棋楽庵の九州将棋ふまわり日記

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■「由太郎ノートNO.019-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第2局解説:有段者編」

2009年11月21日 | ◆由太郎ノート
★「由太郎ノートNO.019-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第2局解説:有段者編」
 ▲早咲誠和 対 △神品和男(平成21年7月12日対局)

                 棋譜解説:平成21年全日本アマチュア将棋名人 山崎由太郎
                 編集責任:棋楽庵


▲県名人 早咲誠和
△挑戦者 神品和男


=第1譜=


(指し手 1~29)
▲2六歩  △3四歩  
▲2五歩  △3三角  
▲7六歩  △4四歩  
▲4八銀  △4二銀  
▲5八金右 △5四歩  
▲6八玉(第1図)
      △4三銀  
▲9六歩  △9四歩  
▲1六歩  △1四歩  
▲7八銀  △3二金  
▲7九玉  △8四歩  
▲4六歩  △6二銀  
▲4七銀  △5三銀  
▲5六銀  △5二金  
▲3六歩  △4一玉  
▲3八飛(第2図)

 この戦型は、このクラスの方が一番
興味を持って見てたかもしれません。
雁木に右四間と力自慢のおじさん達が
よく使いそうな戦型です。

 実は、この戦型は僕もこのクラスの
時にかなり指し込みました。どちらも
有力と思いましたが、なんと言うので
しょうか、一般的な定跡形の方がより
有力と思い始め、無理に自分から形を
決めることはないということで、いつ
のまにかやめてしまいました。

 ただ、早咲さんの指した▲3八飛は
見えた方がいなかったのではないでしょ
うか。やはり、みなさんは▲4八飛を
予想されたでしょう。

 実は、この局面は攻勢をとるなら4
つの形があるのです。まずは、みなさ
んが大好きな右四間▲4八飛。玄人好
みの▲3八飛、▲2六飛。また、今回
は△4五歩の反撃があるので成立しま
せんが、▲7七角~▲5九角~▲2六
角の3手角もあります。いずれも、有
力で早咲さんは今回、▲3八飛を選ん
だということです。

 強くなると言うのは、迷わなくなる
のではなく、迷うようになるものだと
思っています。このクラスの人たちは
「なぜ▲4八飛と指さないのだろう?」
でしょうが、上手い人達は「▲4八飛、
▲3八飛、▲2六飛いずれも有力、さ
てどうしよう」ということになります。

 ただ、もう1つ上の領域があり、こ
れは僕より遥かに上の世界ですが、こ
の局面では▲3八飛の一手という考え
です。下の者から上の者なんて評価で
きませんからわかりませんが、早咲さ
んはその世界にいるのかもしれません。

 これは、ある有名なプロ棋士が言っ
た言葉ですが、「強いというのはどれ
だけ読めるかではなくどれだけ省ける
か」だそうです。これは、個人的には
好きな言葉でいい言葉だと思います。



=第2譜=


(指し手 30~48)
      △8五歩  
▲7七角  △7四歩  
▲3五歩  △同 歩  
▲同 飛  △3四歩  
▲3六飛  △7二飛  
▲3五歩  △同 歩  
▲同 飛  △7五歩  
▲3四歩  △5一角  
▲6六角  △7六歩  
▲8五飛  △8二歩(第3図)

 おそらく、このクラスが一番自爆す
る局面が第3図でしょう。僕は、この
クラスにいたことが長かったのでよく
わかります。

 ありがちなパターンなのが、第3図
から▲7五飛△同飛▲同角で飛車を打
ち合って、最後に7六の拠点に泣かさ
れるというというものです。

 ▲7五飛が良いか悪いかはさておき、
後手の△5一角(飛車の打ち込みに強
い)、△7六歩(7七にぶち込む拠点)
を活かすような指しては避けたいとこ
ろです。

 では、どうするのか。皆さん、将棋
は何からでしたか?



=第3譜=


(指し手 49~59)
▲4五歩  △3三歩  
▲2四歩  △同 歩  
▲3七桂  △3四歩  
▲4四歩  △同銀右  
▲2二歩  △同 金  
▲4五銀(第4図)

 「将棋は歩から」ということで▲4
五歩。そして、神品さんも同じく将棋
は歩からということで、△3三歩。こ
こですよ。有段者が高段者に騙される
局面というのが。

 高段者は有段者に「アレ? 調子良
いと思ったんだけど、俺の攻めってあ
んまりうまくいってなかったのかな?」
という疑心を持たせる指し方をしてく
るのです。そして、9割方が以下有段
者側が自信を失って自爆というパター
ンです。

 ▲2四歩~▲2二歩は高級な手筋で
す。おそらく、四段の人も見えてなかっ
たのではないですか。▲3七桂は高段
者なら第一感なんですが、2筋の絡み
を入れられるかどうかがポイントです。

 有段者の人には今の攻めは難し過ぎ
るでしょうから、流れと▲3七桂とい
う全ての駒を働かせようとする感覚を
学んで欲しいです。あと出来れば、
「手順に」全ての駒を働かせるという
ことを学んで欲しいです。

 言い方が難しいのですが、早咲さん
の攻めは、手順として繋がっていませ
んか?ブチッ、ブチッと攻めが途切れ
てません。
 
 注目してほしいのは
・▲4五歩の「将棋は歩から」
・2筋の絡みで、角に活を入れる
・▲3七桂は遊んでた桂馬の活用+銀
 に活を入れる
という点です。

 気が付きましたか? はじめは歩だ
けの絡みだったのに手順が進めば飛・
角・銀・桂と攻めの理想形になってい
ます。
これぞ、早咲マジック!!

 早咲さんの攻めというのは、はじめ
は歩だけでも、気が付いたら攻め理想
形になっているのです。この理由は僕
の実力不足でまだ解明出来てません。
お伝えできなくてごめんなさい。

 「まだ、歩だけの攻めだ」→「! 
飛車、角が来たな、だが、大駒だけの
攻めは怖くない」→「うっ、銀がきや
がった」→「げげげ、桂・香まで働き
はじめた」→「ぐはっ、…投了」この
思考回路を対早咲戦で何回繰り返した
ことか、ううっ。(T_T)

 手順はまだ続きますが、以下は高段
者編に飛びます。



=第4譜=


(指し手 60~133)
      △5五銀  
▲4四歩  △6六銀  
▲同 歩  △3二銀  
▲6一銀  △9三桂  
▲6五飛  △7四飛  
▲3四銀  △6四歩  
▲2三歩  △1二金  
▲3五飛  △3三歩  
▲5二銀成 △同 玉  
▲4三銀不成△同 銀  
▲同歩成  △同 玉  
▲4四銀  △同 玉  
▲4五飛  △5三玉  
▲4一飛成 △8四角  
▲4五桂  △6三玉  
▲6一竜  △7三玉  
▲7二金  △8三玉  
▲6三竜  △7三銀  
▲5三桂成 △4一角  
▲6一竜  △6六角  
▲6三成桂 △8八銀  
▲6八玉  △7七歩成 
▲5九玉  △8四銀  
▲9一竜  △7六飛  
▲7七銀  △同銀成  
▲4一竜  △6七銀  
▲同 金  △同成銀  
▲5六角  △6五銀  
▲6七角  △5七角成 
▲7六角  △同 銀  
▲5八銀  △7五馬  
▲4三竜  △3七角  
▲4八歩  △同角成  
▲同 竜  △同 馬  
▲同 玉  △4三飛  
▲4七角  △5六金  
▲8二金  △同 玉  
▲7二飛(投了図)  
まで、133手で早咲さんの
勝ち

 っと、思いましたが、1つだけ言い
たいことがありました。

「知る者は言わず言う者は知らず」
            (老子)
 
良い言葉ですね。僕の好きな言葉の1
つです。

 131手目(▲8二金)では▲9二
角で詰みとわかった方は強い。強いで
すが、それを口にする人は僕の経験か
ら言えることは、九分九厘、弱い人で
す。

 ちなみに、本譜132手目△7四玉
なら後手玉は詰みませんが、▲8三角
以下5六金を抜かれて終わり。

 なんと言うのでしょうか、今回はど
うでもいい事でもあるのですが、強く
なってくると、「実戦心理」というも
のを考えるようになります。つまり強
くなってくると相手の間違いというも
のをあまり指摘しなくなってきますし、
指摘する場合でも、指摘する側が申し
訳なさそうに言っています。

 感想戦などで第3者などの言動を見
ておけば、その人が強いか強くないか
わかって結構面白いです。以上、豆知
識?でした。





 


 


◆関連リンク
「由太郎ノートNO.015-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第1局解説:級位者編」 ▲神品和男 対 △早咲誠和(平成21年7月12日対局)
「由太郎ノートNO.016-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第1局解説:有段者編」 ▲神品和男 対 △早咲誠和(平成21年7月12日対局)
「由太郎ノートNO.017-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第1局解説:高段者編」 ▲神品和男 対 △早咲誠和(平成21年7月12日対局)
「由太郎ノートNO.018-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第2局解説:級位者編」 ▲早咲誠和 対 △神品和男(平成21年7月12日対局)
「第63期大分合同アマ将棋名人戦三番勝負」結果-NO.1(平成21年7月12日:大分市「割烹 百合」)
「第63期大分合同アマ将棋名人戦三番勝負」結果-NO.2(平成21年7月12日:大分市「割烹 百合」)



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