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バットマン ビギンズ

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 「ダークナイト」を見た後だから、本作のタイトルが、例えば「Grown up to be BATMAN」とか「Becoming BATMAN」(バットマンになる)といったものではなく、「BATMAN BEGINS」(バットマンが始まる)であることの意味を考えてしまう。
 クリスチャン・ベイル主演のバットマンが新シリーズとして制作されるという宣言という意味の他に、ブルース・ウェインはバットマンに「なった」のではなく、彼の中に眠っていたバットマンが「覚醒した」だけというニュアンスが受け取れる。つまり彼はバットマンたることを幼少時から―井戸への転落事故、眼前での両親の殺害、そして大資産家の跡取り―として運命づけられていたのだ。

 以前、見たときはやはり暗さが気になった。ヒーローものによくある、見終えた後の爽快感がない。
 暗さの一因として、「リアルさの追求」が挙げられる。特に人間や社会の描写。正義と悪、敵と味方というふうに単純化せず、やりきれない腐敗や裏切り、価値観の相違などを描こうとしている。
 例えばブルースは、両親が強盗に殺害されたのは「早く帰ろう」と言い出した自分の所為だと思い込んでいる。しかし、強盗にも強盗せざるを得ない経済的・社会的事情があるのだと、その後の裁判を通して「悪者の言い分」にも光が当てられる。
 また、成長したブルースは一人、旅に出る。ふとしたことからラーズ・アル・グール(渡辺謙)率いる影の軍団と出会い、彼の館で武術修行に励むことになる。だが、グールに期待され始めた彼は罪人の処刑を拒んだことからグール一味と戦うはめになり、結局グールを死なせてしまうことに。また、そこで命を救ったアールが後にゴッサムシティを破壊するため、バットマンの前に立ちはだかることになる・・・

 このように入り組んだ世界の複雑さが、勧善懲悪というヒーロー物の特長を消してしまっているのだ。

 しかし、そうは言っても見所も多い。両親を眼前で失ったブルースに優しい声をかけてくれた警官のゴードンは、その後も腐敗に染まらずバットマンとともにゴッサムシティを守ることになる。
 また、ブルースの精神的支柱であり続ける執事のアルフレッド(マイケル・ケイン)は、スパイスの効いたセリフで楽しませてくれる。
 バットモービルやさまざまなガジェット開発者のフォックス(モーガン・フリーマン)、幼なじみのレイチェルは「ダークナイト」にも登場し、存在感たっぷりにストーリーを膨らませてくれる。
 やはり、この映画は傑作だ。

 新バットマンシリーズは確かに暗い。しかし、それは「深夜の暗さ」ではなく、「夜明け前の暗さ」である。そして、それが一番暗いとは映画の中でよく聞くセリフなのだ。


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