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 「うーん、こんなものか」と言うのが一読後の感想。80点。胸に沁みこむ言葉もない代わりに破綻もない。ただ、80点を連発できるのはプロの証だと、思うけれど。
 友達という枠には収まらない、もちろん恋人でもない、「同僚」という男女関係。仕事の現場に緻密に沿って、同僚という新しい男女関係がよく書けている、というのが選者のおおまかな選評。
 小説だから好みの違いはあるとはいえ、なぜおもしろいと思えなかったのだろう。
 ひとつには、どちらかが先に死んだら残った方がPCのハードディスクを破壊する、という約束を交わすのだが、その内容に一切言及がなく、この行為に深みを与えられずにいることが原因か。内容は無関係という評者もいたが、「エロ動画」か「いい人との交換メール」か「家族へのポエム」かでは意味合いが変わってしまう。作中では最後の候補をほのめかしていたが、だとすると家宅侵入をしてまで破壊する必要があるのか、ということになってしまう。
 もうひとつはファンタジーの手法が取り入れられていること。主人公の私は同僚の太の幽霊と日常の延長のように話をするのだが、興醒め。最近、この手の話に食傷気味。誤解のないように言っておくが、自分はファンタジーが好きだ。それでも次から次へそれに乗っかった作品が発表されるのはイタイ。日常に「非日常」を持ち込み、そこから現在・現状を逆照射しようというアイディアは陳腐になりつつあるように思う。例をあげてみよう。
・死んだ人間が幽霊となって戻り、また帰ってゆく。
・二人の心と体が入れ替わる。
・タイムスリップによって未来、または過去へいく。もしくはその時代の自分と入れ替わる。
・人の心が読める、物に残る人の思念が読めるなど常人にはない力(いわゆる超能力)を持つ。
 あてはまる作品をいくつもあげることができるのではないだろうか。
 問題はマジックリアリズム(ファンタジーを現実世界に上手に接続する手法)にあるのではなく、そのアイディアの枯渇にあるのかもしれない。そういう意味においては、SFの復権に期待したい。

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