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旅日記

(物語)民話と伝説と宝生山甘南備寺−30(立岩伝説−2)

10. 役小角

役小角は奈良時代の山岳呪術者で、役行者、役優婆塞ともいわれる。

役の小角は神変大菩薩とも仰がれ、また修験道を開いた元祖として、多くの人々に親しまれており、今でも厚く信仰されている。

 

役小角についてはいろいろな話が伝えられている。

役小角は、呪術をつかって悪い鬼を金縛りにしたり、水をくませ薪を取らせたり、また民衆を救うために蔵王権現を祈り出したり、あるいは富士山よりも高く空を飛んだりして、超能力者としても大活躍した。

これらの話は、古い書物の中や、伝説あるいは民話として伝えられ ている。

 

役小角の略歴

略歴は次の通りであるが、この他にも役小角の言い伝えは沢山ある。

役小角は舒明天皇6年(634年)正月1日に大和国南葛城郡茅原村の賀茂氏の一族として生まれた。
父は出雲の国の賀茂氏の賀茂間介麻呂(まがげまろ)、母は都良女(とらめ)と言った。

役小角は正式には賀茂役君小角という。

賀茂役は氏で、君は姓である。名は小角と書いて「おづぬ」あるいは「おつぬ」と呼ばれていた。
役の小角生まれた頃は仏教が伝わって(538年)からすでに百年近くたっていた。

役小角は葛城山(現在の金剛山・大和葛城山)、熊野、大峯の山々で修行を行い蔵王権現(​​日本独自の山嶽仏教である修験道の本尊、インドに起源を持たない日本独自の仏)を感得し、修験道の基礎を築いた。

しかし、文武天皇3年5月24日(699年)に、人々を言葉で惑わしていると讒言されて伊豆島に流罪となる。
2年後の大宝元年(701年)1月に大赦があり、茅原に帰るが、同年6月7日に、大阪府箕面市にある箕面山瀧安寺の奥の院にあたる天上ヶ岳にて入寂したと伝わる。

享年68。山頂には廟が建てられている。

寛政11年(1799年)には、聖護院宮盈仁法親王が光格天皇へ役行者御遠忌(没後)1100年を迎えることを上表した。

同年、正月25日に光格天皇は、烏丸大納言を勅使として聖護院に遣わして神変大菩薩(じんべんだいぼさつ)の諡を贈った。

 


10.1. 役小角、役蔵王権現の感得する

天武天皇3年(674年)、小角は大峯の山上ヶ岳山頂で山林修行を行った。
ある夜、夜霧に濡れる岩の上で数珠を繰りながら、「孔雀明王経」と「不動明王経」の呪文を一心に唱え続けていた。
夜半に弁財天が闇の中から現れ大峯の麓に降りていった。続いて地蔵菩薩が闇の中から現れ弁財天とは反対の方に降りていった。

小角は更に声を上げ、一心に呪文を唱え続け、しだいに力も尽き果て声もかれて意識はもうろうとなってきた。
その時、稲光が走り、凄まじい雷の音が鳴り響き、大地が揺れた。
真っ赤に燃える火炎の中から恐ろしい顔をした蔵王権現が現れた。

蔵王は、右手を高く上にあげ、 迷いの雲を払う金剛杵をしっかりと握りしめていた。
また、 左手は剣印をむすんだ指を腰にあて、地魔もしたがえと地面を指していた。
左足は、しっかりと岩を踏みしめ、四海の障害をおし鎮め、また右の足は地を蹴り高くふり上げて、勇ましい姿をしていた。

小角は、この怒りの神こそ、人々を救うために天から遣わされたのだと思うと、 体はしだいに熱くなって天にも昇るような気持になっていした。

小角は、この感得した金剛蔵王をうやうやしく封じた。
小角は、山に入って大きな石楠花の木を切って、その幹に頭の中に写し込んだばかりの金剛蔵王の像を、刻んだ。

 

10.2. 蔵王堂

小角は、彫りあげた蔵王権現を、後の蔵王堂にお祀りした。

金峯山寺の本堂、すなわち蔵王堂は、日本の木造建築としては奈良の大仏殿につぐ大きな建物であり、中に三体の蔵王権現の立像がおさめられている。

蔵王権現は、今では修験道の山伏や登山者の守り神とされている。
この蔵王権現は、インドに起源を持たない大峯独自のものである。
日本の仏典にはない大峯独自のものなので、明治初期の廃仏棄釈の際には、神か仏かと問題になったことがある。

仏教が伝来してわずか百年で日本独自の仏を創造した小角の天才は驚くべきものが有る。
考えれば、神仏の起源がインドにしかないというおかしなものであり、この教条主義の発想を打ち破った小角は評価できる。


<蔵王堂>


吉野山の蔵王堂には互いにほとんど同じ姿をした三体の蔵王権現像が並んで本尊として祀られている。
蔵王権現の像容は密教の明王像と類似しており、激しい忿怒相で、怒髪天を衝き、右手と右脚を高く上げ、左手は腰に当てるのを通例とする。
右手には三鈷杵を持ち左手は刀印を結び、左足は大地を力強く踏ん張って、右足は宙高く掲げられている。その背後には火炎が燃え盛る。

 

<続く>

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