えないところでオレらのことを見てるンだろうな…』

 

少年達は、皆そう思いながら、これから自分達がどうなるのか、見当もつかず、不安な時を過ごしていた。

 

男達に殴られて口から血を流し、頭から砂まみれで、服もボロボロの少年もいる。

 

少年達が激しい格闘で体力を消耗し、ぐったりしているのに気が付いた兵士が、輸送機にストックしてあった緊急時用のハンバーガーを支給してくれた。

 

 

少年の1人が、「これが地球に帰って、最初の食べ物だ…」とポツリと言った。

 

タケルも、地球で食べるハンバーガーを、しみじみと噛み締めながら食べた。

 

そばで少年達の無心に食べる様子を見ていた兵士が、なぜこんな危険な所へ転送してきたのかと、尋ねた。

 

「本当のこと言ったって、オレらのこと信じちゃくれないだろ?

 

それでも、聞いてくれるンだったら、言ってみるけどさ…

 

最初は、オレら被害者だったンだぜ!

 

宇宙ステーションでゲームに夢中になって、

 

親の言うことも聞かずに、遊ンでたオレらも悪かったと思うけど…

 

宇宙で悪い奴らに脅されて、ゲームで取ったポイントを巻き上げられて、

 

気が付いたら、そいつらの手先にさせられて…

 

もうそんな生活がイヤだったから、地球に戻って来たンだ。

 

でも、悪い奴らの仲間と戦わなきゃ、元の生活を取り戻せないって

 

ウェンディが言うから、死に物狂いで奴らをやっつけたンだ…

 

ウェンディは、今はいないけどね… 」

 

リーダー格の少年が、やるせなさそうに答えた。

 

兵士が「ウィンディ? 女の子かい? 」と尋ねた。

 

「そうだよ。まぁ、女の子って言ってもね…

 

…おっと、これ以上は、言わない方がよさそうだ。

 

頼むから、聞いてくれる?

 

オレらさ、あいつらのイイようにされて、殺されるくらいなら…

 

刑務所でも監獄でも、どこでも入るよ。

 

真面目にやってたら、出られるんだろ?

 

今度こそ、普通の暮らしがしたいンだ。

 

家族がいて、普通に働いて、

 

家で子供と一緒にゲームやって、盛り上がって…

 

オレらにもできるよな?

 

なっ! 」

 

その少年は、周りの少年達に投げかけるように言った。

 

誰からも返事はなかったが、悔しそうに涙を拭きながら、少年達はハンバーグにパクついていた。

 

兵士は、少年達に向かって言った。

 

「残念だが、刑務所は君達が思うよりひどい所だ。

 

牢屋に入るだけならいいが、周りには、いろんな罪人がいる。

 

まじめな人間の方が、ねらわれる。刑務所内のケンカで、命を落とす者も多い。

 

君達の罪がどの程度かわからないが、長くなれば顔つきまで変わってしまう。

 

無事に出られた時に、君が言ったこと、忘れてないといいがね… 」

 

それを聞いた少年達は、冗談じゃないと、脱出を図る決心をした。


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