残された者は 「ムーンライト・マイル」

秋らしい気分の映画を・・・。

「ムーンライト・マイル」（Moonlight Mile) 　2002年のアメリカ映画。

ジェイク・ギレンホール、ダスティン・ホフマン、スーザン・サランドンという
演技達者なキャストで、映画館で上映されたのは２年くらい前。
地味にひっそり上映されて終わりました。


主人公ジョーの彼女は、結婚式直前に、発砲事件に巻き込まれて死んでしまう。
彼は、彼女の両親と共に暮らし始め、仕事を手伝うことになる。
まるで家族のように・・・。
しかし、彼には　どうしても言い出せない秘密があった。

穏やかで静かな哀しみに満ちた映画でした。
この映画を観て、たぶん、全然共感もできなければ　
泣けもしなかった、という人も多いかもしれませんが、
身近な人を亡くしたことにある人は　かなり共感してしまう映画かも。

親しい人が突然死んでしまうと、その悲しみや　怒りのやり場に困ってしまう。
他人は当事者を腫れ物のように扱い、当事者もまた、
笑ったり　幸せになったりしたら　亡くなった人に対して　
申し訳ないような気持になる気がします。
そして、死んだ人を美化してしまいがちです・・・。

この映画の場合、犯人がいるんですが、
ストーリーとしては　犯人への裁きによって
愛する人の死に対して決着をつけるわけではないので、
そのへんが不完全燃焼といえば そうかもしれません。
でも、結局は　どこかでふんぎりをつけて、
自分でその現実を乗り越えなければなりません。

そのきっかけとなる　裁判のシーン、泣けました。
死んだ彼女がどんな人だったのか　それまでは殆どわからず、
そのシーンで主人公によって語られるのだけど、
私にはそのシーンだけで充分すぎるほど　彼女の人柄が
わかった気がしました。

人のぬくもり。愛し、愛された記憶。
それがあるから　人は生きていける。たぶん。

エンドロールの一番最後に　こんなことばが。
"For all our loves...departed, or yet to arrive..."
この映画は、監督のブラッド・シルバーリングの実体験に基づくものだそうです。
恋人が、ストーカーに殺されてしまったそうです。

ジェイク君の寂しげな微笑み、きゅいんと上がった口元、
ふとした表情が上手いなー。好きです。
ダスティン・ホフマンの父親像、
スーザン・サランドンの台詞もよかったです。

そういえば　私はこの監督の「シティ・オブ・エンジェル」も
大好きだったのでした。
柔らかい黄色っぽい日差し、ムーンライトの冷え冷えとした青い夜。
好きな感じです。

ちょっと退屈かもしれないけど、じっくりと、静かな気持ちになりたい、
秋の夜長にはいいかも。