バグルスのデビュー曲、『ラジオ・スターの悲劇(Video Killed the Radio Star)』(1979年)は、テレビやVTRといった映像メディアに取り残されていったラジオ・スターの悲しみについて歌った曲です。こうしたメディアの盛衰は、新しい時代の寵児を生み出す反面、どんなスーパー・スターであってもまたたく間に忘却に追いやってしまう残酷な一面も持っています。そのため、これまでにもいろいろな作品がメディアの盛衰による悲喜劇を描いてきました。
例えば、サイレント映画からトーキーへ移行する映画界を舞台にした映画には、忘れられていくサイレント女優の悲劇を描いた『サンセット大通り』(1950年)や、吹き替え担当の女優をスターに押し上げるまでをコメディタッチで描いたミュージカル『雨に唄えば』(1952年)などがあります。
ラジオというメディアそのものへのオマージュを歌ったのはクイーンの『レディオ・ガ・ガ (Radio Ga Ga)』(1984年)。 レディー・ガガの名前はここから来ています。
ところで、『ラジオ・スターの悲劇』のビデオクリップは、MTVが開局して放送された最初のミュージック・ビデオだそうで、その後のミュージック・ビデオ全盛時代のきっかけとなった曲でもあります。斬新なエレクトリック・ポップで、そして歌のテーマがメディアの盛衰とスターの悲劇ですから、新しいメディアの誕生にぴったりですね。