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退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界

2015-02-10 05:48:42 | 韓で遊ぶ


パン屋の子供
一軒の小さくてかわいいパン屋がありました。
10年の間、慎ましい生活をして貯めたお金で、やっと店を構えた主人は、陳列台のパンを見ているだけでも満足で、客が多い日は幸せな微笑が絶えることがありませんでした。
ところが、ある日からか、店の陳列台から、パンが1袋、2袋消えるようになりました。
「おかしいな。たくさん残っていたはずなのに、、」
おかしなことでしたが、主人は数え間違えたのか、もう売れてしまったのに忘れたのだろうと思いました。
しかし、疑惑のパン失踪事件は、毎日繰り返されました。
一体、誰の仕業なのか、犯人を捕まえようとした主人は、触覚をピンと立てて、パン屋に現れる人を一人一人見守りました。ですが。
主人のその監視網に引っかかった人は、他でもない自分の10歳の娘でした。塾へ行く途中店に立ち寄った娘は、お母さんがちょっと目を離した隙にこっそりパンを取ったのでした。
「なんという、、、」
次の日も、その次の日も娘のパン泥棒は続きました。
食べたいならば、いくらでも食べることができるパンを、あえてこっそりもって行く理由が一体何なのか、とても気になった主人は、その日もパンを2袋、かばんにそっと入れて出て行った娘の後をつけて見ました。しばらく後を付いていった主人は、びっくり驚いてしてしまいました。
「なんと、あの子が。」
娘が立ち止まったところは、美術学校の前の地下道の入り口でした。
娘は、そこでこじきをしている少年の前にパンの袋を出しました。
「ありがとう。妹がこのパンが世界で一番おいしいって。」
娘はかわいそうな少年のために毎日パンを差し出していたのでした。
「ふぅ、そうか、そうか。」
娘の姿をこっそりと見守った主人は安心して胸をなでおろしました。そして次の日から娘が持っていく2袋のパンを別に作りました。いつでも持って行けるようにです。
コメント
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