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 「バットマン」の描き出す世界が「暗い」のは今に始まったことではない。しかし、本作はそれに加えて「重い」。

 最近、昔のヒーロー物がリメイクされているが、どれもこれも重くなりつつある。「リアルさ」を追求するとはそういうことなのだと思うが、たまには何も考えずに楽しめる作品も見たいと思う。

 さて、バットマン。
 狂気に取り付かれたジョーカー。しかし彼は夜な夜な正義のためにパトロールを行うバットマンも「狂気を宿している」ことを見抜いている。
 確かにそうだ。コミックでは「昼は大実業家、夜は正義の味方」という軽いノリで大金持ちが趣味で演じるヒーローを描き、私たちに「メカのかっこよさ」や「勧善懲悪の爽快感」を味あわせてくれた。
 が、そこをリアルに描くと逃げ場がなくなる。例えば、「マスクを脱いで正体を明かさなければ、毎日市民をひとりずつ殺す」というテロを宣言された場合どう対処するのか。そこは映画だから、犠牲者を出す前にジョーカーを逮捕するという筋書きもありだが、本作では逃げない。人が次々に殺され、テロを止めさせるため正体を明かそうかと苦悩するウェインの姿が描かれる。
 そんなバットマンを救うために「バットマンは自分だ」とマスコミの前で一芝居うち、投獄されるのが検事のハービー・デント。この男の正義にかける信念は本物だった。しかし、警察内部の腐敗はひどく、マフィアの内通者がいる始末。結局、ウェインの幼馴染でもあり、デントの恋人のレイチェルが殺されてしまい、デント自身も左顔面に重症を負ってしまう。そのデントの傷ついた心に染み込む「レイチェルが死んだのは警察やバットマンのせい」という悪魔のささやき・・・その結果デントは「トゥーフェイス」となり、恋人の復讐を始めてしまう。デントは非常に大きな情念の塊だから、そのベクトルを変えられると最悪の殺人鬼になりうる。まさに前門の虎、後門の狼。
 だが、そんな敵にもバットマンは正攻法で迫り、数々の危機を切り抜けながらジョーカーを追い詰める。そして「おまえは高潔な精神を持っている」とジョーカーの口から言わせる。バットマンの勝利。
 このあたりのウェインの信念というのは、もはや狂気に近い。目的のためには手段を選ばないという考え方が支配的な世界において。だから、ウェインの気高さがカタルシスとなって、見終えることができそうなものだがそれは許されない。

 今やトゥーフェイスとなったデントが復讐で人を殺してしまい、そのデント=トゥーフェイスも死んだ。市民にとってヒーローであるデントが殺人をおかしたことが知られれば、人々が本当に希望を失ってしまい、ゴッサムシティに未来はない。
 その責めをバットマンが負うことにした。彼はなじみの警部補に「自分はデントと違い、ダークヒーローでいい。警察は全力を挙げて自分を追うように」と頼んでその場から逃げ出す。殺人犯の汚名を着たまま逃げるヒーローは前代未聞ではないか?

 タイトルからバットマンが外れ、「ダークナイト(暗黒の騎士)」となった理由はこのあたりにありそうだ。ぜひ、次作での名誉回復に期待したい。


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