夏から秋へ今にもなんか降ってきそうな空模様の東京都美術館。
うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈展。
会期は7月22日~10月9日。

荒木珠奈(1970~)は、へんてこりんな可愛らしさとどこかゾワッとする感覚が混ざり合った不思議な世界観が魅力の美術家。
メキシコ留学時代に巡り合った版画の技法を取り入れ、版画・立体・インスタレーションなど幅広い作品を発表している。
今回の展覧会は、東美館の巨大な地下展示室に空間をつくり上げる。
ひたすらに底へ底へと降りていく。






日常と非日常の境目を行き来する旅。



メキシコの貧困層が住む地域では電柱から勝手に電気を家に引き込んで電気を失敬することが当然のことようになっているという。
夜になると世界中どこでも家々に灯りが灯る。
メキシコシティのそういう地域には違法で危険でけどたくましく生きるカオスな灯りが灯る。

観覧者も灯してみる。

鍵と箱が並ぶ。


観覧者は錠前のついてない鍵を持って、その鍵の番号のついた箱を探す。箱はランダムに並んでいる。
あった。

鍵を開けたらネコがいた。

この箱は荒木が育った団地のイメージらしい。
鍵を開ければそこには様々な室内がある。

その団地の先には暗い空間。
東日本大震災は暮らしを奪っていった。






越冬するためにカナダから米国カリフォルニア州とメキシコへ旅する蝶、オオカバマダラ。
オオカバマダラを模す。


観覧者はオオカバマダラの内に入ることができる。
しばし彼らの旅を思う。



そして最後に籠に入ってみた。


旅を終えて会場を出る。
だからどうということもない。
さえない曇り空。
昨日よりは涼しい気がする。
心が少し軽くなっていた気がしたがこの展覧会の最後の不思議。
