年末恒例の読書の楽しみがあった。
・検死官シリーズ(パトリシア・コーンウェル)
・ローマ人の物語(塩野七生)完結
・強殖装甲ガイバー(高屋良樹)(^^;
いずれも年末の年1回の刊行で楽しみにしている本。ローマ人は完結。ガイバーは読んだ(^^; なのに、なぜ一昨年の暮は検死官シリーズをスキップしたのだろう?
ブログを読み返して思い出したが、ちょうどTwitterにハマってて(^^; いや、ブログ書かなくなる人が多いようだけど、私の場合は逆に更新頻度が上がってる。
ただ、内容が「ガジェット」「写真」「雑記」で多い時は1日3回ほど投稿していますな(^^; そうそう、いろいろ実験してました、アフィリエイトとか。
これでは本をじっくり読む時間があるわけない(爆)
ということで、「スカーペッタ」のインプレッションに入ります。
第一作の『検死官』から数えて16作目。もう20年にもなるのか。
【ネタバレ注意】
シリーズ物を読み続けると、登場人物たちに親近感が湧いて身内みたいな感じになり、だから仲良くハッピーになって欲しいと強く願うのは自然な感情だと思う。
前作『異邦人』でマリーノがスカーペッタをこれ以上無いほど傷つけてしまい、ベントンやルーシーを激怒させてどうなることだろうと続いた本作では、壊れた絆の修復がひとつのテーマになっており、これはまあ満足いく結果となった。
ケイは以前からの仕事上の知人、ジェイミー・バーガー検察官とも心の垣根を取り払って数少ない親友になれそうだしね。
ことの発端は"身体の小さな人"いわゆる"こびと"のオスカーが、ケイ・スカーペッタと話がしたいと主張したことから始まる。彼の恋人のテリー(彼女も"こびと")が殺害され、その第一発見者がオスカー。テリー殺害の嫌疑がかかるオスカーだが、自ら進んで診察を受けた彼は被疑者として逮捕されたわけではない。あくまでもケイの患者として病院で診察を受け、自主的に捜査に協力している。
スカーペッタは彼との会話を医師と患者の守秘義務によって、夫であるベントン捜査官にすら打ち明けるわけにはいかない。このあたり、話の構築がうまい。
さらにケイを貶めようとする何者かによって、インターネット上のゴシップサイト「ゴッサム・ガッチャ」にひどいスキャンダルがぶちまけられる。根も葉もない噂なら却って楽だが事実も一部含まれるだけにケイは追いつめられる。リークしたのは誰かという疑問が拭えず、傷心癒えないケイは精神的に追いつめられていく。
そんな彼女を救ったのは、壊れたかのように見えた「絆」だった・・・
自分がすべてを失ったように感じても、正しい行いや誠実さは立ち現れて自分を救ってくれる。
タイトルの「スカーペッタ」は、そんな主人公の生き方がそのまま顕れた表題だと感じました。
"こびと"どうしのカップルをめぐって差別的な視点も描写されており、良識の安全地帯に逃げ込まない作品作りはさすがコーンウェル。人間の、ケイの崇高な精神が輝くラストに結びついている。
またいつものことながら、リアルな犯行現場、緻密な捜査・検視描写は圧巻。グロに弱い方はご遠慮下さい(^^;
ただ、難点はミステリとしての犯人が弱い。というか、身内の警察。こんな落ち以前もあったような。どれだけ警官の犯罪率高いの!(爆)
以前からシリーズのファンであれば、犯罪捜査と同等かそれ以上に人物描写を期待してるから点は甘くなると思うけど、純粋なミステリファンにとってはルール違反かも。
さて、本作に興味を持った方。「シリーズ1作目から読んで!」とは言いませんが、せめて前作『異邦人』を読まないと本作は半分も楽しめないでしょう。
最後に。
「検死官ケイ」シリーズの成功は翻訳者、相原真理子さんの功績抜きに語ることはできないと思います。
時に原作を超える意訳(タイトル意訳の妙については、5年前のエントリ『神の手』でも既に紹介済み)で本作を存分に楽しませていただきました。日本語表記に関して突っ込みを入れることなく、楽しませてくれる数少ないプロフェッショナル。
今回、翻訳者が代わっていて「おや?」と思い、調べてみたところ、2010年1月にお亡くなりになっていたのですね。もう、あの名訳で読めないのは非常に残念というほかありません。随分遅くなってしまいましたが、故人の冥福をお祈りいたします。
もちろん、新しい翻訳者の方にも期待したい!
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