<むしまるQ むしむし編 その13>
チョウの来た道 作詞/里乃塚玲央 作曲・編曲/佐橋俊彦 歌/堀江美都子
チョウの中には、渡り鳥のように何千キロも渡りを行うものがいます。代表的なのは、北米と中南米を行き来するオオカバマダラ、欧州とアフリカの間を旅するヒメアカタテハ、そして日本を含む東アジアを中心に生息するアサギマダラです。日本本土にいるアサギマダラの多くは、秋に南西諸島・台湾に渡りを行うそうです。
こうした渡りチョウが渡り鳥と異なるのは、同じ一つの個体が南下・北上を繰り返すのではなく、世代をまたがって渡りを行うということです。オオカバマダラの例で言うと、8月頃に北米中部で羽化した個体がカリフォルニアからメキシコにかけての地域に南下し、越冬する。その後、春から夏にかけて世代交代を繰り返しながら北上し北米中部に至る、というサイクルが観察されているそうです。南下する世代は、北上する世代よりも寿命が長いのだそうです。不思議ですね。
『チョウの来た道』は、世代を越えて繰り広げられるオオカバマダラの渡りをテーマにした曲で、雄大なオーケストレーションのロマンあふれる曲です。このクラシック風の曲は、冨田勲作曲の『ジャングル大帝のテーマ』を下敷きに作られたものでしょう。
ジャングル大帝の主人公白いライオンのレオは、子供のころ悪い人間につかまって動物園に売られそうになります。ロンドンに向かう船からなんとか脱出したレオは、故郷アフリカに向かって海を泳いで渡るのですが、その時道を教えてくれたのがアフリカへ渡るチョウの群れ(作品ではマダラチョウとなっていますが、ヒメアカタテハということになりますね)。物語序盤の名場面です。
オオカバマダラの話だけでも感動的なのにジャングル大帝のエピソードも重ねてイメージさせるとは、もうこの歌は涙なしには聴けません。