<むしまるQゴールド 熟考の2001年度 その9>
水の中の小さなクマ 作詞/平方宏明 作曲・編曲/大森俊之 歌/はっぴいENDO
クマムシというとお笑いコンビを思い起こす方がすっかり多くなったようですが、私がはじめてクマムシという存在を知ったのがこの歌でした。クマムシは緩歩動物門という独立した門を形成する生き物で、体長はほとんどが1mm以下という、顕微鏡じゃないとなかなか観察できない小さな体をしています。4対の脚でゆっくり歩く姿がクマに似ていることからクマムシと名づけられました。
クマムシの凄いのは、あらゆる動物の中でも最もタフな生命力を持っているところです。乾燥すると乾眠という状態になり、「百年、乾いたままでも 空気なくても、待っています」そして、水を得ると「生きかえるんです」。乾眠個体はこの他、絶対零度から150℃までの温度変化にも耐えられるし、真空から75,000気圧の高圧にも、宇宙線にも耐えられるというものすごさ。たいした奴です。
『水の中の小さなクマ』の元歌は、はっぴいえんどの『風をあつめて』(1971年)。ですます調の歌詞がまず似ていますし、ビデオクリップの冒頭に路面電車が登場するのは『風をあつめて』の1番の歌詞「起きぬけの路面電車が 海を渡るのが見えたんです」をイメージしたのでしょう。
そしてもう1曲元ネタにしているのが、遠藤賢司の『雨あがりのビル街 <僕は待ちすぎてとても疲れてしまった>』(1970年)です。この歌の歌詞を書き出してみます。
水溜りの中で 大きくゆれた街 しびれを切らした人々(みんな)は
ゆっくりと歩き始めた しびれを切らした自動車は 急ブレーキを踏む
僕は人を待ってたんだ もうずっと前から 僕は人を待ってたんだ もうずっと前から
ちっちゃな ちっちゃな女の子が ちっちゃな ちっちゃな足音を立てていった
それはほんとに ちっちゃな足音だったけど 僕にはとても大きく響いたんだ
だからもう帰ろうと思った
僕は人を待ってたんだ もうずっと前から 僕は人を待ってたんだ もうずっと前から
『水の中の小さなクマ』のビデオクリップの登場人物は、少女とクマムシだけ。『水の中の小さなクマ』は少女がクマムシを観察してつぶやく言葉を歌にしていますが、これに対して『雨あがりのビル街』は、水溜りの中で乾眠から目覚めたクマムシが少女のことを歌った歌の位置づけなんでしょうね。両方を聞くと、とてもあったかいんだからぁ、という気持ちになります。
はっぴいえんどは、1969年から1972年まで活動した伝説的ロックバンド。『カレーライス』(1971年)が有名な遠藤賢司さんは1969年にデビューしたフォークシンガーで、初期のアルバムでははっぴいえんどのメンバー、細野晴臣・鈴木茂・松本隆さんがバックを務めています。歌手のクレジットに元ネタのヒントがありますね。歌/はっぴいENDOのENDOは、遠藤賢司のENDOなのでしょう。
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