木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

『グローバリズム出づる処の殺人者より』

2013-02-19 23:57:10 | 日記



「グローバリズム出づる処の殺人者より」アラヴィンド・アディガ

インドの使用人事情がまる分かり。
副題を付けるとしたら、
~いかにして私は主人を裏切り、企業家として成功したか?~
ってとこか?


とある金持ちの坊ちゃんに運転手として雇われたムンナ。
とは言え、雑用係もかねアゴでこき使われる日々。
しかし、屋根のあるとこで寝られ、給料がもらえるだけでも、おんの字。
ビンボー家族の中では、もっとも出世したと言えるムンナ。
雇い主の坊ちゃんだって、その父や兄よりもずっと優しく思いやりのある人。
そう、これ以上望んではいけない程恵まれているムンナ。
ところが、ある事件がきっかけで、金持ちの冷酷さ、自分の存在の軽さを思い知る。
このままで終わっていい訳がない!
あとは決断と行動あるのみ…

中国の首相に宛てた手紙という設定で綴られる告白。
貧乏な大家族。
村を牛耳る金持ち。
賄賂を受け取る政治家や警察。
言いなりになるしかない使用人たち。

貧富の差の激しさが生む徹底した主従関係。
インド的家族のあり方、これがまた脅威。
まるで小さな独裁国家のようなファミリー。
主人の踏みつけにされるか、家族に餌食にされるか。
犠牲にされてたまるか!なサバイバル・ゲーム。

インドの田舎の様子、都会の様子。
金持ちとビンボー人の暮らしぶり。
運転手の日常がポイントをおさえて描かれてます。
詰め込まれているのに、とても要領よくさばかれてて読みやすい。
どのシーンも情景が目に浮かびますな。
決して清潔とは言えない環境が眼前に現れるのには、参りますが。
所変われば、で仕方ないですな。

面白いけど、ちょっと疲れるブッカー賞受賞作。



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