FUNAGENノート

私の考えたことや、読書から学んだことを伝えます。
私の脳は書いたり読んだりすることで研ぎ澄まされると思っています。

自由の持つ意味

2018-10-05 15:21:11 | コラム
自由の持つ意味
 私たちは、表向きは自由に暮らしているように見える。しかし、どれだけの人が、現前の存在に対して、自由に向き合っているだろうか。そうでもなさそうである。大概の場合お膳立てされた存在に目を向けていることが多いのではないか。
 どこどこの何が面白い、何々が美味い、ノーベル賞などの賞をとったからそれに注目する。SNSの活用にしても、ノウハウを探すことに没頭して、自分で考えるということがどうしても、おざなりになってしまってはいないだろうか。あまりにもマニュアルに頼りすぎている傾向がある。マニュアルの奴隷になってはいないか。いわゆるマニュアル依存症である。
 ところで、とかくこの世は予想もつかないことがよく起こるものである。最近の異常気象はその代表である。とくに、今までの常識では考えられないことが起こった場合、マニュアルの効用には限界がある。いくらIT技術が進んでも、コンピュータの性能が強力になっても、所詮それはいままでの情報を分析しているので、予想外の事象にはまず適用しないであろう。
 そのマニュアルに頼ることによって、自分は自由であると言いながら、実はマニュアルに縛られ、自由でなくて奴隷になっている。スポーツにしても、試合に臨んでマニュアル云々など言っても、かえって動きは鈍くなり結果は負けだろう。囲碁や将棋にしても、定石というのがあるが、定石どうりにはまずいかないだろう。定石を理解しておくことは必要だが、問題は心や体で、自然とわき出る感覚ともいうものがものを言うのである。
 たえまなく動く存在(刻々と変化する状況)に対して、マニュアルなどひもとく暇はあるわけがない。それは、どの分野でも当てはまることで、スポーツや囲碁・将棋の世界だけの話ではない。全ての存在に当てはまることだ。
 私たちの国は「自由・民主主義・市場経済を重視する」国とよく言われるのだが、本当にそうなのか、本当に自由があるのか、民主主義があるのか、もう一度吟味することが必要である。21世紀型ファシズムの到来と、若き哲学者ガブリエルに言わせているほど、世界はおかしくなっている。(トランプ政権を見よ)
 もう一つの問題は「知に働けば角が立つ、情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とにかく人の世は住みにくい。」、夏目漱石の「草枕」の冒頭はここから始まるが、私たちの社会は、空気を読むことが、生きていく上でどうしても必要になる社会になっている。そしてそれは自主性を無くし、そこに蔓延する空気の奴隷となってしまっている。それを住みにくいと感じることから、自由への解放は始まるのだと思う。
 自由が本当に意義を持つのは、現前の存在に対して主体的に、自分の感性なり、感情なりをぶつけることである。そこから自分の生きる力を得ることである。
 ところが、その生きる力が、ゆがんで考えられている。どっぷり浸かってしまった消費文化によって、見世物に目は行くが、現前の存在の持っている真の主張はないがしろにされてしまっている。
 政治家や企業家は、この見世物をいかにかっこよく見せるかが、最大の課題と考えるべく努力し、わたしたちを引きつけようとする。格好良い演説、コマーシャル、私には嫌気をさすものにしか見えない。
 「私たちの暮らしをいっそう良くする」といって、国家予算をばらまいたり、「軍事基地云々より、私たちの生活が問題だ。」だといって選挙を戦ったりと、とにかく国民の暮らしを良くするというコマーシャルを連発する。
 沖縄の良心はそれを打ち砕いた。問題なのは今の暮らしではなく、未来に向けて、この八方ふさがりの現状をどうすかだ。決して未来は明るくない。今のことだけを考えていると、私たちは取り返しのつかないことになるだろう。
 軍事基地問題や原発問題は、同じ構図を持っている。軍事基地も原発も、そこで働く人がいて、生活の糧としている人がいるということだ。そういう人たちが軍事基地や原発をなくした時は、別な仕事についてもらう手立てを考えなければならないことは当然なのだが、それにしても、きたるべき未来を考えれば、軍事基地や原発ともノーであろう。
 国全体が、未来に向けての対策に向かうべきなのに、目先の利益優先となってしまっている。そうではなくて、これから地球はどうなるのか、世界はどうなるのか、日本はどうなるのか、それを考えてこそ、私たちの真の自由が保証されるのではないか。目先の快楽文化、見世物文化ばかを追いかけ回しても、それは真の意味の自由の獲得ではない。それどころか、ますます不自由な生活になっていくであろう。
 第一このグローバルに世界中が動いている中で、国家の意味が変わってきている。そんな中で、かつての戦争(第一次、第二次、朝鮮戦争、ヴェトナム戦争、イラク戦争など)のように国家間の戦争は起こらないだろう。ただ内戦は起こる危険性はあるだろうし、今も起きている。だから、軍事基地は、かつてのような意味をなさないとしても、軍隊(自衛隊)は必要だろう。だからと言って、憲法改正を今しなければという必要性にあまり意味を見いだせない。
 それと、誰でもわかることだが、原発は多くの負の遺産を私たちにもたらす。だから再生化エネルギーの開発に向かわざる得ない。たとへその原発を生活の糧としている人にとっても、それは同じである。とにかく、今のまま進んでいくと、地球はおろか私たち人類を含む地球の仲間も危険にさらされる(いやもうさらされている)方向へと確実に進んでいくだろう。
 わたしたちは今、存在に立ち向かうための真の知恵を待たなければならない。そうでなければ、「自由という牢獄」(大澤真幸著・岩波現代文庫)に閉じ込められることになろう。わたしは、これから、この「自由という牢獄」という大澤氏の本を読もうと思う。自由という意味をもっと掘り下げようと思う。その結果は後ほどエッセイ(読書ノート)にまとめようと思っている。

北海道新聞9月2日号の片隅の「本の森」というコーナーに私の著書「戦中・戦後世代から現代を見つめる」が紹介されていました。ありがたいことだと思っています。



「戦中・戦後世代から現代を見つめる」(船場幸二著・風詠社)税込みで1、512円です。アマゾンや楽天、紀伊國屋ネットなどで扱っています。アマゾンですと、船場幸二で検索しますと、私の本の写真が出てきます。ネット販売苦手の方は、息子さんや娘さんにお願いしてみてください。よろしくお願いします。




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2 コメント

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出版社PHPエディターズ・グループの伊藤でございます。書籍刊行のご相談です。 (株式会社PHPエディターズ・グループ)
2018-10-17 14:13:23
船場幸二先生

はじめまして。
私は出版社でPHPエディターズ・グループの伊藤利文と申します。
同じく出版社のPHP研究所のグループ会社でございまして、専門書等の
編集を生業としております。
今回は先生にぜひ書籍を刊行していただきたく、そのご相談でメールを
いたしました。

まずは一度をお会いしてお話をさせていただける機会をいただけないでしょうか。
ご多忙の折のお願いにて、おそれいります。
なにとぞご検討をお願いいたします。

伊藤利文拝
ありがとうございます。 (funagen)
2018-10-17 17:30:29
貴社の方にメールを送りました。
貴社の問い合わせ欄を使いました。

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